(読み)テキ

デジタル大辞泉 「的」の意味・読み・例文・類語

てき【的】[漢字項目]

[音]テキ(漢) [訓]まと
学習漢字]4年
ねらったり目ざしたりする対象。目標。まと。「的中金的射的標的目的
的に当たるように確かである。「的確
はっきりと分かるさま。「的然端的
…の。…のような。…に関する。「外的劇的公的詩的人的性的知的動的美的病的法的量的
[名のり]あきら・まさ

てき【的】

[接尾]
名詞に付いて、形容動詞の語幹をつくる。
㋐そのような性質をもったものの意を表す。「文学表現」「詩発想」
㋑それについての、その方面にかかわる、などの意を表す。「教育見地」「政治発言」「科学方法」
㋒そのようなようすの、それらしい、などの意を表す。「大陸風土」「平和解決」「徹底追求」
人名や人を表す語(また、その一部)に付いて、親しみや軽蔑けいべつの気持ちを込めて、その人を呼ぶのに用いる。「取(=下級の力士)」「泥(=泥棒)」「幸(=幸次郎)」
[補説]1は、中国語の「の」の意味に当たる助辞の使い方にならって、明治時代の翻訳文のなかで、英語の‐ticなどの形容詞的な語の訳語に「的」を当てはめたことに始まる。
名詞以外にも、「彼は『犬も歩けば』的な慣用句を多用する癖がある」「彼の上から物申す的な態度が気になる」のように文や句を受ける用法もある。
また最近、「わたし的には」「ぼく的には」という若い人が増えて批判の対象となった。これは「わたしは」「ぼくは」と直截に言うのを避けた言い方である。「わたしとしては」「ぼくとしては」とぼかした表現で、「個人的には」「将来的には」などと同じ用法と見てよい。→ほうとか
[類語]

まと【的】

弓や銃砲などの発射の練習の目標にする道具。円形・方形など各種あるが、普通は中央に黒点を描いてある。標的。「―をねらう」

㋐物事をするときの目標・対象。めあて。「非難の―になる」「受験校の―を絞る」
㋑物事の核心。「―をそれた質問」
紋所の名。1図案化したもの。
[類語]目途目標目安方向対象矛先当たり目当て目的標的狙いターゲット

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精選版 日本国語大辞典 「的」の意味・読み・例文・類語

てき【的】

  1. 〘 接尾語 〙
  2. [ 一 ] 人名または人を表わす語、あるいはこれらの一部分(多くは、はじめの二音節)について、親愛の気持、または軽蔑の意をこめてその者を呼ぶのに用いる。中国の俗語で、「村的(いなか者)」「唱的(芸者)」「控馬的(馬子)」などの用法があり、これをまねたものという。江戸末期から明治にかけての俗語として用いられ、明治期(一八六八‐一九一二)には、書生ことばや新聞の雑報欄の用語として使われ、香具師(やし)や盗人の隠語として、後にも引き継がれる。「幸的(幸次郎)」「土左的(土左衛門)」「官的(官員)」など。
    1. [初出の実例]「これも賤娼的の口気なり」(出典:夜航余話(1836)下)
    2. 「だから田の的(テキ)が恋着するヨ。どうです。田の的(テキ)を廃業(ひか)してしまって」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
  3. [ 二 ] 名詞、特に抽象的な意味を表わす漢語の名詞や体言的な語および句について、体言、または形容動詞語幹をつくる。中国語の助辞の用法にならって、明治初期の翻訳文のなかで、英語の -tic などの形容詞的な語の訳語として二字の漢語につけて用いられ出したもの。
    1. そのような性質をもったものの意を添える。初期の例に多い。
      1. (イ) 体言について用いる場合。
        1. [初出の実例]「前に述べたる如く衣食住より銭貨等に至るまでの外物的を富饒に得る幸福と」(出典:幸福は性霊上と形骸上と相合する上へに成るの論(1877頃か)〈西周〉二)
      2. (ロ) 文・句を受けて全体を体言格とする場合。
        1. [初出の実例]「予がいふ反訳文は今の新聞紙の文体をいふ也。『豈(あに)それ然らんや』的の文章、若しくは『アナ喧や静まらずや』的の文辞をいふなり」(出典:文章新論(1886)〈坪内逍遙〉)
    2. 漢語について、直接、または「な」をともなって連体修飾語として用いられるほか、形容動詞語幹として使われる。
      1. (イ) そのような性質を有する、それらしい、の意を表わす。「貴族的」「悲劇的」「病的」「合法的」「平和的」など。
      2. (ロ) それに関する、それについての、その方面にかかわる、などの意を表わす。「美的」「私的」「科学的」「政治的」「現実的」など。

まと【的】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 弓・鉄砲などの発射練習をする時、目標とするもの。主として板・紙・布・革などでつくり、種々の形がある。ふつう、黒でまるく描き、中央に黒圏がある。
    1. [初出の実例]「的(まと)に中たるひとには祿給ふこと差有り」(出典:日本書紀(720)天武五年正月)
  3. 世間の関心の対象となるもの。物事のめあて、目標となるもの。
    1. [初出の実例]「馬おろさんとせば、敵の的になって射られんず」(出典:平家物語(13C前)一一)
  4. 紋所の名。を図案化したもの。的、丸的に当り矢などがある。
    1. 的@丸的に当り矢
      的@丸的に当り矢

いくは【的】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「いくう(射)」から出た語か ) 弓の的(まと)。ゆくは。

的の語誌

書紀‐仁徳一二年八月(前田本訓)」の「唯的(イクハ)臣の祖盾人宿禰のみ、鉄の的を射て通しつ。〈略〉明日(くるつひ)盾人宿禰を美(ほ)めて名を賜ひて的(イクハ)の戸田宿禰と曰ふ」の例は、固有名詞に用いられているが、「和名抄」に「いくはところ」の語があることなどから、一般名詞として存在したと思われる。


ゆくは【的】

  1. 〘 名詞 〙(まと)。弓の的。いくは。
    1. [初出の実例]「的 由久波」(出典:享和本新撰字鏡(898‐901頃))

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普及版 字通 「的」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

(旧字)
8画

(異体字)
7画

[字音] テキ
[字訓] あきらか・まと

[説文解字]

[字形] 形声
正字はに作り、(勺)(しやく)声。(てき)の声がある。〔説文〕七上に「らかなるなり」という。〔淮南子、説林訓〕に「(てきてき)たるられ、提提たるは射らる」とあり、「」とはめだつことをいう。はその異体字であるが、のちこの字を用いる。〔玉〕に「射の質なり」、〔広雅、釈器〕に「白なり」とあり、射的の的(まと)の中心のところをいう。明らかの意より明確・的確の意となる。的(てきれき)はかがやく意の畳韻の語である。

[訓義]
1. あきらか、はっきり。
2. まと、めあて、かなめ。
3. まこと、たしかに。
4. とおい。
5. たかまゆ、女子の額(ひたい)に赤い点を加え、月事を示す。的点、的子。
6. 下につけて状態詞とする。底・地などと同じ。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕 万斗(まと)〔名義抄 マト・アタル・ミル・トホシ・マタク・マサシ・アキラカナリ・タシカニ・サダム・ハタタカナリ 〔字鏡集〕 イル・タダシ・マタク・マコト・トホシ・マト・シロシ・マサニ・アキラカ・アナクル・イチジロシ・アキラカナリ・タシカニ・ハタタカナリ

[語系]
)・tyekは同声。一上は「(てきれき)、珠なり」とあって、珠のかがやくさま、的と同じ形況の語である。

[熟語]
的意・的確的拠的句・的見的言的稿・的子・的爾・的識的実的準・的証的是・的然・的・的対・的知・的中的定・的的・的当・的畢的筆的保・的・的歴・的礫・的盧・的論
[下接語]
画的・格的・的・儀的・金的・公的・私的・指的・質的・射的・准的・準的・審的・星的・的・端的・知的・中的・発的・表的・標的・目的

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改訂新版 世界大百科事典 「的」の意味・わかりやすい解説

的 (まと)

弓術や射撃の練習・競技にあたって目標として立てる器具。的にはいろいろの種類があり,まず静止的と運動的とに大別される。静止的には標的,戦闘射撃的,落下的などの種類がある。標的は木製または厚紙製の平板で,たいていは白地の中央に黒円があり,その周囲に数個の同心円を描き,それぞれ点数が記してある。中心円の上下に縦線を引いた標的もあり,この線を的としていわゆる縦線射撃をおこなう。弓術ではもっぱら標的を使用する。戦闘射撃的には歩兵の絵が描かれ,頭的,胸的,膝(ひざ)的,全身的の区別がある。落下的は弾(たま)が命中すると台から落下する。運動的には空中射撃用,地上射撃用,海上射撃用などがあり,空中射撃の的には放鳥とクレー・ピジョン(粘土の鳩)が用いられる。生鳥とクレーとでは価格がひじょうにちがうので,今日のクレー射撃競技ではクレーを使うが,これは濠(ごう)の中にすえつけたトラップで放出したり,別に高塔を設けてその塔上から放出する。地上射撃には,機械装置によって地上を左右に運動する的があり,多くは野獣の形が用いられる。海上射撃では水上を曳航(えいこう)される的を船上あるいは海岸から射撃する。
アーチェリー →射撃競技
執筆者:

弓矢の的には鍛錬用と歩射(かちゆみ)/(ぶしや)用,騎射(うまゆみ)用の別がある。射法を鍛錬するためには〈つくら〉といって〈ねこがき〉または〈ねこた〉という織り方のむしろを巻いて作り,台の上にすえて小口を射るのを例とした。江戸時代には〈つくら〉がすたれ,藁をたばねて縄を巻いてくくった巻藁になり,さらにはこの巻藁を桶のなかに入れたものもできた。歩射は普通の的矢と,小型の蟇目(ひきめ)をつけた四目(しめ)または神頭(じとう)の矢によって相違する。普通の的矢の的は径1尺2寸(約36cm)とし,表面に円輪を描いて,その輪を大眼・小眼などという。遠距離に用いるのを大的とし,径5尺2寸でヒノキの〈へぎ〉を組んで作り,表に紙をはって円輪を描き,外輪の所に3ヵ所,蟬(せみ)とよぶ木製の根をつけ,これにひもをかけて鳥居形の的串(まとぐし)につるして用いた。神頭の矢は円物(まるもの)または〈ぶりぶり〉を的とする。円物は球形の二つ割りに似た形状による名称で,円形の板を白革包みとし,なかに綿を入れて中央を高くふくらませて矢だまりとし,表面正中に星とよぶ黒点を描き,裏面3ヵ所に乳(ち)をつけて綱を通して鳥居形にかける。〈ぶりぶり〉は円物に似て小さく,乳を2ヵ所として鳥居形につるした形状が遊戯の毬杖(ぎつちよう)の〈ぶりぶり〉によく似ているためによばれた。四目の矢も円物や草鹿(くさじし)を的とした。草鹿は,草に鹿の伏した形をヒノキの板を心として白革で作り,栗色塗として斑文の星を白く出して矢あてとし,裏に乳を4ヵ所つけて鳥居形にかけた。騎射の的は流鏑馬(やぶさめ)に笠懸(かさがけ)と挟物(はさみもの)がある。流鏑馬の的は径1尺8寸の方形のヒノキの板的で竹串にはさんで立て,笠懸は射手の綾藺笠(あやいがさ)をかけて的としたのを形式化し,1尺8寸円の革的を鳥居形にかけるのを例とした。挟物は時に応じて,沓(くつ),足半(あしなか),鼻紙,扇,団扇,土器,木の葉の類を竹串にはさんで的とした。
弓道
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「的」の意味・わかりやすい解説


まと

弓を引くときなどに目標として置くもので、木板、紙、革、布を使用し、さまざまな形や大きさのものがある。古く朝廷において射礼(じゃらい)に用いた的は、2尺5寸(約76センチメートル)の円形板材に内より内院(内規)、中院(中規)、外院(外規)と三重の輪を黒く描いたもので、後世これを一の黒、二の黒、三の黒とよぶようになった。また、騎射には1尺8寸(約54センチメートル)の方形的を用いた。さらに武家社会のなかで弓射諸式が整備されるに及んでさまざまな形式のものが用いられるようになった。まず大的(おおまと)は径5尺2寸(約158センチメートル)のヒノキまたはタケの薄板を網代(あじろ)に組み、紙を張ったもので、大的の半分径のものを半的という。また、1尺2寸(約36センチメートル)以下の径のものを小的(こまと)という。そのほか径8寸(約24センチメートル)の板を革で包み中に毛を入れやや膨らみをもたせた丸物、丸物を小型(3、4寸=約10センチメートル)化した振々(ぶりぶり)(布利布利)や、扇、紙、木の葉、沓(くつ)、貝などを串(くし)に挟んで標的とする挟物(はさみもの)、さらに鹿(しか)形を射る草鹿(くさじし)などがある。流鏑馬(やぶさめ)、笠懸(かさがけ)の的も一種の挟物である。犬追物(いぬおうもの)は馬上から逃げ惑う犬を的として射る。

 なお現代の弓道競技における的は、近的(きんてき)競技では1尺2寸の星的または霞的(かすみまと)が使用され、遠的(えんてき)競技では径1メートルの霞的を使用するのが一般的である。射撃競技やアーチェリーの的についてはその項目を参照されたい。

[入江康平]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【化粧】より

…また最近では,〈美容〉という言葉を化粧と同義に用いることもあるが,これは化粧だけでなく,化粧の予備行為を含んでいる。
【文化人類学から見た化粧】

[文化的機能]
 化粧は本来,人間にとって最も普遍的,かつ原初的な装身行為であり,未開社会においてはひじょうに重要な文化要素の一つである。衣服を身につけない裸族や,衣服にほとんど関心を払わない民族においても,祭りには顔や体に色を塗るし,また日々食べるものにも事欠く極端に貧しい社会でも,人々は化粧に時間を費やす。…

※「的」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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