禅宗伽藍の仏門。〈三門〉というのは〈三解脱門〉の意とされる。禅寺一山の正門を意味し,転じて仏寺自体の象徴的呼称としても用いられる。仏殿の前に立ち,本来はこの両脇から回廊が出て,仏殿または法堂(はつとう)の側面に取りついた。古代伽藍の中門に相当し,南大門にあたるものは総門と呼び小規模なものとする。山門は正面5間の重層門が本格で,側面を3間とした大規模なものもある。左右に鐘楼,鼓楼を接続するものであったが,これらを省略し,上層への登り口を覆って山廊としたものが多い。下層両脇には二天または金剛力士像を置き,上層内部も仏堂風に整備して,仏壇を置いて釈迦如来,十六羅漢像などをまつる。また天井には墨絵の竜などを描く。上層の組物は禅宗様(唐様)の三手先(みてさき)詰組物などを用い,軒は扇垂木とする。大徳寺三門(1589)などが代表作であるが,現存遺構中最古とされる東福寺三門(1410ころ)は,大仏様(天竺様)の影響をみせる。なお建築とは別に,天台宗の比叡山延暦寺をさしてとくに〈山門〉と呼び,これより出て別派をなした園城寺(三井寺)を〈寺門〉と呼んで,両者を対比区別した呼称がある。
→禅宗寺院建築
執筆者:沢村 仁
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禅宗寺院の七堂伽藍(がらん)の一つで、寺院の正式な入口。古くは寺の南と東西に面して三つ、あるいは参道に沿って三つ設けられたところから三門と書かれた。また一つの門でも、空(くう)、無相(むそう)、無作(むさ)の三解脱門(さんげだつもん)の意味で三門とされた。三門が山門と書かれるのは、寺の多くが山に建立されたことによる。一般に二階造りの楼門で、入口の左右に金剛力士(こんごうりきし)の像、あるいは四天王像を祀(まつ)り、楼上には十六羅漢(らかん)像を祀る。なお、山門は寺院の総称ともなり、天台宗では園城寺(おんじょうじ)流を寺門(じもん)(派)とよぶのに対し延暦寺(えんりゃくじ)流を山門(派)という。
[永井政之]
『横山秀哉著『禅の建築』(1967・彰国社)』
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…古くは筑紫国の一部であったが,律令制の成立とともに前後に分割され,その当初は筑紫後(つくしのみちのしり)国と称され,ついで筑後国となった。三潴(みぬま∥みむま),御井(みい),御原(みはら),山本,竹野(たかの),生葉(いくは),上妻,下妻,山門(やまと),三毛(みけ)の10郡を管し,国府・国分寺は御井郡(久留米市)に所在した。《和名抄》には田1万2800余町とある。…
…山号は比叡山。山門とも呼ぶ。近江,山城の国界にそびえる比叡山上にある日本屈指の大寺院で,東に琵琶湖を望み,西は京都を俯瞰(ふかん)する。…
…およそ現在の滋賀県大津市坂本本町,下阪本,唐崎,比叡辻にあたり,古代は近江国滋賀郡大友郷に含まれる。延暦寺創建以前より大山咋(おおやまくい)命と大己貴(おおなむち)命を合祀する日吉社(日吉大社)の鎮座地であったが,良源が18代天台座主に就任する平安中期以降,延暦寺=山門の勢力拡大にともないその膝下領域としての重要性を増していった。中世には日吉社から東にのびる日吉馬場を主要道路としてその周囲に寺家,社家,日吉社彼岸所,生源寺,里房(さとぼう)などの山門支配機関が立ち並び,全国的規模で形成された山門領荘園を管理する中心地として,また山上への物資補給基地として多数の僧俗が居住することになった。…
…五山は国家鎮護の道場として朝廷と幕府の官寺格となって手厚く造営され,伽藍も完備した大規模なものとなった。 禅宗寺院の伽藍は,背面に丘を負い前面へゆるい勾配で下がる寺地に,古代伽藍同様に中心軸上に総門,三門(山門),仏殿,法堂(はつとう)を配する。三門から回廊が出て前庭を囲み,仏殿または法堂に達する。…
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【日本】
神社の鳥居や,住宅の簡単な門を除いた大部分の門は,中国伝来の形式であると考えられる。門は形式によって名づけられるほか,寺院の南大門,中門,総門,三門(山門)など場所による名称,仁王(におう)門,随身(ずいじん)門など安置された像による名称があり,そのほか建礼門,桜田門など固有名詞をつけられたものなどがある。木造建築であるから,正面の柱間(はしらま)の数と,そこに開かれる戸口の数とによって,その規模が表され,五間三戸(ごけんさんこ),三間一戸,一間一戸というふうに呼ばれる。…
※「山門」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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