器用(読み)キヨウ

デジタル大辞泉 「器用」の意味・読み・例文・類語

き‐よう【器用】

[名・形動]
からだを思うように動かして、芸事工作などをうまくこなすこと。また、そのさま。「手先器用だ」「器用はしを使う」
要領よく、いろいろな物事を処理すること。また、そのさま。「何事器用にこなす」
抜けめなく立ち回ること。また、そのさま。「世渡り器用だ」
不平不満なく、受け入れること。いさぎよいこと。また、そのさま。
「なんにも言わずに、―に買っときなさい」〈里見弴多情仏心
「気遣ひしやるな、逃げはせぬと、もっとも―な白状」〈浄・淀鯉
すぐれた才能のあること。また、その人。
武家棟梁とうりゃうと成りぬべき―のじん」〈太平記・一三〉
[派生]きようさ[名]
[類語]卓出卓越卓絶逸出抜群抜きん出る飛び抜けるずば抜ける頭抜ける並外れる人並み外れる度外れ断トツ非凡出色傑出一日いちじつの長素人離れ玄人はだし超人的巧みうまい巧妙絶妙老巧達者賢い小器用手まめ不器用ぶきっちょじょうず得手素晴らしい素敵すてき見事みごと立派最高卓抜秀逸結構目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ上出来上上物の見事結構尽くめ何より・申し分が無い・言う事無し天晴れナイスワンダフル目の覚めるよう目に染みる冴える水際立つ敏腕辣腕特技専売特許得意売り物十八番おはこお家芸お株お手の物達者堪能巧者得手物多才潰しが利くくする腕が立つ腕利き腕こき腕っこき手練てだれ手利き名人達人名手妙手エキスパート巨星巨匠名匠名工大家たいか権威第一人者泰斗たいと耆宿きしゅく大御所おおごしょオーソリティー巧手怪腕凄腕腕達者

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「器用」の意味・読み・例文・類語

き‐よう【器用】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 役に立つ大切な器物
    1. [初出の実例]「凡諸国貢献物者、〈略〉服食。器用〈謂。〈略〉器用者。如下野氈。形箭之類是也〉」(出典:令義解(718)賦役)
    2. [その他の文献]〔書経‐旅獒〕
  3. 器械を用いること。
    1. [初出の実例]「地理を興し、農事を精にするは、〈略〉技術と器用と並完(ならびまっと)ふして」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉二)
  4. 容貌。人柄。器量
    1. [初出の実例]「易㕝とは其人の器用々々のままに使也」(出典:足利本論語抄(16C)子路第一三)
  5. ( 形動 ) 役に立つ才能があること。才知がすぐれているさま。また、そのような人。有用な人材。
    1. [初出の実例]「既非器用。自漏明時之祿」(出典:本朝文粋(1060頃)六・申民部大輔状〈橘直幹〉)
    2. 「我等五六人は皆一方の大将軍を承はるべき器用(キヨウ)の若者共が」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
    3. [その他の文献]〔春秋左伝‐隠公五年〕
  6. ( 形動 ) いさぎよいこと。潔白であること。上品で優雅なさま。また、その人。
    1. [初出の実例]「ヲノヲノノ ナカニ ワガ qiyôni(キヨウニ) ニタ カタガタモ アルマイ」(出典:天草本伊曾保(1593)尾長鳥孔雀の事)
  7. ( 形動 ) わざがすぐれてじょうずなこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「あつもりは、ふえにきようの人なりとて」(出典:幸若・敦盛(明暦版)(室町末‐近世初))
  8. ( 形動 ) うまいぐあいに物事を処理すること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「器用は、物をもとめず、たくはへず、あれば人にほどこし、なければなき分に候」(出典:集義和書(1676頃)二)
    2. 「それぞれ酒でも呑まし、器用(キヨウ)にするが破落戸(ごろつき)附合」(出典:歌舞伎・三題噺魚屋茶碗(とと屋茶碗)(1882)三幕)
  9. ( 形動 ) 手先のわざや本職ではない芸事などをうまくこなすこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「手の先きの器用(キヨウ)な奴で」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉〉幼少の時)
  10. ( 形動 ) 文句などを言わないで、素直にすること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「そんな野暮を言はねえで、器用(キヨウ)に受けてくんなせえ」(出典:歌舞伎・黒手組曲輪達引(1858)三幕)

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普及版 字通 「器用」の読み・字形・画数・意味

【器用】きよう

道具。〔塩鉄論、禁耕〕ならざれば、則ち農夫は(野)に罷(つか)れ、辟(ひら)かれず。

字通「器」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の器用の言及

【恩地】より

…こうした恩地は平安時代末から武家社会を中心に広くみられるが,鎌倉幕府はこれについて詳しい規定を定めている。とくに恩地を奉公義務の負担能力(これを器量とか,器用とかいった)のない者に売ったり譲渡したりしてはならないと規定した部分は恩地の性格をよく示している。また有名な永仁の徳政令が御家人から凡下に売られた土地は無償で御家人にもどされると規定したのも,恩地の性格に起因していると言えよう。…

※「器用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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