割・破(読み)われる

精選版 日本国語大辞典 「割・破」の意味・読み・例文・類語

わ・れる【割・破】

〘自ラ下一〙 わ・る 〘自下二〙
① 力を受けて二つまたはいくつかの部分に分離され、全体の完結性を失う。
(イ) 固形物体がいくつかの部分に分解する。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「法を聞きつる以後(かひ)(ワレ)て出ぬるが如し」
日葡辞書(1603‐04)「ツボ、チャワンガ varuru(ワルル)
(ロ) 皮膚や爪、また板、地面などに割れ目ができる。
平家(13C前)八「夏も冬も手足におほきなるあかがりひまなくわれければ」
事柄の全体が二つまたはいくつかの部分に分かれて、一体性を失う。
(イ) 分割・区分けされる。
※詞花(1151頃)恋上・二二九「瀬を早み岩にせかるる谷川のわれて末にもあはんとぞ思ふ〈崇徳院〉」
(ロ) 組織などが分裂する。人の間柄が不和になる。別れて対立する。
※日葡辞書(1603‐04)「クニガ varuru(ワルル)
(ハ) 勝負がつかないままで終わる。引き分けになる。
(ニ) 座った両膝の間があく。
澪標(1960)〈外村繁〉「たつは〈略〉、斜め横に倒れる。その膝が割れ、膝小僧が出てゐる」
③ あれやこれやと思って、心が乱れる。
万葉(8C後)一二・二八九四「聞きしより物を思へば我が胸は破(われ)てくだけて利心(とごころ)もなし」
④ 事の筋道が明らかになる。秘密があらわになる。犯人がわかる。ばれる。
浄瑠璃栬狩剣本地(1714)三「破れかぶれ、奥様に知らせ、いっそわれて出よふか」
※われら戦友たち(1973)〈柴田翔〉四「『あの晩の襲撃者は、もう判ったの』『おお、それが割れていれば、苦労はしないさ』」
⑤ 数量の変動する事物で、数値がある目安の値以下になる。米相場で、相場が下落して、ある値段以下になる。
※稲の穂(1842‐幕末頃)「譬へば相場弐匁五分で持合て居る時、三匁以上に成るを三匁抜けと言、弐匁以下に成たを割れると言」
⑥ 女性が処女性を失う。また、初潮を見る。
※雑俳・川柳評万句合‐明和六(1769)松四「おどり子のばっかりいつかわれて居る」
⑦ 花札で、一人が集めれば役になる札が、他の者に取られる。

われ【割・破】

〘名〙 (動詞「われる(割)」の連用形の名詞化)
① われること。また、われたものやその破片。かけら。
※大鏡(12C前)三「あなよりとほるばかりのかはらけのわれしてうたせたまへりければ」
② 「われぜに(破銭)」の略。
※四天王寺文書‐東成郡天王寺村・永祿一二年(1569)三月一日(古事類苑・泉貨三)「織田信長精銭条々〈略〉ゑみゃう・おほかけ・われ・すり〈以五増倍之〉」
③ 勝負がつかないこと。勝負なし。あいこ。ひきわけ。
※俳諧・懐子(1660)五「すまふ場に破やみゆらん河津がけ〈好道〉」
商談・相談などがまとまらないこと。破談。
⑤ 数値がある目安以下になる。特に取引市場で、相場が下落してある特定の単位以下になること。〔取引所用語字彙(1917)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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