(読み)キ

デジタル大辞泉 「貴」の意味・読み・例文・類語

き【貴】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]たっとい とうとい たっとぶ とうとぶ
学習漢字]6年
価値・身分が高い。「貴顕貴族貴重貴賓貴金属貴公子高貴尊貴富貴
値段が高い。「騰貴
相手に対して敬意を示す語。「貴下貴君貴校貴国貴社貴殿
[名のり]あつ・あて・たか・たかし・たけ・むち・よし
[難読]貴方あなた貴女あなた貴人うまひと・あてびと

き【貴】

[接頭]
人や人の集団を表す言葉に付いて、身分・位・家柄などが高いことを表す。「公子」「夫人」「族」
相手または相手に属する物を表す語に付いて、敬意をもって「あなたの」の意を表す。「国」「社」「研究所」
[接尾]人を表す語に付いて、年長者などに対する敬愛・親愛の気持ちを表す。「姉」「伯父

むち【貴】

神や人を尊んでいう語。固有名詞の下に付けることが多い。「大日孁おおひるめの」「大己おおあな

あて【貴】

[形動ナリ]
身分が高いさま。
「世界の男、―なるも卑しきも」〈竹取
上品で美しいさま。
「頭つき様体細やかに―なる程は」〈・宿木〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「貴」の意味・読み・例文・類語

き【貴】

  1. [ 1 ] 〘 接頭語 〙
    1. 人や、人の集団を表わすことばに付いて、身分や位、家柄などが高い意を表わす。「貴公子」「貴婦人」など。
    2. 相手、または相手に属する物を表わす語の上に付けて、「あなたの」の意を、尊敬の気持をこめて表わす。「貴君」「貴兄」「貴店」「貴意」「貴国」など。
      1. [初出の実例]「貴銀行へ持参致さんかとも存じ候が」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉虚業家尺牘数則)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 人を表わす語に付いて、敬愛の意を表わす。近世以後からの用法。友人の人名のほか、伯叔父母、兄姉を表わす語に付くことが多い。「兄貴」「伯父貴」など。
    1. [初出の実例]「金八、わりゃ伯母貴(キ)を捨て置いたか」(出典:歌舞伎・けいせい廓源氏(1802)六段)

貴の補助注記

[ 一 ]について「ロドリゲス日本大文典」では「qui(キ)はタットシで、尊敬すべき等といふ意味をあらはす。ソン(尊)よりは低い敬意を示し、本来は俗人や剃髪してゐない人に対して使はれる。例へば、quiden(キデン)、quixo(キショ)、〈略〉等」といっている。また、待遇価値は「御」「芳」よりも高いという。


あて【貴】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 身分や家柄などが高く貴いさま。高貴だ。⇔いやしい
      1. [初出の実例]「あてなるもいやしきも、いかで此のかぐや姫を得てしがな、見てしがなと」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 人の容姿、態度などが上品でみやびやかなさま。目立たないものや弱小なものに品格のある美しさが感じられるさま。
      1. [初出の実例]「容姿(かほかたち)清らならばあてにらうらうしき人といへど」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
  2. [ 2 ] ( [ 一 ]から転じて ) 父上。
    1. [初出の実例]「あては麿(まろ)をば恋しとは思ひ給はぬか」(出典:栄花物語(1028‐92頃)ゆふしで)

貴の派生語

あて‐さ
  1. 〘 名詞 〙

むち【貴】

  1. 〘 名詞 〙 神や人を敬っていう語。〔水戸本丙日本紀私記(1678)〕

貴の補助注記

多くは「大日孁貴(おおひるめのむち)」「道主貴(みちぬしのむち)」のように、固有名詞の下に付けて用いられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「貴」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音]
[字訓] とうとい・たかい

[説文解字]

[字形] 会意
(きょく)+貝。貝を両手で捧げる形。貴重なものとして扱う意を示す。〔説文〕六下に「物賤(やす)からざるなり」とし、字形を貝に従い、臾(ゆ)声とするが、声が合わない。また「臾は古文なり」とするが、は物を運ぶ草器のもっこで、貝を草器に入れることはない。貝は系で貫いて前後にふりわけて荷ない、一朋という。古く貨として通用し、彝器(いき)の銘文に、その製作費に十数朋の貝を用いたと記すものがある。のち物のみでなく、人の身分や性行などに関しても用いる。

[訓義]
1. とうとい、たかい、貴重。
2. 身分が高い、爵位が高く禄秩が多い。
3. 性情がたかくすぐれる。

[古辞書の訓]
名義抄〕貴 タフトシ・タフトブ・タカシ・アフ・オソル・アテヤカナリ

[声系]
〔説文〕に貴声として(遺)・・饋・・潰・・匱・など十七字を収める。饋・は遺贈の意であるが、などには乱の意がある。宝貝・貝貨の毀損しやすいことからの転義であろう。

[熟語]
貴位・貴意貴一・貴越・貴遠・貴下・貴価・貴家・貴介・貴階・貴客貴赫・貴貴義貴倨・貴虚・貴近・貴顕・貴賢・貴公貴倖貴幸・貴国・貴左・貴札貴仕・貴種・貴主貴酬・貴尚貴臣貴信・貴盛・貴誠貴戚・貴賤・貴族・貴宅・貴冑・貴重・貴・貴閥・貴妃・貴賓・貴嬪・貴富・貴望・貴茂・貴門・貴游・貴遊・貴要・貴恙・貴覧・貴里・貴和
[下接語]
栄貴・奇貴・居貴・拠貴・倨貴・挟貴・矜貴・権貴・顕貴・孤貴・賈貴・高貴・傲貴・豪貴・親貴・崇貴・清貴・盛貴・尊貴・冑貴・朝貴・貴・珍貴・糴貴・騰貴・負貴・富貴・忘貴・暴貴・隆貴・良貴

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

デジタル大辞泉プラス 「貴」の解説

貴(たか)

山口県、株式会社永山本家酒造場の製造する日本酒。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【貴族】より


【西洋】
 西洋の歴史において貴族とは,一般に大規模な世襲的土地所有を経済基盤として,生活のための手の労働から解放され,その卓越した軍事的役割と,高貴な血統による排他的門閥形成を通じ,国家の政治的指導の面で大きな特権をもつ身分を指す。英語ではnobility,フランス語ではnoblesse,ドイツ語ではAdel。…

【公家】より

…本来公家(こうか∥こうけ)の語は,朝廷・国家ひいては天皇など〈おおやけ〉を指す。律令制のもとでは,為政者は三位以上の〈貴〉と四,五位の〈通貴〉にわけられ,地方の豪族や名望家はその下位に位置づけられていた。平安後期武士や寺社の勢力が強大になると,朝廷(おおやけ)の政治を担当する身分つまり朝臣が公家と呼ばれるようになり,なかでもその最高の地位たる大臣,納言,参議を公卿(くぎよう)(総じて三位以上を上達部(かんだちめ)という),四,五位の昇殿を許された者を殿上人(てんじようびと)といい,それ以下の地下人(じげにん)と区別した。…

【爵位】より

…一般に身分的な位階序列を表す貴族の称号を爵位というが,貴族制の存在したヨーロッパ世界と中国,日本でのありようは歴史的に異なる。
[ヨーロッパ]
 古代ローマの貴族には,位階序列を表す称号はなく,ヨーロッパの爵位は,中世・近世においてその発達をみることができる。…

※「貴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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