精選版 日本国語大辞典 「大夫・太夫」の意味・読み・例文・類語
たゆう タイフ【大夫・太夫】
〘名〙
※尾州家本住吉(1221頃か)下「かむぬしのたゆふ殿こそとこたふ」
③ 神社の御師(おし)の称号。初め伊勢神宮の権禰宜家より起こり、権禰宜は五位に叙されていたところから出た称。のちには禰宜以下、自治体の長にまで広がった。明治期以後消滅。全国に檀那を持っていて、布教・祈祷・代参を行ない、また、檀那の参詣のときの宿舎を提供する。伊勢神宮、熊野神社のものが有名。
※吾妻鏡‐養和元年(1181)一〇月二〇日「昨日、大神宮権禰宜度会光倫〈号二相鹿二郎大夫一〉自二本宮一参着」
※浮世草子・西鶴織留(1694)四「道者の千五百二千三千いづれの太夫殿にても定りのもてなし」
④ 広く日本の古典芸能の集団の長または主だった者に与えられた称号。能、狂言、浄瑠璃、歌舞伎などから、さらに広く大道芸、門付芸などの芸人にも用いられた。なお、能において、江戸時代には観世・金春・宝生・金剛の四座の家元に観世太夫、金春太夫のように用いられているが、新興の喜多流については喜多太夫の称号は用いられない。また、浄瑠璃では、語り手にのみ義太夫、加賀太夫のように用い、歌舞伎では、立女形(たておやま)および興行主を太夫と呼んだ。万歳では才蔵に対してシテをつとめるものをいう。
※今鏡(1170)八「伊賀大夫、六条大夫などいふ優れたる人どもあり」
⑤ 漁師、船頭、人買いなどの頭格の者を呼ぶ称。
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)「大夫のすがたをみたまひてあれば」
※俳諧・毛吹草(1638)五「立ならぶ松は太夫(タユフ)ぞいせさくら〈光忠〉」
⑧ 「たゆうさじき(大夫桟敷)」の略。
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上「太夫の三あたりに十七八のぼっとりとしたる娘」
⑨ 男芸者。たいこ持ち。〔洒落本・深川大全(1833)〕
[語誌]→「たいふ(大夫)」の語誌
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