責める(読み)セメル

デジタル大辞泉 「責める」の意味・読み・例文・類語

せ・める【責める】

[動マ下一][文]せ・む[マ下二]《「攻める」と同語源》
過失・怠慢・違約などを取り上げて非難する。とがめる。なじる。「失敗を―・める」「無責任な行為を―・める」
厳しく催促する。せきたてる。また、しつこく求める。せがむ。「早く返答しろと―・める」「子供に―・められて買い与える」

㋐苦しめる。悩ませる。「みずからを―・める」
㋑苦痛を与えていじめ苦しめる。いためつける。「むちで―・めて白状を強いる」
目的を果たすために、積極的な働きかけをする。「泣き落とし戦術で―・める」
一心に努力する。真剣に追い求める。「侘びの精神を―・める」
「―・むる者は、その地に足を据ゑがたく」〈三冊子・赤双紙〉
馬を乗りならす。調教をする。「早朝から馬場で―・める」
生食いけずき摺墨するすみという名馬を―・めさせられしに」〈続狂言記・膏薬煉
[類語](1とがめるなじ難ずるさいなつるし上げる締め上げる責め付ける責め立てる難じる非難する難詰する面詰する面責する問責する詰責する𠮟責しっせきする譴責けんせきする弁難する論難する指弾する追及する・詰問する/(3苦しめる責めさいなむ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「責める」の意味・読み・例文・類語

せ・める【責】

  1. 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]せ・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙 ( 「せめる(攻)」と同語源 )
  2. 人の行為の過失や罪などをとがめる。なじる。
    1. [初出の実例]「心を小(セメ)、己を励して日(ひにひ)に一日を慎むことは」(出典:日本書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓))
    2. 「さる所にてはいかでおはせしぞとせめて問ふを、いと恥づかしと思ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)
    3. 「原因が分ってゐれば、あれ程に弱らずに済んだのです。然し、さういって君を責(セ)める気ではありません」(出典:暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉二)
  3. つよく促す。しいて求める。せがむ。→せめて
    1. [初出の実例]「荒熊の住むと云ふ山のしはせ山責(せめ)て問ふとも汝が名はのらじ」(出典:万葉集(8C後)一一・二六九六)
    2. 「名のれ名のれとせめ候つれ共、つゐになのり候はず」(出典:平家物語(13C前)七)
  4. くるしめる。なやます。
    1. [初出の実例]「憂の火に焼き逼(セメ)らるることを被りたまへり」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇)
    2. 「秋はしぐれに そでをかし 冬はしもにぞ せめらるる〈壬生忠岑〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇〇三)
  5. 拷問をする。
    1. [初出の実例]「誡置て嗷問せよとて、手取り足取り打縛り、挙つ下つ二時計ぞ責(セメ)たりける」(出典:太平記(14C後)三三)
    2. 「ツミビトヲ seme(セメ)テ ハクジョウ サセル」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
  6. 技芸を教えこむ。しこむ。
    1. [初出の実例]「いよいよせめけるほどに、後にはいみじき音曲の上手になりて」(出典:文机談(1283頃)四)
  7. 馬を乗りならす。調教する。
    1. [初出の実例]「一せむる馬はよき程は下馬にをよばず」(出典:奉公覚悟之事(15C中‐後))
    2. 「ここらにも馬をけいこしてのるを馬をせむると云ぞ」(出典:玉塵抄(1563)一六)
  8. 強く高い調子や小きざみな拍子で、楽器を演奏したり舞を舞ったりする。
    1. [初出の実例]「風の音のかぎりと秋やせめつらん吹き来るごとに声のわびしき〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋下・四二一)
  9. 一心不乱念仏祈祷(きとう)などを唱える。
    1. [初出の実例]「あまりせめしかば、喉腫れて、湯水通ひしもずちなかりしかど、構へて謡ひ出だしにき」(出典:梁塵秘抄口伝集(12C後)一〇)
    2. 「この恋叶(かな)はぬものならば、仏も我を御殺し、殺生戒をば破らせ給はんや、とせめにせめてぞ祈りけり」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上)
  10. 努力してきわめる。求めて追究する。
    1. [初出の実例]「せめず心をこらさざる者、誠の変化をしるといふ事なし。ただ人にあやかりてゆくのみ也。せむるものはその地に足をすへがたく、一歩自然に進む理也」(出典:俳諧・三冊子(1702)赤双紙)
  11. 帽子・頭巾(ずきん)をきっちりとかぶる。
    1. [初出の実例]「父がむくのみいろの大ゑぼうし、まゆはんにせめいれさせて」(出典:文机談(1283)四冊)

責めるの補助注記

便宜上、別項として扱ったが、同語源の語に「せむ(迫)」「せめる(迫)」がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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