デジタル大辞泉 「甲」の意味・読み・例文・類語
こう【甲】[漢字項目]
〈コウ〉
1 十干の第一。きのえ。「甲子/華甲」
2 順位で第一位。「甲乙・甲種」
3 表面を覆う堅いもの。こうら・よろいなど。「甲殻・
4 (「胛」の代用字)かいがらぼね。「肩甲骨」
5
〈カン〉
1 表面を覆う物。「
2 高い音声。「甲高」
〈かぶと〉「甲虫」
[名のり]か・かつ・き・まさる
[難読]
字音は「カフ」であるが、[ 一 ]②の亀の甲、爪の甲などの場合は、「和名抄」に見えるように古くから「コフ」といったようである。「観智院本名義抄」「色葉字類抄」にも「コフ」とある。
邦楽用語としては、いろいろに使われる。( 1 )一般に調子が高い音。( 2 )基本音に対して一オクターブ高い音。( 3 )高い音域で歌う部分。( 4 )三味線の勘所(かんどころ)の一つ。( 5 )小鼓(こつづみ)の奏法の一つ。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
動物体の外表面を鎧のように覆う固い板状の構造物の総称。
節足動物門甲殻綱の十脚目(エビ,カニ類),アミ目,オキアミ目,口脚目(シャコ類)などでは,頭部と胸部が1枚の厚い外皮で覆われているが,これをとくに甲あるいは甲皮carapaceと呼ぶ。甲殻または頭胸甲とも呼ぶが,口語では甲羅がわかりやすい。また,とくに背甲と呼んで,胸部や体側を覆う外皮と区別することもある。機能的には頭胸部を外部から保護するためのもので,典型的な外骨格である。構造的にはキチンを欠く外ガラス膜とキチンを含む内ガラス膜に分けられるが,後者は全皮の1/4~1/5の厚さの色素層,3/4~4/5の厚さの石灰層,ごく薄い非石灰層からなる。化学成分は種によって異なるが,たとえば硬い甲をもつザリガニではキチン約34%,炭酸カルシウム約47%,リン酸塩約18%で,青,赤,黒色素を有する。また昆虫綱甲虫目は,その前翅(ぜんし)が厚肥し革質の鞘翅(さやばね)となるが,これも俗には甲と呼ばれる。
軟体動物門頭足綱のコウイカ科のイカ類には,背面の外套(胴)に包まれる石灰質の支持構造があり,甲cuttleboneと呼ばれる。この形態は種によって異なり,分類学的に重要な指標となっている。
執筆者:武田 正倫
脊椎動物では,皮膚または角質に覆われ,かなりの広さと厚さをもって体表に広がる堅固な板状の構造が一般に甲または甲羅と呼ばれ,骨性の外骨格がその主体を成している。骨の個体発生には二つの様式があり,その一つはまず軟骨ができ,ついでそれが骨化して固い骨になるもので,こうした骨を軟骨性骨または置換骨という。もう一つは皮膚の下の真皮の中に直接に骨が発生するもので,この骨を皮骨または膜性骨dermal boneという。一般に脊椎動物の体にはこれら2種の骨が混じりあっていて,軟骨魚類のもつ軟骨性内骨格と相同の骨は由来の古い軟骨性骨であり,それらと相同でない骨の大半は二次的に現れた皮骨である。脊椎動物の甲の骨格の大部分は皮骨である。
古生代中期の唯一の脊椎動物だったあごをもたない原始魚類,無顎類の多くは頭部ないし体の前半部が堅固な甲に覆われ,そのためこれらは甲皮類,甲冑(かつちゆう)魚,カブトウオなどの別名で総称される。頭部の甲を頭甲,胸部の甲を胸甲という。これらの甲の本体は骨だったが,現在の脊椎動物の骨とは少し異なって骨細胞を含まないものだったため,区別してアスピディンaspidinとも呼ばれる。この骨板の表面を現在のサメの体表のように,歯と同様のものが覆いつくしている種類があった。
無顎類より遅れて現れた板皮類というグループでは,頭部が堅固な骨格をもっていた上,肩から胸にあたる部分ががんじょうな骨板に覆われ甲のようになっていたが,その実態は十分明らかでない。これらの原始魚類の内骨格は軟骨性であったらしい。
硬骨魚類には甲といえるものはないが,それに近いものとしてハコフグ類の外骨格がある。ハコフグでは,口,目,鰓孔(えらあな),肛門,ひれの付け根のほかは,全体表が堅固な箱のような構造になっている。これは,皮骨であるうろこの変形した六角形の大型骨板が敷石のようにつながって体表を覆いつくし,可動性を失ったものである。
両生類と鳥類には甲といえるものはない。爬虫類で甲をもつものはカメ類だけである。現存の大多数のカメの体はハコフグと似て,首,尾,四肢の出るところのほかはほとんど外骨格のがんじょうな箱で覆われ,それがさらに角質の鱗板に包まれている。背中の楕円形の甲すなわち背甲carapaceは3列の骨板とそれらを取りまく縁板から成る。中央の1列の骨板は椎骨と皮骨が発生中に融合したもの,その両側の2列は肋骨と皮骨が融合したもので,骨板どうしはきわめて複雑に入りくんだ縫合によって連結しあっている。腹側の甲つまり2列の骨板からなる腹甲plastronと,腹甲を背甲に結びつける体側の骨板は皮骨である。ハコガメの類では,腹甲は体側の甲から分離しているうえ前半と後半に二分し,関節によってそれぞれがいくらか上下に動くしくみになっている。そのため首,尾,四肢を引っ込めたとき腹甲も同時に動いて開口部を閉じ,体表をほぼ完全に甲で覆うことができる。
骨板の表面を覆う角質の鱗板はつなぎ目の縁で成長するので,鱗板の表面には成長のあとを示す成長線が刻まれている。骨板の継目と鱗板の継目とはどこでも食い違っており,このために甲全体ががんじょうになっている。以上とは異なって,スッポンとオサガメは全体表が軟らかい皮膚に覆われているので,甲をもつとはいいがたい。皮膚の下の骨板では皮骨の部分が退縮しているうえ体側にはなんの骨格もないので,他のカメのような箱型の外骨格をなしていない。
哺乳類で甲といえるものはアルマジロに見られる。アルマジロの装甲は鱗状の角質の外被の下に皮骨の芯を備えたもので,ワニのうろこと構造が似ている。アルマジロの祖先にあたる第三紀のグリプトドン類は,カメの背甲と酷似した一体化した骨性の背甲のほか,頭頂部と尾の周囲にも堅固な骨性の甲を備えていた。センザンコウの体表のほとんどを覆う松笠状のうろこは毛の変形したもので融通性が高い。サイの胴を覆う強靱な外被は皮膚の厚くなったもので,甲とはいいがたい。
執筆者:田隅 本生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般にカニやエビなどの甲殻類あるいはカメの仲間にみられるような動物体を覆う堅い外被をいい、甲らともよぶ。爬虫類(はちゅうるい)は一般に真皮の分泌した骨(皮骨)や、表皮の角質形成物である角鱗(かくりん)に覆われている。この皮骨と角鱗が発達してそれぞれ骨質板と角質板となり融合したものが、カメ類の甲である。甲は背側の部分と腹側の部分に分けられ、前後端および四肢の間の部分で連絡している。背甲の骨質板は、中央の椎甲板(ついこうばん)、その左右の肋甲板(ろっこうばん)、周囲の縁甲板からなり、椎甲板は脊椎骨(せきついこつ)と、肋甲板は肋骨とそれぞれ癒合している。腹甲の骨質板は2列の胸甲板からなる。これらの骨質板を、普通われわれが目にする六角形をした角質板が覆っている。甲は運動能力の低いカメを外敵から守る役をし、甲に覆われていない頭部、頸部(けいぶ)、四肢、尾はその中に引っ込める。頭部の引っ込め方には、横に曲げる方法とまっすぐ引っ込める方法の2種ある。水中生活をするウミガメ類では頭部や頸部を甲の中に引っ込められなくなっている。また、甲殻類では外骨格のクチクラにカルシウムが沈着して堅くなっているが、頭胸部の背板が癒合して1対の厚い殻となったものをとくに甲という。
[和田 勝]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報
…調緒(しらべお)を強く締めたまま革の外側を強く打った,高く強い音。流派によっては〈甲(かん)〉と呼ぶ。〈タ〉と唱えられ,譜面上では〈△〉または〈〉と記される。…
…小さく打った,弱いが響く音。流派によっては〈甲(かん)〉と呼ぶ。〈ツ〉と唱えられ,譜面上では〈〉または〈・〉と記される。…
…
[袈裟]
袈裟の本旨は,粗末な端裂(はぎれ)をはぎ合わせた僧衣ということなので,その精神を形に示して,数枚の裂をつないで作った一条をさらに数条ならべて縫った形をとる。そのつなぎ目の部分と四周の部分に別の裂を配したものが多く,前者を葉(よう),後者を縁(えん)と称し,縁葉に囲まれた部分を田相(でんそう)また甲(こう)と称する。なお,全部同じ裂で作った無地のものや,つなぎ目に金色,朱色などの線を配しただけのものもあり,禅系諸宗では多くこれらを用いる。…
…戦士が胴部と頭部の防御具として着用する甲(よろい)と冑(かぶと)の総称。時代とともに,その素材は皮革などから金属に変わり,戦士の〈命を守る〉ことを目的として,堅牢度・機動性を高めるためにさまざまの改良が加えられたが,銃砲類が戦場に登場すると,急速にその実用性は失われた。…
…明朝は建国後まもなく戸帖の制によって人民の戸籍を定めていったが,また当時江南地方で行われていた小黄冊図の法,すなわちほぼ100戸を1単位とする村落組織などを利用して農村の組織化をすすめた。そしてこれらの制度を整備,画一化して1381年(洪武14)全国的に実施されたのが賦役黄冊の編造と里甲制の制定であった。この制度は徭役負担の義務をもつ110戸を基準として1里を編成し,丁糧の多い富裕戸10戸を里長戸,残りの100戸を甲首戸とし,これを10戸ずつ10甲に分けた。…
…このような居住地における保以外にも,科挙,任官,旅行,官穀借用など種々の場合に5名で保を結ばせ,共同責任を負わせることが広く行われた。 北宋の1070年(熙寧3)に王安石新法の一環として施行された保甲法は,10家を保,50家を大保,5大保を都保とし(3年後京畿では5,25,250家に改正),保長,大保長,都保正,副保正を任じ,主客戸の2丁以上ある戸から1丁を選んで保丁とし,交代で夜間の防犯警備に当たらせ,武器の使用を認め団体的軍事訓練をほどこし民兵として活用を目ざした。契丹,党項(タングート)等外族の強圧に抵抗し,兵制の弱点を補い同時に治安強化を意図したこの法は,民兵化をきらう農民の非協力と旧法党の反対により十数年で廃止をみた。…
…戦士が胴部と頭部の防御具として着用する甲(よろい)と冑(かぶと)の総称。時代とともに,その素材は皮革などから金属に変わり,戦士の〈命を守る〉ことを目的として,堅牢度・機動性を高めるためにさまざまの改良が加えられたが,銃砲類が戦場に登場すると,急速にその実用性は失われた。…
…頭にかぶる鉄製の武具。古墳から出土する甲(よろい)には短甲と挂甲(けいこう)の2種があり,冑にも衝角付冑(しようかくつきかぶと)と眉庇付冑(まびさしつきかぶと)の二つがある。形の上で衝角付冑は短甲に,眉庇付冑は挂甲に属するものと思われる。…
※「甲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
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