出来る(読み)デキル

デジタル大辞泉 「出来る」の意味・読み・例文・類語

で・きる【出来る】

[動カ上一]カ変動詞「でく(出来)」の連体形「でくる」から》
いままでなかった物事がつくられて存在する。新しく物事が生じる。発生する。出現する。「水たまりが―・きる」「にきびが―・きる」「急用が―・きる」「―・きたことはしかたがない」
作物などがつくられる。収穫物が得られる。生産される。「当地では柑橘かんきつ類が―・きる」「家庭菜園で―・きたトマト」「今年は米がよく―・きた」
建物や組織などが新しくつくられる。成り立つ。「ダムが―・きる」「組合が―・きる」「合意が―・きる」
まとまったもの、完全なものに、つくりあげられる。仕あがる。「したくが―・きる」「原稿が―・きた」
材料が…である。作りや構造がそのようである。「木で―・きた橋」「精巧に―・きているおもちゃ
(結果として)そうするように生まれつく。「よくよく損な役まわりをするように―・きている」
人格・能力・成績などがすぐれている。「彼は仕事が―・きる」「若いに似合わず人間が―・きている」「よく―・きる生徒」
(ひそかに)性的関係を結ぶ。恋愛関係になる。「―・きた仲」「二人は―・きている」
それをする能力や可能性がある。「ロシア語が―・きる」「―・きるだけ努力します」
10 (俗に)妊娠する。→出来ちゃった婚
11 (動作性の意味がある語に付いて、接尾語的に用い)そうする能力や可能性がある。また、そうすることが許される。…しうる。「運転―・きる」「拝観―・きる」「スタート―・きる」「そこへはお通し―・きません」「のんびり―・きる」
12 出てくる。現れる。
「今度用事でお江戸さあ―・きるついでに」〈滑・旧観帖・初〉
[類語](1生ずる生まれる現れる起こる発生する生成する起きるきざ発する生起する湧く出現する現出する登場する現前する顕現する現ずるのぞ台頭デビュー誕生登板お目見えのし上がる躍り出る頭角を現す頭をもたげる/(2産するとれる/(3生まれる誕生する成立する発足する開設する新設する発会結成創業創設創始創立設立開業始業/(4出来上がる仕上がる成るまとまる整う済む上がる完成する完了する成り立つ仕上げる成就達成大成速成適う実現成立出来しゅったい樹立確立存立打ち立てる成功奏功上首尾結実開花実を結ぶ花開く物になる格好がつく様になる型にはまる枠にはまる

で・ける【出来る】

[動カ下一](多く関西地方で)「できる」に同じ。「最近子供が―・けた」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「出来る」の意味・読み・例文・類語

で‐・きる【出来】

  1. 〘 自動詞 カ行上一 〙 ( カ変動詞「でくる(出来)」の上一段化したもの )
  2. [ 一 ] 出てくる。現われる。
    1. [初出の実例]「竺法蘭のこちへできらるるに逢てつれてきたそ」(出典:百丈清規抄(1462)二)
    2. 「泉州に唐かね屋とて金銀に有徳なる人出来(デキ)ぬ」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)一)
    3. 「月が出来た」(出典:俚言集覧(増補)(1899))
  3. [ 二 ] 新しく存在するようになる。
    1. 物事が生じる。発生する。生まれる。起こる。
      1. [初出の実例]「海河の、俄にできても候はばこそ」(出典:平家物語(13C前)九)
      2. 「コレ、見な。こんなに痣(あざ)が出来(デキ)たア」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)二)
      3. 「きまって女ができるんだから」(出典:青べか物語(1960)〈山本周五郎〉留さんと女)
    2. 作りあげられる。設けられる。しあがる。完成する。
      1. [初出の実例]「是程は出来ましたれど、是程は暫く待て下されいなんどと、言われませうか」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)
      2. 「吾々人間と云ふものは、よく出来たもので」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観)
    3. みのる。収穫がある。生産される。とれる。
      1. [初出の実例]「はるの日に出来ぬる瓜や進むらん〈似空〉」(出典:俳諧・新続犬筑波集(1660)一)
    4. 手にはいる。得る。
      1. [初出の実例]「四十円出来なければ、三十円でも為方がないが」(出典:細君(1889)〈坪内逍遙〉三)
    5. ( 特に、主語を明示せずに用いる俗な言い方 ) 妊娠する。
      1. [初出の実例]「あたし、できたらしいの。どうするの」(出典:四十歳の男(1964)〈遠藤周作〉)
  4. [ 三 ] 能力や可能性を持つ。
    1. 物事をよくする。学問技芸などにたくみである。その方面の能力がある。長じている。
      1. [初出の実例]「一寸(ちょっと)出来(デキ)ると思の外、此柏屋の約束も翌明々日(あすあさって)と云延たるが」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
    2. 人柄などが円満ですぐれている。精神的修養をつんでいる。苦労している。→できた[ 二 ]
      1. [初出の実例]「貴女の様にお優(デキ)なさる方が、些細(いささか)なお金で御心配なさいますのが」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前)
    3. することが可能である。することが許される。動作を表わす語を受けて、その動作をすることが可能である意を表わす。
      1. [初出の実例]「わか衆の前がみ女の脇詰男がしらいでたつ物か、できぬ仕方と言ひければなふ、そこらを忘れるおなつでなし」(出典:浄瑠璃・五十年忌歌念仏(1707)中)
      2. 「年が明けざアその相談はどうも出来ますまいて」(出典:歌舞伎・お染久松色読販(1813)序幕)
  5. [ 四 ] 男と女が愛情をかわす。男女がなかよくなる。→できた[ 二 ]
    1. [初出の実例]「出来そうになると藪入りかへるなり」(出典:雑俳・柳多留‐七(1772))
    2. 「あの女と出来たのもあの頃ですぜ」(出典:老年(1914)〈芥川龍之介〉)
  6. [ 五 ] 賭博が開帳される。
    1. [初出の実例]「今日内会のめくりができると言ふから、ソレ此春こしらへたもへぎはかたを、たちまち二本通用とくらはして行た所が」(出典:洒落本・卯地臭意(1783))

出来るの語誌

( 1 )「デクル」から、二段活用の一段化に影響されて成立した。近世以降デクルよりも優勢となる。→「でくる(出来)」の語誌。
( 2 )デキルから変化したデケルという形もあり、近世前期にはデキルとデケルとが拮抗していたが、後期に入るとデケルは方言的なものと意識されていたらしい。
( 3 )連用形はカ変「でくる」と区別ができないので、便宜上この項におさめた。


で‐・くる【出来】

  1. 〘 自動詞 カ行変 〙
    [ 文語形 ]で・く 〘 自動詞 カ行変 〙 ( 「いでく」の変化したもの )
  2. 出てくる。現われ出る。出現する。また、新たに生ずる。生まれる。
    1. [初出の実例]「『やうやう』と云声を言ふ者有。乗せたる心より出づ。能下らんとて、かかる心得でくる也」(出典:申楽談儀(1430)声の事)
    2. 「父がなうてはどこからでこうぞ」(出典:史記抄(1477)七)
    3. [その他の文献]〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. 物事がおこる。新しい事態が発生する。ある状態になる。出来(しゅったい)する。
    1. [初出の実例]「兵がつかへて久ければ思もよらず変がてくるぞ」(出典:史記抄(1477)一五)
  4. 仕あがる。作られる。生産される。
    1. [初出の実例]「もとの米が尽れば今年の米がでくやうに」(出典:史記抄(1477)一〇)
  5. することが可能である。
    1. [初出の実例]「二月か三月も慣るれば、誰にでも出来(デク)る事だ」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉上)

出来るの語誌

( 1 )中古までのイデクが、具体的に物や人が(ある所から)出て来ることを多く示すのと異なり、デクルは主に物事が発生・成立するという意で用いられた。このような意味変化により、デクルのクルは「来」であるという語源意識が薄れ、上一段活用形デキルが生じたものとみられる。
( 2 )連用形「でき」は、上一段動詞「できる」の連用形と同じ形で区別しがたいので便宜上「できる」の項におさめた。


で・ける【出来】

  1. 〘 自動詞 カ行下一段活用 〙できる(出来)
    1. [初出の実例]「いつごろでけませう。されば十年ばかりせずばでけますまひ」(出典:狂言記・仏師(1660))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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