(読み)タン

デジタル大辞泉 「単」の意味・読み・例文・類語

たん【単〔單〕】[漢字項目]

[音]タン(呉)(漢) [訓]ひとえ
学習漢字]4年
ひとえの着物。「単衣たんい
ただ一つ。ひとり。「単一単価単科単記単身単数単独単発
それだけで一つと数えられるまとまり。「単位単元単語
複雑でない。「単純単調簡単
書きつけ。紙片。「菜単伝単
[名のり]いち・ただ
難読単衣ひとえ

たん【単】

単試合」の略。⇔
単勝式」の略。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「単」の意味・読み・例文・類語

たん【単】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ただそれ一つであること。ひとりであること。単一。単独。
    1. [初出の実例]「恐動念于鄰単」(出典:永平道元禅師清規(13C中)弁道法)
    2. [その他の文献]〔史記‐信陵君伝〕
  3. まじりけがなく、あっさりしていること。こみいっていないこと。複雑でないこと。
  4. 衣服に裏がついていないこと。また、その衣服。ひとえ。〔庾信‐対燭賦〕
  5. 庭球、卓球などで、ひとりとひとりとが試合を行なうこと。また、その試合。シングルス
  6. たんしょうしき(単勝式)」の略。
    1. [初出の実例]「ハマザクラが遂に逃げ切ってゴールインしたのを見届けるといきなり万歳と振り向き、単だ、単だ、大穴だ、大穴だと絶叫しながら」(出典:競馬(1946)〈織田作之助〉)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「単」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)單
人名用漢字 12画

[字音] タン・セン・ゼン
[字訓] たて・ひとつ・つくす

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
楕円形の盾の形。上に二本の羽飾りをつけている。古くは軍事にも狩猟にも盾を用いたので、戰(戦)は單+戈(か)、狩の初文は獸(獣)で單+犬を要素としている。従って字の本義は、たて。ただその義に用いることがなく、戰・獸の字形によってそのことが知られるだけである。〔説文〕二上に「大なり」と訓し、字を「(けん)に從ひ、の亦聲」とするが声も合わず、字形をも説きえずして「闕(けつ)」という。また〔段注〕に「大言なり」の誤りとするが、その用義例はない。〔詩、大雅、公劉〕に「其の軍三單」とあり、一隊を単、三単を軍とする。もと軍事に関する語であったことが知られる。〔逸周書、大明武解〕「老單處す」の〔注〕に「單處とは、保無きを謂ふ」とあり、特に防衛の施設のないところで、大盾を並べて身を守るような状態をいうのであろう。〔越絶書、越絶呉内伝〕に「之れを單に致す。單とは(と)なり」とあることが注意される。それで単独・単一の意となる。

[訓義]
1. たて、大きなたて。
2. ひとつ、ひとえ、ひとり、うすい。
3. 大きい、大きいかたち。
4. すべて、つくす。
5. 亶(たん)と通じ、まこと、あつい、ただ。

[古辞書の訓]
和名抄〕單衣 比止閉奴(ひとへきぬ) 〔名義抄〕單 ヒトヘニ・フルフ・スルツニ(ミ)・ヒトヘナリ・ヒトヘ・ウスシ・コトゴトク

[声系]
〔説文〕に單声として禪(禅)・殫・憚・戰・彈(弾)など二十七字を収める。禪(ぜん)と殫(たん)と両系の声がある。

[熟語]
単于・単閼・単衣・単位・単一・単影・単音・単家・単舸・単寡・単介・単寒・単款・単簡・単軌・単・単騎・単極・単均・単衾・単窶・単軍・単・単竭・単孑・単肩・単言・単孤・単鉤・単厚・単耗・単行・単轂・単衫・単糸・単師・単辞・単弱・単舟・単純・単処・単少・単身・単心・単尽・単数・単棲・単誠・単席・単・単率・単擡・単単・単艇・単伝・単刀・単特・単独・単破・単薄・単被・単微・単扉・単兵・単斃・単弁・単紡・単本・単名・単立・単・単露・単老
[下接語]
衣単・影単・簡単・形単・単・孤単・三単・食単・伝単・門単

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「単」の意味・わかりやすい解説

単 (ひとえ)

公家の衣服の一種で,単衣(ひとえぎぬ)の略。公家の服装構成で最も下に着用される衣。裏をつけない単ものであるが,夏冬とも用いられる。垂領(たりくび)で,男子のものは脇を縫いつけない闕腋けつてき)形式で,(あこめ)と同型であるが,身丈がやや短い。材質は,束帯(そくたい)や衣冠には五位以上の者は紅の繁菱(しげびし)または遠菱の綾,六位以下の者は平絹を用いた。直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)には禁色(きんじき)以外の好みの色の綾や平絹を用いた。夏にはいずれも生綾や生平絹が使われた。女子の単は(うちき)や衵と同型であるが,裄(ゆき)や身丈が長く作られている。地質は綾や平絹,夏は生綾や生平絹または,羅,縠(こく),紗などの薄物を用い,文様は繁菱,遠菱,幸菱など,色は禁色以外の好みのものとし,襲(かさね)の色に気を配った。なお,単のような裏のつかない単ものの衣の縁は,生地をひねりといって撚絎け(よりぐけ)で縫ってあり,近世は絎けず,のりで固めている。
執筆者:

現代の和服の単には長着,羽織,長じゅばん,帯,コートがある。おもに初夏から初秋まで用いるが,7月,8月は麻や透ける絹物,6月と9月中旬から下旬にかけては袷(あわせ)の長着や長じゅばんの素材の単仕立てを着る。羽織やコートはこれよりも早目。単帯は6月から9月まで。ウール,ゆかたは単仕立てで,ウールは春・秋・冬の袷の季節にも着られることが特徴である。広袷仕立ての袷長着には,羽二重や絽(ろ)の裏衿をつける。肌着や裾除(すそよけ)は単が主である。

執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「単」の意味・わかりやすい解説


ひとえ

公家(くげ)衣服の一種。単衣(ひとえぎぬ)の略。平安時代以降、素肌または肌着の上に着用した単仕立て・垂領(たりくび)、広袖(ひろそで)形式の衣。男女の別があり、男子の単は袙(あこめ)とほぼ同型で、身丈が短く、脇(わき)を縫い付けない衣。その地質は、束帯(そくたい)や衣冠の場合、五位以上の者に紅(くれない)の繁菱(しげびし)または遠菱(とおびし)の綾(あや)、六位以下の者に平絹を用いるとした。直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)の場合、禁色(きんじき)以外の好みの色の綾や平絹が用いられた。女子の単は袿(うちき)や袙と同型であるが、裄(ゆき)や身丈がやや長めで、脇を縫い付けてある。その地質は、冬に五位以上の者が綾や平絹、夏に生(き)綾、生平絹のほか羅(ら)、縠(こく)、紗(しゃ)などの薄物(うすもの)を用いた。綾や縠などの文様は繁菱、遠菱、幸菱(さいわいびし)など。その色は禁色以外の好みのものや、襲色目(かさねいろめ)によるものとしている。なお、単襲(ひとえがさね)といって、女子が盛夏に、単仕立ての衣を数領かさねて着装する服装も行われた。

[高田倭男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「単」の意味・わかりやすい解説


ひとえ

単物 (ひとえもの) ともいい,裏地のつかないきもののこと。江戸時代には麻地の物を帷子 (かたびら) といい,絹や木綿地の物を単と呼んだ。夏物の薄生地には,平絽,絽縮緬 (ちりめん) ,紋紗,レース,麻縮お召などがあり,ほかに訪問着として絵羽染,紋付用の単重 (ひとえがさね) もある。第2次世界大戦後ウールと綿や絹,化繊の厚手の交織が出ている。 (→ )  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「単」の解説


ひとえ

単衣(ひとえぎぬ)の略。裏地をつけない衣服の総称。とくに男女ともに用いた,装束の一番下に着用する広袖絹製の肌着をさす。赤染めのため赤単(あかひとえ)ともいい,布製の物を赤帷子(あかかたびら)とよんで区別することもある。季節を問わず用いるが,夏はとくに薄物を用いた。平安末期以降,肌着として小袖(こそで)を使用するようになると,その上着となった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「単」の意味・わかりやすい解説

単【ひとえ】

(あわせ)に対して裏のついていない衣服。単帯,単羽織などもあるが,一般には単の長着(きもの)をさす。縮緬(ちりめん),御召(おめし),紬(つむぎ),絽(ろ),紗(しゃ)などで作り,多くは夏物。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【雲水】より

…雲水の求道心が試され,それが終わると雲水行脚僧の宿泊寮舎である旦過(たんが)寮に入り1週間前後止宿し,その間を暫到と呼ぶ。掛搭式を経た雲水は,単(たん)(修行者の座る座席)が決められ,清規(しんぎ)(規則)に従って僧堂生活がはじまる。1年を雨安居(うあんご)(夏安居)と雪安居(冬安居)の2期に分け,その間月に1回程度接心(せつしん)(摂心。…

※「単」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android