(読み)クン

デジタル大辞泉 「訓」の意味・読み・例文・類語

くん【訓】[漢字項目]

[音]クン(呉)(漢) キン(唐) [訓]おしえる よむ おしえ よみ
学習漢字]4年
〈クン〉
字句の説明・解釈。「訓詁くんこ訓釈訓注
教えさとす。教え。「訓育訓戒訓導訓蒙くんもう訓練遺訓家訓教訓垂訓処世訓
漢字に日本語を当て、読みとしたもの。訓読み。「訓読音訓字訓正訓難訓傍訓和訓
訓令。「訓電回訓請訓・内訓」
〈キン〉教える。教え。「訓蒙きんもう庭訓
[名のり]くに・しる・とき・のり・みち

くに【訓】

《「くん(訓)」の「ん」を「に」で表記したもの》「くん(訓)」に同じ。
一度ひとたびは―、一度は声に読ませ給ひて」〈宇津保・蔵開中〉

くん【訓】

漢字の意味に基づいて、それに当てた日本語による読み。「山」を「やま」「川」を「かわ」と読む類。和訓。⇔おん

きん【訓】[漢字項目]

くん

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精選版 日本国語大辞典 「訓」の意味・読み・例文・類語

くん【訓】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 文字が表わしている意味。字の持っている意味。
    1. [初出の実例]「上古の時、言と意と並に朴にして、文を敷き句を構ふること、字に於きて即ち難し。已に訓(くん)に因て述べてあるは、詞心に逮ばず。全く音を以て連ねてあるは、事の趣更に長し」(出典古事記(712)序)
    2. [その他の文献]〔王仁昫刊謬補欠切韻‐序〕
  3. 漢字の持っている意味に当たる日本語のよみ。和訓。くに。
    1. [初出の実例]「訓のよみにもをよばざる也」(出典:名語記(1275)二)
  4. 漢文訓読のとき、漢字にそえるよみがな。
    1. [初出の実例]「此字例 このとよむは正訓也。訓を付べからず。これとよむには、レの字を付べし」(出典:点例(1703)上)

くに【訓】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「くん(訓)」の韻尾の n を「に」で表記したもの ) 漢字に和語をあててよむこと。漢字の国語よみ。くん。
    1. [初出の実例]「一たびはくに、一たびはこゑによませ給て」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)

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普及版 字通 「訓」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音] クン
[字訓] おしえる・みちびく・よむ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は川(せん)。〔説文〕三上に「するなり」とする。〔詩、周頌、烈文〕「四方其れ之れに訓(したが)ふ」、また〔書、洪範〕「是れ訓ふ」のように、古く順の義に用いる。同じく川声の字で、通用したのであろう。〔周礼、地官〕に「土訓」「誦訓」などの職があり、〔土訓〕は「地事を詔(たす)け」、〔誦訓〕は「辟忌(へきき)を誥(つ)げる」ことを掌る。いずれも地霊を安んずるための呪儀を掌るもので、そのとき誦する呪的な語が「訓」とよばれるものであろう。のち教訓・訓詁の意となる。

[訓義]
1. 神霊に告げ誦することば、いましめる、いましめ。
2. したがう。
3. おしえる、みちびく。
4. よむ、よみとく、わけ。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕訓 ミチビク・ススム・サトル・ヲシフ・シタシ・イマシム・シタガフ・シタフ

[語系]
訓xiun、順djiun、馴ziunはみな川thjyun声で声義近く、〔土訓〕〔誦訓〕の掌るところは、おそらくわが国の序詞枕詞のように、地霊などをなだめる呪語であったのであろう。

[熟語]
訓化・訓戒・訓解訓誡訓誨・訓革・訓義・訓御・訓教・訓詁・訓故訓告・訓告訓辞訓示・訓釈訓授・訓習・訓術・訓奨・訓章・訓説・訓卒訓飭訓迪・訓典・訓点・訓伝・訓導・訓範・訓命・訓訓喩訓諭・訓誘・訓旅・訓令・訓練
[下接語]
貽訓・遺訓・彝訓・懿訓・音訓・家訓・格訓・義訓・儀訓・教訓・恵訓・厳訓・古訓・故訓・詁訓・弘訓・恒訓・校訓・高訓・時訓・乗訓・常訓・正訓・成訓・聖訓・請訓・祖訓・通訓・帝訓・庭訓・典訓・土訓・道訓・導訓・内訓・難訓・納訓・反訓・敷訓・明訓・和訓

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改訂新版 世界大百科事典 「訓」の意味・わかりやすい解説

訓 (くん)

漢字の意味にあてた日本語のことで,〈よみ〉ともいい,〈音(おん)〉に対する。たとえば〈天〉の音はテン,訓はアマ(またはアメ),〈空〉の音はクウ,訓はソラ。元来日本語には文字がなく,漢字が輸入されて文字をはじめて学んだが,漢字は表意文字で一字一字意味があり,また,中国語としての音をもつ。その音のかわりに漢字の意味にあたる日本語を固定的にあててよみならわしたものが訓である。5~6世紀ころすでに行われ,7世紀初めの推古遺文の中には〈小治田〉の字を〈ヲハリダ〉にあてているから,〈小〉にヲ,〈治〉にハリが固定的に連想される地盤がすでに存在したし,《古事記》の漢字にも固定的な訓をつけるべきものもあるが,その訓注が万葉仮名で付されてあるのは,漢字の訓がまだ固定せず,2,3とおり存在したことを示す。《万葉集》の仮名には訓を用いたものがある(〈思努櫃〉をシノヒツ(偲ひつ)にあてるのは,〈櫃〉の訓ヒツを,シノフという動詞活用語尾のヒと助動詞ツにあてたもの。〈櫃〉の音はキ)。このような仮名を訓仮名という。漢文に訓を書きこんだ例は,《新訳八十巻華厳経音義私記》《四分律音義》など,奈良時代末期から平安初期に現れる。当時の漢籍・仏典につけた訓を集大成したものが《類聚(るいじゆ)名義抄》(平安末期成立)だが,その観智院本では字数3万2000,訓4万,訓の種類1万で,訓を欠く文字が全体の1/3,1字で30以上の訓をもつものもある。それは漢字の多義であることにもよるが,当時漢字の訓のつけ方が比較的自由であったことにもよる。平安中期以後訓はしだいに固定的になり,1字の訓は一つ二つに限定されてくる。これは漢字を日本語の表記に常用するようになってきた結果であり,室町末期ころには1字で数多くの訓をもつ字は少ない。今日,普通の漢字は常用漢字1945字と限定されたが,その訓は未整理である。〈怠〉を〈おこたる〉とも〈なまける〉ともよむようにするか,あるいは一方を制限するかというような音訓整理の意見がある。
字音
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「訓」の意味・わかりやすい解説


くん

漢字の原義に対応する日本語で、それがある程度固定化したものをいう。本来は、漢字のもつ意味、字義をさし、字義を解釈すること「訓詁(くんこ)」をも訓と称したが、さらに転じて、日本における漢字の読み方のうちの一種をよぶようになった。たとえば「山」についていえば、「やま」がその固定化した日本語にあたる。漢字を中国語の原音(またはそれに近い音)で読んだもの、すなわち音(おん)(字音)と対立するもので、字訓、和訓ともよぶ。わが国に漢字が伝来してのち、ある程度時間が経過して和訓が固定化すると、今度は逆にその和訓に対応する漢字を並べて、日本語の文章を漢字によって表記するようになる。『古事記』(712)はその典型である。しかし、種々の漢字について、その和訓を万葉仮名や片仮名で示すことが一般化するのは平安時代に入ってからで、漢文の行間に仮名などにより読み方を示した資料(訓点資料)の存在しない奈良時代以前については、一つ一つの漢字の和訓を確定することはかならずしも容易ではなく、平安時代以降の和訓から類推することも多いのが現状である。平安時代以降、訓点資料などの和訓を集めて辞書がつくられた。『新撰字鏡(しんせんじきょう)』(900ころ)、『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(931~938ころ)、『類聚名義抄(るいじゅうみょうぎしょう)』(12世紀初頭)などがある。訓は漢字1字に1語が対応することが多いが、「七夕(たなばた)」のように漢字2字に一つの訓が対応したり(熟字訓)、「将(まさに~んとす)」のように漢字1字に二つの訓が対応することもある。

[月本雅幸]

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百科事典マイペディア 「訓」の意味・わかりやすい解説

訓【くん】

和訓とも。漢字の意義にあてた日本語で,一般にその字の読み方として社会的に通用するもの。字音の対。山を〈やま〉,行を〈ゆく・いく・おこなう〉,今日を〈きょう〉等と読む類。漢字が多義であるため,また比較的自由に訓をあてていたため,はじめ訓のつけ方は固定しなかったが,平安中期以降1字の訓は一つか二つに限定された。
→関連項目漢字重箱読み湯桶読み

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【漢字】より

…ハングル以前には漢字をもって朝鮮語を表すのにも用いていた。新羅時代の金石文や歌謡には漢字の訓読が行われ,とくに助詞・助動詞の類を示すために漢字の音読および訓読を複雑に利用している。その趣は日本の宣命(せんみよう)などに類する。…

【字音】より

…日本の〈国字〉(中国には元来存在しない日本製漢字)の字音も,この字音体系に反しない形をとる(働(ドウ),鱇(カウ)等)。
[日本漢字音]
 日本語での漢字の〈読み〉には,漢字音である〈音〉以外に〈訓(クン)〉がある。例えば〈東〉の音はトウ,訓はひがし。…

※「訓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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