飛ばす(読み)トバス

デジタル大辞泉 「飛ばす」の意味・読み・例文・類語

とば・す【飛ばす】

[動サ五(四)]
空中を飛ぶようにする。「模型飛行機を―・す」「風船を―・す」
何かをめがけて、手元から勢いよく放つ。「ボールを―・す」「矢を―・す」
強く吹いて、空中に舞い上がらせる。「台風で屋根が―・される」「帽子を―・す」
空中に散るようにする。はね散らす。飛散させる。「自動車が泥水を―・して通る」
手や足で攻撃やわざをすばやくしかける。「内掛けを―・す」
乗り物を速く走らせる。また、スピードを出して速く進む。「時速一〇〇キロで―・す」「前半をハイペースで―・す」
勢いよく、また、遠慮なく言う。「やじを―・す」「皮肉を―・す」
命令などが早く伝わるようにする。うわさなどが広まるようにする。「げきを―・す」「デマを―・す」
急いで派遣する。「急便を―・す」「記者を現場に―・す」
10 途中を抜かして先へ進む。間をぬく。「―・して読む」
11 中央から地方へ、または都会から辺地へ転任させる。左遷する。「地方の出張所へ―・された」
12 水分などを除く。「強火で鍋のアルコール分を―・す」「炊飯器の蓋を開けて余分な水分を―・す」
13動詞連用形に付いて)その動詞の意味を強める。勢いよく…する。乱暴に…する。「しかり―・す」「売り―・す」「突き―・す」
14 手の届かない所へ飛び去らせる。死なせる。
「手に持てるが子―・しつ」〈・九〇四〉
[可能]とばせる
[下接句]羽觴うしょうを飛ばすげきを飛ばす口角あわを飛ばすしゃくを飛ばす魂を飛ばす与太を飛ばす

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「飛ばす」の意味・読み・例文・類語

とば・す【飛】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. 空をとぶようにする。空を翔(かけ)らせる。また、空中にとんで見えなくなる。
    1. [初出の実例]「鉢をとばし、さて居ながら、よろづのありがたき事をしさぶらふなれ」(出典:古本説話集(1130頃か)六五)
  3. 魂などを空にとび去らせる。死なせる。
    1. [初出の実例]「手に持てる 吾(あ)が児登婆之(トバシ)つ 世間の道」(出典:万葉集(8C後)五・九〇四)
  4. 空中にはねあげる。ひるがえす。
    1. [初出の実例]「如八百里、磐根を、毗礼衣、裾垂飛波志(とハシ)、払人、不払成て」(出典:続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月庚辰)
  5. 空中にちらす。散乱させる。
    1. [初出の実例]「紫膏を貝闕に浮(うか)べ、白雲を玉検に霏(トハセ)り」(出典:大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃))
  6. 射る。放つ。発する。
    1. [初出の実例]「責よせ、箭をとばす事雨の如し」(出典:十訓抄(1252)六)
  7. とぶように速く進ませる。馬・車などを急いで走らせる。
    1. [初出の実例]「亦返さの車飛ばし騒むに」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)
  8. すみやかに伝える。あまねく広める。くばる。「檄をとばす」
    1. [初出の実例]「又以消息、帥大納言、〈略〉江中納言、可来之由、可告示者、則如仰飛書状了、逐電退出」(出典:中右記‐嘉保二年(1095)五月七日)
  9. 人を遠方の勤務地などに移す。また、下位に移す。左遷する。
    1. [初出の実例]「誰か(たとえば西)をあの附属高校に飛ばすという話を」(出典:笹まくら(1966)〈丸谷才一〉六)
  10. とびこして先へ移る。順序を越えて先へゆく。
    1. [初出の実例]「要らないところはぐんぐん飛ばして行くしね」(出典:我等の一団と彼(1912)〈石川啄木〉五)
  11. 勢いよく言葉を発する。また、遠慮なくしゃべる。
    1. [初出の実例]「蔭口や皮肉をとばす」(出典:オリンポスの果実(1940)〈田中英光〉二)
  12. 売りはらう。また、質に入れる。
    1. [初出の実例]「阿彌陀仏迄質屋へとばし」(出典:浄瑠璃・吉野都女楠(1710頃か)二)
  13. 遊女が客をはねつける。客を冷たくあしらう。
    1. [初出の実例]「女のこころににくいおんさんと思はば、せんりのほかまでも、ひんととばされぬべし」(出典:評判記・もえくゐ(1677))
  14. 相手に向かって、すばやく手足などを動かす。
    1. [初出の実例]「鳳は十八番(おはこ)のケンケン、足を飛(ト)ばし小手を振って引倒さうとする」(出典:相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉駒ケ嶽の凋落と太刀山の独舞台)
  15. ( 動詞に付いて ) その動作の勢いがはげしいことを表わす。「笑いとばす」「叱りとばす」

飛ばすの補助注記

江戸時代には、終止・連体形が「とばする」の形をとることがある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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