翻訳|telephone
現在,日本では約7000万台の電話機が使われており,これらは約5000局の電話交換機と有線,無線の多数の電話伝送システムによって相互に接続されている。世界全体には7億台に近い電話機が存在し,これらは国際回線網によって結合されて電話網と呼ばれる巨大な電気通信ネットワークを構成している。電話網は,その電気通信端末としての電話機,会話情報を遠方に伝達するための通信伝送路,相手電話機までの接続経路を選んで接続を行う電話交換機の3要素から構成されている。
電話機は音響信号を電気信号に変換する送話器,その逆の変換を行う受話器,ダイヤル機能や呼出し信号受信などの信号回路などから構成されている。
電話用の送話器には,音圧による炭素粉の抵抗変化を利用して音響-電気変換を行う炭素送話器が古くから使用されている。炭素送話器の特性は,原理的に多少のひずみを伴うために一般の音響機器には現在ではほとんど使用されていないが,必ずしもハイファイを要求されない会話音声の伝達には十分であり,高感度で経済的であるために電話用には広くこの方式が採用されている。図1に炭素送話器の原理を示す。この変換器は良質の無煙炭を粉状にくだいて焼成した炭素粉を半球状の容器に入れ,これを固定電極と可動電極ではさんだものである。可動電極には振動板がついており,音響入力によって振動する。電話交換機からは加入者線を通じて数十mAの直流電流が供給されており,音圧によって可動電極が振動すると炭素粉抵抗が変化して電流が変動する。この電流変動分が通話電流として,交換機を経由し,相手電話機まで伝達される。図2に電話用受話器の原理を示す。電話用受話器には,やはり多少のひずみは伴うが堅牢,低価格で,しかも高感度な電磁形受話器が広く使用されている。このコイルに通話電流が流れると磁極の吸引力が変化し,通話電流に比例して振動板が振動する。この振動が音波となって放射されるのである。図3は回転ダイヤル形の標準的な電話機の回路図である。TRは送話器,REは受話器,VRは過電圧防止用のバリスターである。誘導コイルLと抵抗R2,R3,コンデンサーC2,C3からなる回路はブースター形側音防止回路である。ブースターとは電圧を昇圧する意味で,低インピーダンスの炭素送話器出力を一種のオートトランス(単巻変圧器)の原理で昇圧して線路インピーダンスに整合させる機能をもつ。側音とは自己の送話器からの通話電流が自己の受話器に回り込む音のことをいい,受話効果を高めるためにはこれを適度に抑圧する必要がある。側音防止回路は一種のブリッジバランスによって側音の抑圧を行っている。図3の右半分は信号回路である。受話器を上げるとフックスイッチh1,h2が切り替わり,交換機から送られてくる直流電流が流れ込むようになっている。交換機はこの電流を検知して加入者の発呼を検出する。di,dsはダイヤル接点で,ダイヤルを回すとdsが閉じて送受話系を短絡し,もどり回転の際にダイヤル数字の数だけdiが断続する。これによって直流電流が図4のように断続され,ダイヤルパルスとして交換機に伝えられる。交換機はこのパルスの数を数えることにより接続相手を知るのである。図3のR1,C1はダイヤル接点保護用の火花消去回路,Bは呼出用の電鈴である。
電話機には上記の回転ダイヤル電話機のほかに,押しボタンダイヤル電話機も広く用いられている。日本ではこれをプッシュホン(push-phoneは日本での呼称であるが,アメリカではpush-button,dialing,tone dialing,touch call,touch-toneなどと呼ばれている)と呼んでいる。プッシュホンは図3に示した電話機回路のダイヤル接点の代りに発振器を内蔵したものであり,発振する周波数によってダイヤル数字を表すようにしたものである。図5に押しボタン配置と発振周波数の関係を示す。発振は高群と低群の2周波が同時に発振できるようになっている。例えば“5”を押すと1336Hzと770Hzが同時に発振する。交換機はこの周波数の組合せを分析することによりダイヤル数字を判別するのである。
プッシュホンの特徴は,0~9の数字ボタンのほかに,赤ボタンや青ボタンのような機能ボタンを追加しやすいことにある。これによって多種類の交換サービスを区別した使いやすい交換接続が可能になる。第2の特徴はダイヤル操作が簡便で高速化されることである。第3は押しボタン信号の周波数が音声周波数帯域内に設計されているため,交換接続後でも電話網を通じて相手端末まで数字情報を伝送することができ,したがって押しボタン操作で簡易なデータ通信も可能になることである(ダイヤルパルスは音声周波数帯域外であり,最初の交換機までは伝達されるが,通信網内は伝送できない)。
テレビ電話はコストやニーズの点からまだ一般にはあまり普及していないが,技術的には何種類かの方式がすでに開発されている。通信網の高度化につれて,当面はビジネス通信用としてこれからしだいに普及していくものと考えられている。テレビ電話はその設置場所や,天候,時刻などによって照明条件が大きく変わるので,自動感度調整機能がとくに重要である。受像回路はふつうの放送用テレビ受像機とほぼ同様に構成される。接続回路には送受信回路のほかに,相手に送るべき画像を確認するためのモニター用折返し切替え回路がついている。電話機回路は音声伝達のための回路で,ふつうの電話機の機能のほかに拡声機能なども付加されている。
図6は電話伝送系の構成概念図である。電話交換機が収容されている電話局から加入者宅内の電話機に至る伝送路を加入者線という。加入者線は2本の導線をより合わせた〈より対線〉からなるが,これを束にして通信ケーブルを構成する。このようにたくさんの導線を束にしたケーブルを平衡形ケーブルという。平衡形ケーブルは用途に応じて十数対のものから数千対のものまでいろいろある。ケーブルは電話局から末端にいくにつれて分岐され,しだいに細くなっていく。都市中心部ではとう(洞)道や管路内を通した地下ケーブルが多いが,末端部では地上に立ち上げ,電柱を用いた架空ケーブルとして各加入者宅に配線する。電話局からこの配線接続を行う接続端子箱までの加入者ケーブルを饋(き)線ケーブル,その先を配線ケーブルという。同一市内区域に複数の電話局がある場合には局間中継用の中継ケーブルを用いて相互に接続される。中継ケーブルも平衡形ケーブルによって構成されている。
市外伝送用には伝送距離に応じて数種類の伝送媒体が使い分けられている。近距離区間では音声帯域伝送用の市外ケーブルが用いられている。これも平衡形ケーブルであるが,市内用に比べて接続距離が長くなるので,太めの導線を使用し,伝送損失は小さく設計されている。中距離,長距離区間では周波数分割多重通信方式やPCM多重通信方式などの搬送多重通信方式が用いられている。中距離用としては心線間隔を広くして周波数特性を改善した平衡形ケーブルである搬送ケーブルも用いられている。長距離区間では同軸ケーブルが広く使用されている。同軸ケーブルは伝送周波数帯域幅が広くとれ,多重度の高い多重通信情報が伝送できるので,経済的な伝送系が構成可能になるからである。これにより1条のケーブルで1万通話以上を同時に伝送する多重通信方式も実現されている。市外電話伝送には上記の有線ケーブル方式のほかに,マイクロ波通信方式を用いた無線方式も広く用いられている。マイクロ波は雑音が少なく,安定な伝送特性をもち,周波数帯域幅が広いので広帯域の多重通信情報が送れるのが特徴である。現在,長距離伝送系は,災害や障害に対するネットワークの信頼性の向上策として,同軸ケーブル方式とマイクロ波通信方式の有線,無線の2本立てとして構成されている。
国際通信系においては海底同軸ケーブル方式と衛星通信方式が併用されている。衛星通信方式は赤道上空の高度3万5860kmのところに打ち上げられた静止衛星を中継所としたマイクロ波通信方式である。
新しい通信伝送媒体としては,細心性,広帯域性,低損失性に特徴をもつ光ファイバー伝送方式がある。また,伝送容量が大きく,ネットワーク構成上の柔軟性も高い国内用衛星通信方式も将来性の高い通信伝送媒体である。日本の電話網においてもこれらの新しい伝送方式の導入が始まっており,とくに光ファイバー伝送方式は,すでに国内幹線系はもとより,国際海底ケーブルの主流伝送方式になっている。以上に説明した各種通信伝送媒体を,電話網の立場からまとめたのが図7である。
電話交換機は加入者がダイヤルするダイヤル数字情報に基づいて,発信局から着信局に至る電話網内の中継接続ルートを選択する経路選択機能,選択した中継接続ルート内の多数の電話回線の中から空き回線の一つを選択,これに接続するスイッチング機能,短縮ダイヤル,留守番電話,着信転送,3者通話,会議接続などの各種電話交換サービスや,データ通信,移動体通信,画像通信などに関連する各種通信サービスなどを実行する通信サービス機能,電話網内のトラヒック疎通状態の監視や異常時における規制措置などを行う電話網管理機能,さらに通信料金の課金機能などをもった装置であり,これは電話網内においてもっとも中枢的な役割を果たしている。
交換機にもクロスバー交換機や電子交換機などいろいろな方式があり,構成は少しずつ異なってはいるが,機能面からとらえて交換機の構成を一般的に表現すると図8のように表すことができるであろう。スイッチ回路網はスイッチング機能を果たしている装置である。これは多数の切替えスイッチを組み合わせて大きなスイッチングネットワークを構成し,多数の入回線と多数の出回線の間を任意に切替え接続する回路である。切替えスイッチには方式によっていろいろなスイッチが用いられている。例えばクロスバー交換機では接点を格子状に並べて機械的に開閉接続するクロスバースイッチと呼ばれる機械式スイッチが用いられている。空間分割形電子交換機では,接点を金属容器に封入した小型電磁リレーを格子状に並べた多接点封止形格子スイッチが用いられている。またディジタル交換機ではLSI電子回路で作った時間スイッチが用いられている。時間スイッチとは,多重化されたPCM信号のタイムスロットを時間的に入れ替えることによってスイッチングを行う方式である。
監視回路は入回線,出回線あるいは制御回路各部の動作状態を絶えず監視し,発呼や終話などの状態変化を検出する回路である。この機能は通常個々の出入回線につけられているトランク(trunk equipment)と呼ばれる回路に組み込まれている。トランクとは電話機に対する直流電流の供給,状態監視,局間制御信号の中継などを受けもつ回路である。この監視回路で状態変化が検出されると,制御回路に交換接続制御要求が通知される。
スイッチ駆動回路は中央制御回路からの指令に基づいて,選択された接続経路上の各スイッチに動作信号を送出してスイッチ回路網の開閉接続を実行する装置である。
信号送受回路は,加入者から送られてくるダイヤル数字を受信したり,交換局間の中継接続を行う場合に相手局との間でとりかわされる局間信号の送受信などを行う回路である。
情報翻訳回路は,受信したダイヤル数字や電話網の構成とその混雑状況に基づいて相手局に至る中継ルートを探したり,発信加入者のサービス種別を分析して実行すべきサービスの実施条件を判定したり,あるいは着信加入者のダイヤル番号からその加入者端子が収容されているスイッチ回路網上の端子位置を探したりするための各種情報を格納した一種のデータベースである。これは電話回線網の構造やルート選択の方法,一般電話,公衆電話,電話機の種類などの各加入者の種別,登録されているサービスクラス,ダイヤル番号とその加入者線が収容されている端子位置の関係などを記憶装置にあらかじめ記録しておき,このデータベース情報に基づいて所定の交換接続を実行するための装置である。ダイヤル数字などの入力情報をこのデータベース情報に基づいて変換しながら制御することから,この機能を一般に情報翻訳(分析)という。
中央制御回路は,情報翻訳の結果に基づいて選んだ中継ルート内の空き回線の選択,スイッチ回路網内の空き接続経路の選択,スイッチ駆動回路への動作指令の編集や発送,各種通信サービスの実行,障害の検出や故障個所の自動診断および各種の制御動作をとりまとめる実行管理などを行う装置であり,交換制御の中枢的役割を果たしている回路である。クロスバー交換機では,制御回路は電磁リレーを中心とした論理回路で構成されているが,電子交換機ではここにコンピューターが用いられている。
図9は交換接続の種類を示したものである。加入者が受話器を上げると,まず信号送受回路の入口となる発信レジスタートランク(ORT。originating register trunkの略)に接続され,ここからダイヤルトーンが返送される。この動作を起呼接続という。ダイヤル数字が受信され,着信加入者が他の局に所属していることがわかると,その局に向かう中継線の出トランク(OGT。outgoing trunkの略)に接続する。これを発信接続という。相手局から着信する場合には,入トランク(ICT。incoming trunkの略)から着信加入者までの接続経路を設定する。これを着信接続という。着信加入者が自局内にいる場合には,自局内トランク(IOT。intra-office trunkの略)と呼ばれる折返し中継線を選んで接続する。この動作を自局内接続という。他の局から着信しさらに別の局に中継する場合は,タンデムトランク(TMT。tandem trunkの略)から該当する出トランクへ接続が延長される。これが中継接続である。
→電話交換
電話網を構成する交換機には,電話機につながる加入者線を収容して上記のような交換接続を行う加入者線交換機のほかに,中継接続を主要機能とする中継交換機がある。加入者線交換機は電話網内ではいちばん末端に位置づけられることから端局と呼ばれている。市内電話網は,原則として各端局間をそれぞれ直通的に配置した中継線で結合する網状回線網によって構成されている。しかし広域にわたる市外電話網では,高価な市外伝送路を有効に活用するために,なるべく多くの加入者に対して中継回線の共同利用ができるようにトラヒックの大群化を行う必要がある。この機能を果たすのが中継交換機であり,市外交換機はこの中継交換機から成り立っている。さらに広域で接続距離の差が大きい市外電話網を,なるべく一様な通信品質(通話特性や接続特性)で合理的かつ秩序正しく構成するには,市外交換局とそれが所轄する帯域(区域)を明確に区分して階層構成的にネットワークを積み上げていく必要がある。このような通信網の構成法を帯域制という。
日本の市外電話網は,図10のように端局も含めて4階層の帯域制により構成されている。総括局は最上位の局階位にあり,それが所轄する帯域を総括局区域という。現在,総括局は札幌,仙台,東京,名古屋,大阪,金沢,広島,福岡に配置されており,総数8局。各総括局区域はさらに県程度の大きさの中心局区域に分割され,中心局によって所轄される。中心局は県庁所在地や主要都市に配置されており,総数81局ある。その下の局階位が集中局であり,これは半径十数kmの区域を所轄し,全国に約560局ある。集中局は市外電話網の末端であり,市外電話番号付与の単位でもある。集中局区域は市外電話料金体系の単位となる料金帯域とも原則的に一致している。端局は集中局の下位に所属し,加入者の分布に応じて設置されており,全国に約5000局ある。このように区画整理して通信網を構成すれば,通信品質を定める接続基準や伝送基準,あるいは料金体系なども系統的に設計できるようになり,電話網の改変,拡充に対する柔軟性も向上する。
上記のように帯域制によって交換局の配置が定められると,上位局とそれに直属する下位局の間を星状に結合することによって,多段累積形の星状回線網が構成される。ただし最上位の総括局間は,すでにトラヒックは十分に大群化されており,また信頼性などの配慮もあって,各局間を直通につなげた網状回線網がとられている。図10に示した回線網はこの構成を示しており,この回線を基幹回線という。しかしながら,基幹回線だけでは若干不都合が生ずる。例えば区域間にまたがる局間接続には,はるばる上位局を経由した遠回りの中継接続を行わなければならない。長距離の区間でもトラヒックが十分に多い局間では大群化の必要はなく,したがって,むしろ直通線で結合したほうが経済的になる。このような問題を取り除くためには,状況に応じて基幹回線のほかにバイパス回線ともいうべき直通線をひけばよい。このようなバイパス回線を斜回線という。現実の電話網は図11に示すように,基幹回線と斜回線を複合化した複合回線網により構成されている。
各国の国内電話網の上位に配置され,各国相互間の電話接続に使用される通信網を国際電話網という。電話網の階層構成という意味ではこれは最上位の通信網ではあるが,実質的には国情によって技術的,制度的にかなりの差がある各国の国内電話網の間に立って,これら相互の調整役を果たしている通信網が国際電話網の実態といってもよいであろう。
国際電話網にもヨーロッパ諸国間のように市外電話網の延長と考えられるものもあるが,日本を中心に考えると,これは大陸間にまたがる海底同軸ケーブルや光ファイバーケーブル,衛星通信システムなどを伝送媒体とした長大なる通信網ということができ,国内電話網とは違って次のような特徴をもっている。第1は地球表面に張られた長大な回線網であり,回線コストが高いのでその効率的運用が重要であることである。第2は,国際間にまたがる多段中継形の階層構成は各国の通信主権の問題もあって実行しにくく,また衛星通信が主体となっていることもあって,回線網構成としては直通形の網状回線網が主体となっている。第3は時差の影響を受けるので,それによるトラヒック分布の変化を活用しうる余地が多いことである。第4は国際間の調整機能である。交換方式,伝送方式が国によって多種多様であるので,そのインターフェース機能が重要になる。また,通貨制度の違いなどによる料金制度の特殊性や,通信政策や言語,習慣の違いからくる諸問題に対しても適切な対処が必要となること等々である。
日本に発着する国際回線は海底同軸ケーブル,光ファーバーケーブル,衛星通信などが主体である。日本からはアメリカに向かう太平洋横断海底ケーブル,日本海海底ケーブル,日中間海底ケーブル,沖縄・ルソン間海底ケーブルなどが敷設されている。日本海海底ケーブルはシベリアを経てモスクワ経由でヨーロッパ諸国にまで延長されている。現在使用されている商業用国際通信衛星は,インテルサットINTELSATと呼ばれる国際電気通信衛星機構が管理するインテルサット衛星であり,太平洋,インド洋,大西洋の赤道上空の高度約3万6000kmのところに打ち上げられた静止衛星により全世界が結合されている。日本からは太平洋衛星によって北アメリカやオーストラリア,東南アジア地域に,またインド洋衛星によってヨーロッパ,中東,アフリカおよび南アジア地域に接続されている。
→国際通信
一般に通信端末の区別に必要な番号の付与の方式を番号計画という。番号には数字や文字,記号が使われているが,数字を用いて番号を構成する方法を数字番号制,仮名文字やアルファベットを組み合わせたものを文字番号制という。また,対象とする通信網区域全体を一つの番号区域として統一的に番号付与する方式を閉鎖番号方式,市内区域,市外区域というように区域を分け,市内区域から市外区域に出る場合には番号の頭部に“0”などの市外識別符号をつけて外に出るような方式を開放番号方式という。
日本の電話番号は数字番号制を用いた開放番号方式が採用されており,次のようになっている。
市内電話番号=市内局番号+加入者番号
全国電話番号=市外識別符号+市外局番号+市内電話番号
国際電話番号=国際識別符号+国番号+市外局番号+市内電話番号
識別符号は国によってやや異なるが,日本では市外識別符号に“0”を,国際識別符号に“00”を使用している。加入者番号には十進4桁の数字が割り当てられている。市内局番号や市外局番号はその区域の加入者数によって桁数が違ってくるが,全国電話番号の総桁数はほぼ一定長となるように設計されている。
図12は全国電話番号の上位2桁の番号境界を示したものである。これは2000年の人口分布を推定のうえ定められたもので,第1数字を北から順に割り付け,第2数字以下は地域の中心となる主要局を起点とし,この起点から原則として反時計回りに番号付けを行っている。なお,同一行政区域はなるべく同一番号区域にまとめて使いやすくするなどの配慮も払われている。
1997年1月1日より,ISDN(サービス総合ディジタル網)時代の到来に備えて,ISDN番号導入の体勢が整えられた。その国際番号は次のようになっている。
ISDN国際番号=国際識別番号
+国番号+国内着信コード
+加入者番号+サブアドレス
ISDN番号の特徴は,国番号から加入者番号までの桁数を最大15桁と長くし,国内着信コードに市外局番のほかに通信事業者の識別符号を挿入できるようにしたこと,および最大40桁のサブアドレスを付加できるようにして,着信後の多様な接続サービスを可能としたことである。
一般に通信料金は,接続距離,通信時間,通信速度(周波数帯域幅),サービス内容などにより定められるが,その料金を定める制度を料金制度という。また,この料金制度に基づき,接続距離や通信時間などの諸量を計測して料金集計を行う方法を課金方式という。
現在,日本においては,電話料金算定の基礎となる接続距離は図13のように定められている。すなわち,加入者が収容されているいくつかの端局をまとめたある適当な大きさの区域を考える。その区域内の中心となる局をこの区域内各端局の起点として代表させ,この起点相互間の直線距離をもって異なる区域間に発着する端局間の接続距離とみなすのである。この距離算定の単位となる区域を単位料金区域と呼び,同じ区域内の接続にはすべて同一料金が課せられる。このように単位料金区域を定めて料金算定を行う方法を料金帯域制という。現在,単位料金区域は集中局区域と原則的に一致させている。
通話時間の算定法には大別すると3通りの方式がある。第1は単位時間法と呼ばれる方法で,これは一定時間(例えば3分)ごとに接続距離に応じた通話料金を課していく方式である。第2は距離別時間差法と呼ばれる方法で,これは接続距離に応じて単位料金で通話できる時間を変える方式である。例えば遠距離になればなるほど単位料金の登算周期を早めていくのである。この方式は接続距離区分を細分して料金種別が多くなっても登算パルスの周期を変えるだけで課金できるので装置が簡単になり,しかも端数時間に基づく料金誤差もたかだか1単位料金ですむのが特徴である。第3は詳細記録法である。上記の2方式では料金の総額が累積加算されるだけで,その内訳は記録できない。これに対して詳細記録法では各通話ごとに通話相手の電話番号,通話開始時刻,終了時刻,日付などを記録しておき,あとでコンピューターを使って一括して分類集計する方式である。この方式は個々の通話記録が残り,料金請求書も自動的に作成できる利点をもつが,装置はやや複雑高価になる。
現在,アメリカでは電話料金の課金に詳細記録法を採用しているが,日本をはじめとし,ヨーロッパ諸国でも装置の簡単な距離別時間差法を採用している国が多い。しかし,将来通信網が高度化し,通信サービスが多様化して料金種別が複雑化した場合には,その内訳や記録の必要性は高まってくるものと考えられており,いずれ日本においても料金の詳細記録は不可欠のものになっていくであろう。
執筆者:秋山 稔
電話は,1876年にA.G.ベルによって発明された。もっとも,ベルの基本特許をめぐって多くの紛争があり,その事業化に当たっては当初より幾多の紆余曲折があった。電話事業を軌道に乗せるうえで大きな貢献をしたのはベールTheodore Newton Vail(1845-1920)であった。彼はアメリカ各地の電話会社のシステム化をはかり,研究開発部門のベル電話研究所,機器製造部門のウェスタン・エレクトリック会社を含むベル・システムの基礎をなすこととなった。
日本で初めて電話が開通したのは,ベルが電話を発明してからわずか13年後の1889年のことで,逓信省が東京~熱海間で公衆用市外電話の取扱いを開始している。当時,すでに電信事業が国家安全保障上の理由もあって国営によって行われていたことから,電話事業も同様に国の手によって経営されることになった。第2次大戦前における電話の普及は限定された水準にとどまり,主たる用途は事務用で,家庭での普及はごく一部の富裕層にとどまった。
電話が普及するにつれて,その技術的発展はめざましいものがあり,それによってまた電話の社会的効用も大きく広がっていった。まず通話距離についてみれば,当初は伝送技術が未熟で,近距離にしか通話できなかった。しかし,新しい伝送路の導入,中継方式の発展,衛星通信の実用化などによって,今や世界中に散在する電話のほとんどは,相互に通話することができるようになった。また,その通話の交換に当たっても,当初は交換手の手をわずらわす手動交換方式が用いられていたが,やがて電話加入者がみずからダイヤルして相手を呼び出す自動交換方式へと移行していった。自動交換方式についても,最初はアメリカで開発されたストロージャー方式や,西ドイツで開発されたジーメンス方式のようなステップ・バイ・ステップ方式の輸入が行われたが,やがて日本の自主技術は開発の努力が実って,より高度なサービスが提供できるクロスバー方式が国産化され,電話の普及に貢献した。さらに最近に至り,エレクトロニクスの進歩に即して一段と高度なサービスを提供する電子交換機の開発と導入が推進されつつある。
電話の機能は,このような技術的進歩に支えられて,急速に拡大し,多様化してきた。いい換えれば,電話はしだいに進化しつつある。その方向を要約すれば,多様な機能を併せて発揮する〈複合化〉,用途に従って機能が特殊化していく〈専門化〉,デザインが多彩になっていく〈ファッション化〉などが指摘される。とりわけ,電話が人間の音声のみを伝達するメディアから,映像やデータなどを含む多様な情報の入出力端末へと発展する傾向がうかがわれるのである。
このような電話の進化の趨勢は,1981年以来電電公社が提唱しその構築を進めてきた高度情報通信システムinformation network system(略してINS)においても,大きく位置づけられている。INS構想においては,人間の音声を含めあらゆる情報はディジタル化され,かつ従来個別のネットワークで取り扱われていた情報が一つのネットワークに統合されることとなっている。ディジタル化された電話は,ディスプレー機能をもつスケッチホンやプリンターを組み込んだプリンターホンなどの多機能電話として発展するであろう。
いわゆるテレビ電話は,電話の発展形態のなかでもっとも重視されてきたものである。とくにアメリカでは,他国に先駆けて電話が発達したために,すでに1960年代にはテレビ電話の開発・実用化に大きな努力が払われた。しかし,テレビ電話が商品化されてみると,実際にはその普及に多くの問題点があることが明らかになった。たとえば,コストが割高であること。人間の心理分析の面で十分でない点があったことなどがあげられている。このようなテレビ電話の問題点は,INSが発展するにつれてしだいに解決されようとしている。たとえば,コストの低下は著しいものがあるとみられており,ビジネス分野のおいて漸次導入されていくであろう。
電話の多機能化に加えて,その料金体系の推移についても注目に値する。市外通話のコストはその距離に比例するとされ,これまでいわゆる遠近格差が大きかった。しかし,通信技術の発達,たとえばディジタル化によって,距離によるコストの差は解消しようとしている。これを反映して,すでに遠近格差の解消が進められてきているが,今後INSの構築が進むにつれて,均一料金を目ざしての料金体系の是正が進むものとみられる。
このような電話の多機能化や料金体系の合理化の動きは,これからの電気通信政策のあり方に大きく影響される。1980年代前半までは日本の電話事業は日本電信電話公社と国際電信電話(株)によって独占的に運営されてきた。しかし,電気通信政策の転換により,電電公社が85年に民営化されるとともに電話の分野にも新しく競争企業が参入しうるようになった。衛星や光ファイバーなどの新しい技術によって,より便利でより経済的な電話サービスが,複数の企業の競争で提供される時代が予想されるのである。
→公衆電話 →テレホンサービス
執筆者:小松崎 清介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
電気通信の一種。音声を電気的信号に変え、離れた場所に伝達し、これをふたたび音声に戻して相互に通話できるようにした通信手段をいう。
音を物理的方法で伝達しようとする研究は相当古くから行われていたが、それらは、糸や棒の両端に振動板をつけ、一端で受けた振動を機械的に他端に伝えるものであったため、実用化には至らなかった。電流によって音声を伝える現今の電話方式は1837年アメリカのページCharles George Page(1812―1868)が原理を発見、これに基づきフランスのブールスールCharles Bourseul(1829―1912)が1854年に音声による可撓(かとう)振動板の振動を利用する着想を発表した。ドイツのライスJohann Phillip Reis(1834―1874)は1861年にこの着想による実験を行い、電話の実現に向けて一歩を進めた。
このような研究をベースにして、実用的な電話機の発明は、1876年3月にアメリカのグラハム・ベルによって成し遂げられた。ベルの電話機は、音波振動にしたがった電流変化をつくりだし、その電流変化を伝えることによって音声を伝えるという方式であった。最初の実験で、助手のワトソンに話した“Mr. Watson, come here, I want you”(ワトソン君、用があるからちょっと来たまえ)は、電話機を通じた人類最初のことばとして有名である。ベルはそれまでの学問的な研究の域を脱し、電話の実用化を進めた点で「電話の父」とよばれている。ベルの製作した最初の電話機は、電磁石の前に振動片を置いた構造であり、受話・送話とも同じものが用いられた。
[坪井 了・永井徹郎・三木哲也]
ベルの発明した電話機は、発明の翌年の1877年(明治10)に早くも2台が日本へ輸入され、赤坂御所内の宮内省と赤坂溜池葵(ためいけあおい)町の工部省との間2キロメートルで実験が行われた。これが日本における電話の始まりである。最初は主として警察が電話を取り上げて、1878年ごろから東京、横浜、大阪などで官庁・警察の通信に利用された。1883年には交換機を使った官庁電話の交換が始まり、1890年には初めて東京、横浜において一般の電話交換業務が開始された。当時の電話加入数は東京が155加入、横浜が42加入の計197加入であった。その後、電話の便利なことがわかり、加入者は次々と増えて1892年には1500加入となった。1943年(昭和18)には108万加入まで増加したが、第二次世界大戦により減少し終戦時には46万加入にまで減少した。その後、戦後の復興に伴い日本電信電話公社(現、NTT)発足時の1952年(昭和27)に155万加入であったものが、1968年には1000万加入、1972年には2000万加入、1975年には3000万加入、1985年には4500万加入、さらに1996年(平成8)にはNTTの電話加入数としては最大の6130万加入に達した。それ以降は、ISDN、携帯電話あるいはインターネットなどの新サービスへの移行によって電話加入数は減少を続けている。
[坪井 了・永井徹郎・三木哲也]
電話を接続するための設備は、電話機、交換機、交換機相互を結ぶ伝送路、交換機と電話機を結ぶ加入者線の四つに大きく分類される。このうち伝送路については、使用する伝送媒体により、(1)有線(現在ではほとんどが光ファイバーケーブル)伝送、(2)地上無線伝送、(3)衛星通信の3種類があるが、伝送容量の大きい有線伝送が主体となっており、現用システムの故障や非常災害時の代替用として地上無線伝送や衛星通信が使われている。
[坪井 了・永井徹郎・三木哲也]
ベルの電話機をもとに国産第1号の電話機が1878年(明治11)に製造されたが、その音声はすこぶる微弱であって、1883年には製造が中止された。イギリスのガワーFrederick Allen Gower(1851―1885)が1879年に発明した送話器とベルの電話機を組み合わせたガワーベル電話機が1887年にイギリスから輸入された。この電話機が東京―熱海(あたみ)間で行われた通話実験で好結果を出したため、1890年に電話交換業務が開始されたときにはこのガワーベル電話機が使われた。1896年には、ハンドルを回すデルビル磁石式壁掛電話機が、また1899年には長距離通話用のソリッドバック磁石式壁掛電話機が登場した。その後、手動交換方式から自動交換方式へ移行するのに伴い、ダイヤル式の電話機が登場した。1927年(昭和2)には2号自動式卓上電話機、1933年には3号電話機、1950年(昭和25)には4号電話機が実用化され、さらに1962年には600形電話機が実用化されて回転ダイヤル式電話機として完成の域に達した。また、1969年に登場したプッシュ式の電話機は、コンピュータへのアクセスを可能とし、電話機からの自動予約など電話サービスの多様化への道を開いた。現在では、電話機とインターホンやファクシミリを組み合わせたり、コードレス機能を付加したりすることで多種多様な機能、デザインをもった電話機が普及している。
一方、公衆電話は、1900年に新橋と上野に磁石式公衆電話機が設置されたのがその始まりである。当時の公衆電話は、交換手に通話接続を依頼し、硬貨を投入したときの音を交換手が聞いて判断するものであった。50年間ほどは、このような方法であったが、1953年に10円硬貨を自動識別する4号自動式公衆電話機が実用化された。また、卓上形のものを赤電話、ボックス形のものを青電話として使い分けされるようになった。現在は、日本ではカード式公衆電話(緑色)、カード式ISDN公衆電話(グレー)が広く普及しているが、海外ではIC(集積回路)カード式公衆電話が普及している。
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日本における交換機は、1890年に東京と横浜を結んだ磁石式交換機がその始まりである。この最初の交換機は電話交換手が接続する手動交換機であった。その後、大量の通話を迅速、正確に接続するため、交換機は自動交換機へと移り変わった。初期の自動交換機はステップ・バイ・ステップ交換機と称する方式であり、日本では1926年に京橋電話局に最初に導入された。1950年代前半からはクロスバー交換機、さらに1972年からは制御系にコンピュータを用いる電子交換機が導入された。1982年からはデジタル交換機の導入によって、多機能化と高信頼化が進んだ。日本では1997年(平成9)12月に、電話用の交換機はすべてデジタル交換機に置き換えられた。
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交換機相互間の電話回線を多重化して経済的にかつ一定の品質で結ぶ設備が伝送路である。アナログ回線の多重化には、3.4キロヘルツの帯域をもつ電話1回線の信号を4キロヘルツごとの周波数間隔で配列する周波数分割多重(FDM:frequency division multiplexing)とよばれる方式が使われてきた。デジタル回線の多重化には、電話1回線の音声信号を符号化した64キロビット/秒の符号列を8ビット単位に順次配列してゆく時分割多重(TDM:time division multiplexing)とよばれる方式が使われている。デジタル伝送路は、日本では1960年代の初めから導入され始めたが、1997年12月には交換機とあわせてすべての伝送路はデジタル化された。
有線伝送路としては、最初は裸線(むき出しの銅線)によるものであったが、その後、無装荷ケーブル(1932)、同軸ケーブル(1956)へと順次広帯域のケーブルを用いることによって、多重数を増加させてきた。1970年代には、同軸ケーブルを用いてアナログ方式では1万0800回線の多重伝送、デジタル方式では5760回線の多重伝送が実用化された。1981年には、光ファイバーケーブルが最初に導入され、当初は100メガビット/秒(電話1440回線相当)であったが、1995年には10ギガビット/秒(電話13万回線相当)のデジタル伝送が実用化されている。今日の光通信は、時分割多重とあわせて多数の波長を用いる波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)を併用しており、1本の光ファイバーで数テラビット/秒の伝送路が実現されている。
地上無線伝送路としては、4ギガヘルツ帯のマイクロ波を用いて1954年に東京、名古屋、大阪で実用化されたのが始まりである。このときの伝送容量は1システム当り360回線であった。その後、2ギガヘルツ帯(1957)、6ギガヘルツ帯(1961)、11ギガヘルツ帯(1961)、15ギガヘルツ帯(1967)と相次いで新しい周波数帯が開拓された。4ギガ、5ギガ、6ギガヘルツ帯は長距離伝送用として1990年代まで広く使われてきたが、光ファイバーケーブル伝送路が全国的に導入されたことで、2000年ごろ以降はその役割を終えている。また2ギガ、11ギガ、15ギガヘルツ帯は中・短距離伝送用に、さらに20ギガヘルツ帯は主として短距離用として用いられている。
国内の衛星通信による電話については、1983年に通信衛星CS-2を用いてサービスが開始され、離島や災害時の通信確保をおもな目的とした。その後、1988年からはCS-3を用いて、地上ネットワークの混雑時に迂回路として衛星通信を利用する新たな用途を加えた。1995年にはN-STAR(エヌスター)衛星が打ち上げられ(1996年より商用サービス開始)、従来の用途に加え、日本の近海を航行する船舶などを対象とした移動通信用の回線としても利用されるようになった。
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交換機と電話機をはじめ各種の端末とを結ぶ部分が加入者線であり、携帯電話の場合には無線の基地局が必要であり、従来の電話の場合には、通信ケーブルおよびケーブルの敷設に必要な電柱、地下管路、マンホールなどが必要である。初期の段階は裸線によるものであったが、1893年より風水害等に強く、多数の銅線を収容できるケーブルが用いられるようになった。現在では絶縁物にはプラスチックが使用されており、最大の対数(1対は銅線2本)としては3200対のケーブルが用いられている。さらに、2000年代に入ってからは光ファイバーケーブルの敷設も急速に進められている。
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(1)単独電話 電話局との間に設置された電話回線を1人の加入者が使用する電話。
(2)共同電話 1本の電話回線を2人以上の加入者が共同で使用する電話。申し込んでもなかなか電話がつかない時代に、少ない設備で多くの加入者に電話機を設置するために用いられてきたが、1人の加入者が話し中のとき別の加入者は利用できないという欠点がある。日本では全廃することが決まっており、新規申込みは受け付けられない。
(3)ボタン電話 正式名は簡易電話交換装置。小規模な事業所やオフィスで1~数回線の加入電話回線を事業所内の多数の電話機から随時あいている回線を押しボタンで選んで利用できる電話で、広く普及している。
(4)構内交換電話(PBX) 電話局からの一般加入電話回線および加入者宅に設備される交換設備と、その交換設備に接続される内線電話機から構成される。構内交換電話は、主として事業所において多数の内線電話が必要な場合に利用される。以前は外からの通話に対しては交換手を介して手動で接続されていたが、日本では1989年からサービスの始まった1.5メガビット/秒のISDNを用いて内線への自動接続ができるPBXダイヤルインが普及している。
(5)ビル電話 正式名は事業所集団電話。大きなビルなどにおいて、集団的な電話需要がある場合に設備されるもので、電話局の交換機とは別のビル電話用の交換機または多重化装置を設置してビル内の電話機を接続する。
(6)公衆電話 街頭、店頭その他の場所に設置され、だれでも利用できる電話。公衆電話は、街頭専用の青電話(10円硬貨のみ使用可)から始まったが、現在はテレホンカードと併用できる緑色およびグレーの電話にかわっている。ほかに、店頭専用の赤電話、100円・10円硬貨併用の黄電話があったが、現在は使われていない。
このほか、列車公衆電話、船舶公衆電話、自動車公衆電話などがある。航空機公衆電話もあったが、2003年度(平成15)末にサービスが終了した。なお、一般の単独電話ではあるが、店頭等において客が利用できるようにしたピンク電話も公衆電話の機能をもつ。
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(1)区域内通話 単位料金区域内相互の通話であり、距離のいかんにかかわらず一律3分ごとの従量制料金となっている。単位料金区域とは、行政区画、通話の交流状況からみておおむね一体とみられる地域で、通常そのなかに数個ないし10程度の市町村を含んでいる。
(2)区域外通話 単位料金区域相互間の距離が長くなるにつれて10円で通話できる秒数が逐次短くなるように定められている。この区域外通話については、事業者によって夜間割引、深夜割引、および土曜・休日割引など多様な割引制度が提供されている。
(3)国際通話 国際通話には、利用者が直接相手国利用者をダイヤルして接続する自動通話と、オペレーターを介して接続する半自動通話(発信国のオペレーターのみ介在)および手動通話(発信国と着信国双方のオペレーターが介在)がある。その料金は、自動通話は6秒ごとに課金され、半自動通話および手動通話は最初の3分以降1分ごとに課金されるのが普通である。事業者や地域によっては、夜間割引および休日割引など多様な割引制度がある。
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電話をいっそう便利に使うため、各種のサービスが行われている。おもなものは次のとおりである。
(1)プッシュホン 押しボタン式の電話機である。数字および記号(*、♯)によるデータ送信機能を用いて、銀行の預金残高照会、新幹線の列車座席予約などを行うことができる。
(2)ホームテレホン 電話回線1回線で電話機4台まで設置でき、どの電話機からでも発着信できる機能のほか、転送機能、相互通話機能、インターホンとの接続などの機能を付与した電話機である。
(3)ビジネスホン ボタンの操作により2個以上の電話機について電話回線の共通利用、電話機相互間の内部通話、通話中の回線保留などができる。ビジネスホンは交換手も交換室も不要であり、手軽でかつ費用が低廉であることから、簡易な手動交換装置として、またPBXやビル電話のサブシステムとして広く利用されている。
(4)キャッチホン 通話中に第三者からの着信があった場合に、電話機のフックボタンを押すことにより、先の通話を保留したまま第三者と通話ができるもので、話し中の多い加入者に便利に使われている。
(5)でんわばん 不在時や終業時に電話がかかった場合、発信者に対し、不在の事実や理由、または連絡先電話番号を自動的に案内する。
(6)転送電話 不在中に着信する電話をあらかじめ指定した別の電話番号へ自動的に転送する。
(7)留守番電話 不在中に着信があった場合、不在の旨を告げたのち相手の用件を自動的にテープ等に録音する。
(8)二重番号サービス 忙しいときや就寝時など必要な電話以外は受けたくない場合、あるいはいたずら電話の対策に役だつもので、一つの電話機に対して通常の電話番号のほかにもう一つの電話番号(裏番号)を付与し、裏番号は近親者など特定の人以外は知らせないことにしておく。
(9)料金着信払通話サービス(コレクトコール) 外出先などから自宅や会社への通話を、発信側に課金せずに手動接続により着信者の同意が得られると着信側に料金を負担させる。
(10)着信課金サービス(フリーダイヤル) 特定の電話機に対するダイヤル通話について、これにかかわる料金を着信側で負担するサービスであり、通信販売会社等が料金を負担して消費者などからの商品注文等に応じたいという場合などに用いられている。日本では〈0120〉から始まる特殊番号を用いているため、0120番サービスともよばれる。アメリカ、カナダをはじめ局番に〈800〉番を用いている国々では、同様に800番サービスとよばれる。
(11)クレジット通話サービス 通話料金の請求先としての加入電話をあらかじめ契約しておき、出張先などで行った通話の料金をその加入電話に課金するものであったが、このサービスは2010年度末に廃止された。
(12)電話会議サービス あらかじめ登録された会議招集者が他の会議参加者を呼び出すことにより、最大30人の音声会議ができるものである。また、これと同様なサービスに、一般加入者を対象とした「三者通話サービス」がある。
(13)福祉用機器 ひとり暮らしの高齢者や身体障害者が緊急ボタンを押すことにより特定の連絡先を呼び出せる「あんしん」、聴覚障害者用に相手の声を大きくできる「めいりょう」、相手の声を頭部の骨に伝え、その振動で聞く「ひびき」などがある。
これらのサービスは、今後はさらに多様化すると予想される。
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日本における電話サービスは1890年(明治23)に開始され、以来サービスの全国的な拡大がなされたが、第二次世界大戦によりほとんどの機能を失った。戦後荒廃のなかから復興が行われ、官営事業から公共企業体に変わった日本電信電話公社(現、NTT)により、6次にわたる電信電話拡充5か年計画が実施された結果、電話加入数は急速に伸びて、1977年(昭和52)には「積滞(加入申込みをしてもすぐ電話がつかない状態)解消」が達成され、1979年には「全国ダイヤル自動即時化」が達成された。電話の故障率は、1953年には100加入当り1か月に19件もあったものが、1984年には0.47件まで減少し、信頼性が大幅に向上している。また、1997年(平成9)には電話ネットワークのデジタル化が完成して、通話品質の遠近差がまったくないきわめて良好な通信環境が実現された。
携帯電話(PHSを含む)は1990年代のなかばから急速に普及し、2010年には1億2000万加入を超え、いまや電話は全国どの地域のだれとでもいつでも話せる通信手段として日常生活に欠かせない存在となっている。また、社会の情報化の急速な進展に伴って、音声通信に加えて、ファクシミリ通信、インターネットなど、新しい通信サービスが普及し、さらに通信回線のブロードバンド化により映像通信やマルチメディア通信が自在にできるようになってきた。
1970年代までの通信網(ネットワーク)は、主としてアナログ技術に頼っていたため、通信サービスごとに独立したネットワークをつくる必要があった。1980年代に広く普及したデジタル技術は、種々の情報をいったんデジタル信号に変換してしまうと共通的に扱うことができることから、種々のサービスに共通に使える統合サービスデジタル網(ISDN=integrated service digital networkの略称)の構想が生まれ、1980年代の終わりにはこれが実現した。NTTでは、1984年9月から1987年3月まで東京の三鷹(みたか)市・武蔵野(むさしの)市においてINS(Information Network System)モデルシステムとよばれるISDNの実験を行い、1988年4月よりINSネットサービスとして提供している。
一方、1990年代に入ると、大学、研究機関などを中心にインターネットの利用が急速に広がり、一般的な利用へのニーズも高まってきた。このようなニーズにこたえて、日本では1993年(平成5)7月から第二種電気通信事業者(回線設備を自前で保有しない通信事業者)により、1996年12月からは第一種電気通信事業者(NTTなどの回線設備を自前で保有する通信事業者)によるインターネット接続サービスが開始された。インターネットの普及に伴い、ブロードバンド化への要求が高まり、2000年ごろよりまずCATV(ケーブルテレビ)による毎秒数メガビットの高速インターネット、次にADSL(asymmetric digital subscriber line=非対称デジタル加入者回線)が普及した。さらに、2001年から日本が世界に先駆けて始めたFTTH(fiber to the home=光ファイバー加入者線)が普及し、2010年には約2000万加入にまで達している。
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(1988年~)音声による通信のほかに、ファクシミリやデータ・映像などの情報をデジタル回線によって高品質でしかも経済的に送ることができるISDNの国際標準に準拠した、NTTによるデジタル・ネットワークサービスである。最高速度が電話2回線分に相当する128キロビット/秒の「INSネット64」サービスと、電話23回線分に相当する1.5メガビット/秒の「INSネット1500」サービスがあるが、「INSネット64」サービスが一般的である。2001年3月には1000万を超える加入者数に達したが、その後は減少している。
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(1993年~)世界中のインターネットへの接続サービスを一般ユーザーに対して定額かつ安価な料金で提供するサービスである。インターネット接続サービスは、電話やINSネットサービスと違い、次のような特徴をもっている。
(1)パケットネットワーク コンピュータ通信であるため、コンピュータから出てくるデータのかたまりに行き先などの制御情報をヘッダとして先頭につけたパケットを単位として、情報を伝達するネットワーク。↔回線ネットワーク
(2)ベストエフォート型 伝送品質の保持には最大限努力するが、保証はしない。しかし、その分通信料金が割安に提供される。↔ギャランティー型
(3)コネクションレス型 あらかじめ電話のように通信相手に対する回線を確保する手順を経て実際の情報伝達(通話)を始めるのではなく、必要に応じて適宜情報伝達を行う。↔コネクション型
(4)常時接続 電話機は通常は交換機からは切り離されており、すなわちネットワークには接続されておらず、通信を行うときだけ接続されるが、インターネットでは通信端末がつねにネットワークに接続されている状態が基本となっている。
[坪井 了・永井徹郎・三木哲也]
日本の電信電話事業は創業以来つねに国の事業として運営されてきた。しかし、第二次世界大戦後の荒廃から復興するには、国営では、産業、経済、社会の進展や国民の需要への対応や効率のよい事業運営はむずかしかった。そこで企業的な経営体制を導入することで、設備の整備拡充、国民の利便の確保などを図ることとし、事業運営形態を電気通信省から公共企業体に変更することとなり、1952年(昭和27)に日本電信電話公社(電電公社)が発足した。また、翌1953年には国際電信電話株式会社(KDD)が発足し、国際電信電話業務は民営で行われることとなった。
さらに1985年4月の法改正により、電気通信事業は自由化された。従来の日本電信電話公社は日本電信電話株式会社(NTT)となって民営化し、NTT、KDD以外にも新たな電気通信事業への参入が可能となった。新規参入業者のうち、自ら回線設備を所有し電気通信事業を行う事業者を第一種電気通信事業者という。1985年4月に参入計画のトップをきった第二電電(DDI)をはじめ、国鉄(現、JR)系の日本テレコム、建設省(現、国土交通省)・日本道路公団系の日本高速通信など5社が第一種電気通信事業の許可を得た。
第一種電気通信事業者から回線設備を借用して電気通信事業を行う事業者を第二種電気通信事業者という。その後2004年度からは第一種、第二種という区分をやめ、許可制を廃止して登録・届出制に変更された。登録事業者は従来の第一種のうち一定規模以上のもの、第一種のうち小規模のものと第二種は届出事業者に区分されるようになった。2010年4月1日時点で登録事業者は323事業者。NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモなどのほかに、ソフトバンクテレコム、KDDI(2000年10月にKDD、DDI、日本移動通信が合併して成立)などの長距離系のほか、地域系、国際系、衛星系、移動体系、CATV系がある。また、届出事業者は同1万4927事業者である。
[坪井 了・永井徹郎・三木哲也]
『日本電信電話公社編『電信電話事業史』(1959・電気通信協会)』▽『川中徳重編『電気通信年鑑1983』(1983・さんちょう株式会社)』▽『日本電信電話株式会社編『日本電信電話公社社史』(1986・情報通信総合研究所)』▽『情報通信総合研究所編・刊『情報通信ハンドブック2002年版』(2001)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 マイナビ2012 -学生向け就職情報サイト-就活用語集(就活大百科 キーワード1000)について 情報
…23歳のときに書いた処女作《アメリア舞踏会へ行く》はイタリア的なオペラ・ブッファであるが,39年にNBC放送のために書いたラジオ・オペラ《泥棒とオールドミス》以来自ら英語で台本を執筆し,舞台を現代のアメリカにとることによって,オペラを大衆に近づけることに成功した。第2次大戦後,現代社会の虚構をついた《霊媒》(1946),電話をめぐるコミカルな《電話》(1947),全体主義体制における亡命者の苦境を扱った《領事》(1950),テレビ・オペラ《アマールと夜の訪問者Amahl and the Night Visitors》(1951)などによって,オペラ作曲家としてまれにみる成功を収めた。《アマールと夜の訪問者》はクリスマスに必ず上演・放映されるほどで,アメリカでは最も数多く作品の上演されるオペラ作曲家である。…
…電話伝送の目的は,会話の内容を相手に明りょうに伝達することである。この会話のよく聞こえる度合を数量化したものが通話品質である。…
…例えば電信機は1829年にロシアのシリングP.L.B.Schilling(1786~1837)により実現されており,静止画像を伝送するファクシミリの原形は43年にイギリスのベインAlexander Bain(1810‐77)が発明し,基礎的な実験も行われていた。電話についてはその原理を54年にベルギーのブールサールCharles Bourseul(1829‐1912)が提案し,61年にはドイツのライスJohann Phillip Reis(1834‐74)が実験を行っている。
[電信の始まり]
電気通信の実用化は電信から始まっている。…
※「電話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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