得手(読み)エテ

デジタル大辞泉 「得手」の意味・読み・例文・類語

え‐て【得手】

巧みで、得意とすること。最も得意とするところ。えて物。えて吉。「人にはそれぞれ得手不得手がある」
得手勝手」の略。
「―のお方が、今宵一夜はおれが物、一寸側を離さぬと」〈浄・傾城酒呑童子
相手がそれと了解できるものをさしていう語。例の所。例の物。例の人。えて物。えて吉。
「―へ行って、ももんじい四文二合半しもんこなからときめべい」〈滑・浮世風呂・三〉
《猿が「去る」に通じるのを忌むところから》猿。えて公。えて吉。
[類語]特技専売特許上手得意売り物十八番おはこお家芸お株お手の物達者堪能巧者得手物有能器用多才うまたく巧妙潰しが利くくする腕が立つ敏腕辣腕腕利き腕こき腕っこき手練てだれ手利き名人達人名手妙手エキスパート巨星巨匠名匠名工大家たいか権威第一人者泰斗たいと耆宿きしゅく大御所おおごしょオーソリティー巧手怪腕凄腕腕達者

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精選版 日本国語大辞典 「得手」の意味・読み・例文・類語

え‐て【得手】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 技芸などで、体得したわざ。「えてに入る(=得意のわざとなる)」
  3. 技芸などで最も得意とするわざ。そのことに巧みであること。得手吉。得手物。
    1. [初出の実例]「えての能をして、精励を出せば」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)七)
  4. 物事を自分の都合のよい方にばかり捉えること。得手勝手。
    1. [初出の実例]「左様の時に、得手(エテ)のお方が、今宵一夜はおれが物、一寸傍(そば)を放さぬと、堅くろしいお方がござります」(出典浄瑠璃・傾城酒呑童子(1718)三)
  5. 例のこと、例のもの、例の所など聞き手にそれと通じると思われる物事や人をさしていう。主としてあからさまにいうのをはばかる物事や場合にいう。得手吉。得手物。
    1. [初出の実例]「例所(エテ)へ行(いっ)て、ももんぢいで四文(しもん)二合半(こなから)ときめべい」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
  6. ( 「さる」の音が「去る」に通ずるのを忌んでいう ) 「さる(猿)」の異名。得手吉。得手物。得手公。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
  7. 戸のさるかぎ。戸の栓(せん)
    1. [初出の実例]「得手差て言ふ気女房のはらげ髪」(出典:雑俳・紀玉川(1819‐25))
  8. 月経をいう。月経のことを猿猴坊ということから転じたものか。
    1. [初出の実例]「それにあのお子は積気(しゃくき)だの、えてになるといつでもあれよ」(出典:洒落本・南極駅路雀(1789))

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普及版 字通 「得手」の読み・字形・画数・意味

【得手】とくしゆ

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