デジタル大辞泉 「膳」の意味・読み・例文・類語
ぜん【膳】
1 料理をのせて人に供する台。脚付きのものや、
2 調えられた料理。また、食事。「10人分の
[接尾]助数詞。
1 食器に盛った飯を数えるのに用いる。「2
2 はし2本を一対として数えるのに用いる。「5
[類語]食膳・陰膳・料理・調理・
ぜん【膳】[漢字項目]
1 料理した食物。「
2 食物を載せて出す台。また、それに載せた料理。「膳部/
[名のり]よし
[難読]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
食器に盛った料理を食事や宴席に供するための盤や台。律令制下の大膳職(だいぜんしき),内膳司(ないぜんし)あるいは《延喜式》にみられる膳部(かしわでべ)などが飲食をつかさどる官名であることによっても知られるように,膳は本来,料理や食事そのものをさす言葉であったが,しだいに食事をそなえた盤,台の類を意味するようになり,やがてそれが転じて食台一般をさすようになったとされる。その時期はつまびらかでないが,1295年(永仁3)以降の成立とされる《厨事類記(ちゆうじるいき)》には,膳と食台とをなお明確に区別しており,膳が食台を意味するようになるのは,本膳料理が儀礼の料理として完成する南北朝以後であると考えられる。しかも一般化するのは近世に入ってからであろう。食台としての膳は,古くは机(つくえ),食机(おしき)と呼ばれた。机は坏(つき)をおく〈坏居(つきすえ)〉の意,〈おしき〉は天子などの〈食(おしもの)〉をのせる机の意とされる。ついで台盤や折敷(おしき)が記録に現れるようになる。台盤は台つきの盤で《延喜式》にも盤面を方形,長方形,円形にかたどり,しかも大・小さまざまのものが見いだされる。高坏(たかつき)の類もこの中に含まれると想定される。
膳は,現在一般に会席膳と呼ばれる方1尺2寸(約36cm)の折敷を除いては,ほとんどが足をつけるか,台に載せた形態のものである。板を折り回した足を折敷の下につけたものを衝重(ついがさね)といい,足の前面と左右両側の3面に繰形(くりかた)をつけたものを三方(さんぼう),4面につけたものを四方と呼んだ。これに対して,大きく格狭間(こうざま)を透かせた台に折敷を載せたものを懸盤(かけばん)といい,藤原氏の氏長者(うじのちようじや)がその地位の標識として朱器とともに伝領した台盤も,この形式のものであった。
近世に入って,足つきの膳にはさまざまなものがつくられた。足の形によって,蝶足,宗和(そうわ)足,猫足,銀杏(いちよう)足,胡桃(くるみ)足などの名があり,蝶足膳は足がチョウの羽を広げたような形をし,外黒内朱塗りで祝膳に用いられた。宗和(足)膳は茶人金森宗和の好みに始まるもので,内外とも朱または黒塗りで客用とされた。猫足膳は中足膳ともいい,ネコのそれに似た足をつけた黒塗りのものが多く,イチョウの葉のような足をつけた銀杏足膳とともに,略式の場合に用いられた。胡桃足膳は二つ割りにしたクルミの殻を足にしたもので,箱膳とともに商家その他の奉公人用とされた。箱膳は蓋のついた箱形のもので,食事の際は蓋を裏返して椀類を置き,食後はそれらをふきんでぬぐって内部に納める構造になっており,収納部を引出しにしたものもあった。江戸では武家の中間(ちゆうげん)が多く用いたため折助(おりすけ)膳とも呼ばれ,京都や大坂では飯台(はんだい)といった。
執筆者:河田 貞+西村 潔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
食器をのせる盤台。古代、カシワの葉に食物を盛ったことから、古語ではカシワデといった。転じて食事をのせる盤の名や、食膳調理をつかさどる人々をさすようになったものという。わが国では古くから檜(ひ)の片木板(へぎいた)を折り曲げてつくった折敷(おしき)、木具(きぐ)、三方(さんぽう)、懸盤(かけばん)などの曲物(まげもの)の角膳が使われていた。膳は折敷の変化したもので、食器をのせる盤台を膳とよぶようになったのは、のちに挽物(ひきもの)や指物(さしもの)の盤台が使われるようになってからであろう。木地師が木地をひいてつくる挽物膳は、丸膳とか木地膳とよばれる。スギ、ヒノキなどを材料とし漆を塗って仕上げる指物膳には、四足膳、両足膳、平膳、箱膳などの種類がある。四足膳は盤の四隅に足をつけたもので、この足の形によって蝶足(ちょうあし)膳(内朱外黒の漆塗り、祝儀用)、宗和足(そうわあし)膳(茶人金森宗和好みの内外朱または黒漆塗り、客用)、猫足(ねこあし)膳・銀杏足(いちょうあし)膳(ともに黒漆塗り、略式)などがある。二つ割りにしたクルミの殻を足とした胡桃足(くるみあし)膳は下人用であった。足なしで会席に用いる会席膳は、明治以降一般家庭で客膳として使用された。蓋(ふた)付き箱形の箱膳は、かつては町家や農家で普段の膳として広く使用され、家族各人がそれぞれ自分のものをもっていた。中に1人分の食器を入れておき、蓋を裏返して盤とし、その上に食器を並べて食事をする。食後はふきんでぬぐって食器を中に納める。なお膳ということばは、本膳、二の膳、三の膳など膳に供える食物や献立をもさしている。
[内田賢作]
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…【鍵和田 務】
【日本】
日本で〈家具〉という言葉が現在のような意味で使われるのは,近代に入ってからである。言葉自体は鎌倉時代ころから使われているが,当時〈家具〉という言葉は棟,梁,柱などの家屋の部材を指しており,江戸時代には建具あるいは椀(わん)家具(膳)のことを指していた。では現在〈家具〉と総称している財を古くはなんと呼んでいたのか。…
※「膳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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