デジタル大辞泉
「寺」の意味・読み・例文・類語
じ【寺】
てら。多く接尾語的に用いて寺院を数えるのに使う。「末寺数百寺を数える本山」
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てら【寺】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( [朝鮮語] chyöl (礼拝所)、char (刹)または、[パーリ語] thera (長老)からという )
- ① 仏像を安置し、僧や尼が住み、仏道の修行や仏事を行なう建物。中国では、もと外国の使臣を遇する役所の意であったのが、後漢の明帝の時白馬寺を建立してから寺院をも呼ぶようになったという。寺院。精舎。伽藍(がらん)。蘭若(らんにゃ)。梵刹(ぼんせつ)。じ。
- [初出の実例]「各君親の恩(めくみ)の為に、競ひて仏の舎(テラ)を造る。即ち是を寺と謂ふ」(出典:日本書紀(720)推古二年二月(岩崎本室町時代訓))
- 「申(さる)のをはりばかりに、てらの中(うち)につきぬ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- ② 寺の住職。寺の僧。住持。
- [初出の実例]「さる寺(テラ)のなづみ給ひ、三年切て銀三貫目にして、大黒さまになりぬ」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)二)
- ③ 「てらこや(寺子屋)[ 一 ]」の略。
- [初出の実例]「寺(テラ)に上げて手習をさすれども」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)一)
- ④ 賭博(とばく)を開いている場所。博打宿。寺屋。また、その賭博を主催している人。胴元。
- [初出の実例]「てらが大纏のかしらでも、もらうの引くのといふこたあ、五分でもならねい」(出典:洒落本・自惚鏡(1789)きをい)
- ⑤ 「てらせん(寺銭)」の略。
- [初出の実例]「てらばかり拾五六貫目春中に取申候」(出典:浮世草子・万の文反古(1696)四)
- [ 2 ] 特に、園城寺(三井寺)をいう。比叡山延暦寺を山(やま)というのに対していう。
- [初出の実例]「教化(けうげ)おこなふ所、山・寺の作法うつして、大懺悔す」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘六年)
じ【寺】
- 〘 名詞 〙
- ① 役所。官衙(かんが)。〔説文解字‐巻三下・寸部〕
- ② てら。寺院。また、接尾語的に用いて寺院を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「この近きみやこの四十寺にきぬ四百疋をわかちてせさせ給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
- [その他の文献]〔杜牧‐江南春詩〕
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普及版 字通
「寺」の読み・字形・画数・意味
寺
常用漢字 6画
[字音] ジ
[字訓] もつ・てら
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は之(し)。寸は手にものをもつ形。寺は持の初文。金文の〔公鐘(ちゅこうけいしょう)〕に「年に至るまで、を是れ寺(たも)て」とあり、また〔石鼓文、田車石〕に「秀弓寺射す」とあるのは待って射つ意であるらしい。いずれもその状態をしばらく持続することをいう。〔説文〕三下に「なり。法度るなり」と官府の意を以て解するのは、漢以後の用義である。〔詩、大雅、瞻〕「時(こ)れ維(こ)れ寺」の寺は寺人、近侍の宦官をいう。外交の役所であった鴻臚寺を、のち浮(ふと)(僧)の居舎としたので、のち仏寺の意となった。
[訓義]
1. もつ、たもつ。
2. まつ、その状態をたもつ。
3. やくにん、宦官、そばづかい。
4. てら、やくしょ。
5. やかた、外国の使節のやどるところ、僧侶の宿するところ。
6. てら、寺院、僧舎。
[古辞書の訓]
〔字鏡集〕寺 ツカサ・チカシ・チカヅク・ツカサドル・テラ・マツリゴト
[声系]
〔説文〕に寺声として特・峙・待・詩・等・時・侍・・恃・持・など十五字を収める。特定の状態を持続する意をもつ語のようである。詩の古文は之に従う形であるが、詩とは呪誦としてその呪能を維持するものの意であろう。
[語系]
寺・侍・俟ziは同声。俟は待つ意。持・・diは声近く、は(たくわ)う、または人を待つ意である。
[熟語]
寺庵▶・寺域▶・寺院▶・寺宇▶・寺影▶・寺下▶・寺家▶・寺閣▶・寺額▶・寺官▶・寺宦▶・寺監▶・寺館▶・寺観▶・寺▶・寺禽▶・寺磬▶・寺庫▶・寺刹▶・寺寺▶・寺舎▶・寺主▶・寺処▶・寺署▶・寺省▶・寺人▶・寺前▶・寺曹▶・寺僧▶・寺▶・寺庭▶・寺奴▶・寺塔▶・寺内▶・寺尼▶・寺碑▶・寺壁▶・寺辺▶・寺門▶・寺裏▶・寺楼▶
[下接語]
遠寺・閹寺・塢寺・壊寺・官寺・宦寺・寒寺・宮寺・棘寺・空寺・寺・寺・古寺・孤寺・湖寺・荒寺・寺・山寺・社寺・秋寺・省寺・僧寺・台寺・塔寺・内寺・尼寺・破寺・廃寺・府寺・婦寺・仏寺・碧寺・法寺・坊寺・僕寺・末寺・名寺・野寺・林寺・列寺
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寺
れんじようじ
[現在地名]奈良市西紀寺町
崇道天皇社の南西に所在。常行山と号し、浄土真宗遣迎院派。本尊は鎌倉時代の木造裸形阿弥陀如来立像(県指定文化財)で平常は着物をまとっている。江戸時代を通して肘塚村・法華寺村(現奈良市)のうちに二〇石の朱印地を与えられ、「庁中漫録」所収の慶長七年(一六〇二)の徳川家康朱印状に「和州城寺之事、為興隆於添上郡肘塚村法華寺村之内二十石永寄附之、并寺中竹木進止不可有相違、可専坊舎修造抽祈祷精誠者也」とある。
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世界大百科事典(旧版)内の寺の言及
【寺院】より
…仏教の宗教活動の中心となる建物およびその所在する領域(境内)。精舎(しようじや),僧伽藍(そうぎやらん)(伽藍(がらん)),仏刹(ぶつさつ),寺(てら)などとも呼ばれ,仏舎利をまつる塔,仏像や諸尊像をまつり仏事供養を行う諸堂,僧侶の修行のための諸施設,布教のための諸施設などを含む。
[インド]
仏教寺院は,釈迦が比丘(びく)たちの修行のため,雨季に一定の土地を画して(結界)止住させた(安居(あんご))ことに始まる。…
【寺院建築】より
…これが中央アジアを経て後漢代(1~3世紀)に中国に伝えられた。塔殿と僧房その他を有する建築群に官衙(かんが)や宮宅の形が応用されて,官庁の意である寺という呼び方が使われ,外来宗教(今日ではキリスト教を除く)の施設が寺と呼ばれた。院は障壁で包まれた一部の意で,寺の一部分を指したものである。…
【寺町】より
…近世城下町は城郭を中心に,武士の居住地である武家地と,商人・職人の居住地である町人地で構成されたが,これらを取り囲む外郭の要所に寺院が集団的・連続的に配置された。この部分を寺町と呼ぶ。…
※「寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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