割る(読み)ワル

デジタル大辞泉 「割る」の意味・読み・例文・類語

わ・る【割る】

[動ラ五(四)]
強い力を加え固体の物をいくつかに分けて離す。「茶碗を―・る」「クルミを―・る」「まきを―・る」
ある物をいくつかの部分に分ける。「土地を三つに―・る」「部屋を―・って使う」
まとまっているもの、組織などを分裂させる。「党を―・る」
押し分けて間を離す。「両者の間に―・ってはいる」
そろえた両膝の間を空ける。「膝を―っ・てしゃがむ」
割り算をする。除する。「六を二で―・る」
分けて与える。配分する。割り当てる。「それぞれに役を―・る」「頭数で―・る」
他の液体にまぜて濃度を薄める。「ブランデーを水で―・る」
心のうちを隠さずにすっかり出す。うちあける。また、白状する。「腹を―・って話す」「口を―・る」
10 一定数に達しないで下回る。ある水準以下になる。「志願者が定員を―・る」「仕入れ値を―・る」
11 きまった範囲の外に出る。「土俵を―・る」
12サッカーなどで)ラインをこえる。「ボールがタッチラインを―・る」
13 突き当たったり切ったりして傷をつける。できた傷の部分を開いた状態にする。「激しい申し合いで額を―・る」
14 (相撲で「腰をわる」の形で)足を開き膝を曲げ、体をまっすぐにした姿勢で腰を低くする。「腰を―・って寄る」
15 追い求めて捜し出す。つきとめる。「ほしを―・る」
16 手形を割り引く。「手形を―・る」
17 わけを細かく説明する。
「―・っつ砕いつ𠮟れども」〈浄・冥途の飛脚
[可能]われる
[動ラ下二]われる」の文語形
[下接句]川口で船を口を割るけつを割る腰を割るしりを割る底を割る竹を割ったよう土俵を割る腹を割るまくらを割る水を割る
[類語](1打ち割るたたき割る叩き壊す壊す砕く欠くっ欠く破砕する破壊する損壊する毀損きそんする破損する損傷する損ずるそこなうこぼ傷付ける破る崩すつぶ打ち砕く打ち壊すぶち壊す取り壊す砕破全壊壊滅/(5除する等分する均分する/(9割り込む下回る切るくだ

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精選版 日本国語大辞典 「割る」の意味・読み・例文・類語

わ・る【割】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 力を加えて、二つまたはいくつかの部分に分離させ、全体の完結性を失わせる。
      1. (イ) 岩・氷・瓶・椀・皿・瓦・板・煎餅など、卵殻・木の実・薬玉・風船電球などの外被部分などの原形をこわす。また、竹の茎、薪、割り箸などをさらに細い両部にする。
        1. [初出の実例]「石戸破(わる)手力もがも手弱き女にしあればすべの知らなく」(出典:万葉集(8C後)三・四一九)
        2. 「もちひのいと大なるをば一、ちひさきをば二をやきて〈略〉おほきなるをばなかよりわりて」(出典:大鏡(12C前)二)
      2. (ロ) 建物、城などをとりこわす。破壊する。
        1. [初出の実例]「所々城々之儀は、何も御わらせ候て可然存候」(出典:伊達家文書‐天正一九年(1591)七月一五日・浅野長政書状)
      3. (ハ) 突き当たったり切ったりして表面に傷をつける。「額をわる」
    2. 事柄の全体を二つまたはいくつかの部分に分ける。
      1. (イ) 区分する。分割する。また、区分したそれぞれに事物を分配し分担させる。わりあてる。わりつける。わりふる。
        1. [初出の実例]「女房の曹司には、廊のめぐりにしたるをなん、わりつつたまへりける」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
        2. 「縦にペエジを二つに割って印刷して、挿画がしてある」(出典:青年(1910‐11)〈森鴎外〉二二)
      2. (ロ) 組織などを分裂させる。また、人の間柄を裂いて不和にする。「党を割る」「二人の仲を割る」
      3. (ハ) 集まっているものを左右に押し分ける。また、行列などの中ほどに分け入って進行をさまたげる。→割って入る
        1. [初出の実例]「熊谷おや子は、中をわられじと立ならんで」(出典:平家物語(13C前)九)
      4. (ニ) 衣服の裾などに、活動しやすいように切れ目を入れる。
      5. (ホ) 座った両膝の間をひらく。
        1. [初出の実例]「白足袋の草履ばきで、大きく跨を割り」(出典:潮風(1920‐21)〈里見弴〉一)
    3. 割り算を行なう。除する。ある数がほかのある数の何倍にあたるかを知る。数式で、記号「÷」を「わる」と読む。
      1. [初出の実例]「帰除 ワル 筭法減筭曰除」(出典:書言字考節用集(1717)八)
    4. 事柄を分けてすじみちを立てる。
      1. (イ) 理に従って、細かいわけを説く。→割っつ口説いつ
        1. [初出の実例]「エエ性根のすはらぬきちがひ者と、わっつくだいつしかれ共」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中)
      2. (ロ) すっかり打ち明ける。秘密や内情を明らかにする。
        1. [初出の実例]「日頃慎み深き身も、恋には弱るならひかや、いっそ内々この事を母御に割って咄したら、他人ではなき従弟同志」(出典:人情本・花筐(1841)初)
      3. (ハ) すじみちを立ててつきとめる。捜し出す。「ほし(犯人)をわる」
    5. ある液体に他の液体をまぜる。多く食品で、もとの液体の味を薄めたり和らげたりすることをいう。古くは、加えるものを「水を割る」のように言ったが、現在では「水で割る」が普通。
      1. [初出の実例]「コニャックを一口飲む〈略〉湯沸かしの湯を割(ワ)って、又一口飲んで見る」(出典:金貨(1909)〈森鴎外〉)
    6. ある範囲の外に出る。
      1. (イ) 数量の変動する事物で、数値がある目安以下になる。切る。底を割る。〔新時代用語辞典(1930)〕
      2. (ロ) 相撲で足が土俵の外、フットボールで球がタッチラインの外に出る。
        1. [初出の実例]「常陸は満身の力を籠めて、突をくれれば大砲は脆くも土俵を割って」(出典:相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸山、梅ケ谷時代の壮観)
    7. ( 「新鉢(あらばち)を割る」から ) 処女を犯す。
      1. [初出の実例]「去る男、弐分五りんと仇名を付られしを、どふした訳だと、知った若者に聞けば、胡粉屋の娘を割(ワッ)たから」(出典:咄本・豆談語(1772‐81)弐分五厘)
    8. ( 相撲で「腰をわる」の形で ) 足を開き膝を曲げ、体をまっすぐにした姿勢で腰を低くする。→腰(こし)を割る
    9. 手形を割り引く。「手形を割る」
    10. ( 自動詞的に用いて ) 潮が引く。干る。
      1. [初出の実例]「シヲガ varu(ワル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙われる(割)

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