ラン(その他表記)orchid

翻訳|orchid

デジタル大辞泉 「ラン」の意味・読み・例文・類語

ラン(run)

走ること。「ビクトリーラン
野球で、ベースを一巡して得点すること。「ツーランホーマー」
映画・演劇などで、興行が続くこと。また、興行の順序。「ロングラン」「セカンドラン
ほつれること。靴下などが伝線すること。「ノーランストッキング」
コンピューターで、処理装置が一連のプログラムや処理を次々に実行すること。また、その状態。
ゴルフで、打ったボールが落下地点から転がること。また、その距離。打った地点から落下点までの飛距離をキャリーという。→キャリー2

らん[助動]

[助動]らむ[助動]

ら‐ん[連語]

[連語]らむ[連語]

ラン(Laon)

フランス北部、パリの北東に位置する都市。中世はカロリング朝の中心地。歴史的建造物が多く、初期ゴシック様式の大聖堂がある。

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精選版 日本国語大辞典 「ラン」の意味・読み・例文・類語

ラン

  1. ( [英語] run )
  2. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 走ること。
    2. コンピュータで、プログラムを機械が実行処理すること。
  3. [ 2 ] 〘 造語要素 〙
    1. 映画・演劇などの興行が連続して続くこと。「ロングラン
    2. 興行の順次。「ファーストラン
    3. ほつれること。編物や織物がほどけること。靴下が伝線すること。
    4. 野球でホームに帰塁して一得点すること。「スリーラン」

らん

  1. 〘 助動詞 〙 ( 推量の助動詞「らむ」の変化したもの ) ⇒らむ〔助動〕

ら‐・ん

  1. ( 完了の助動詞「り」の未然形「ら」に、推量の助動詞「む」の付いた「らむ」の変化したもの ) ⇒らむ

ラン

  1. ( Laon ) ⇒ラーン

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改訂新版 世界大百科事典 「ラン」の意味・わかりやすい解説

ラン (蘭)
orchid

単子葉植物のラン科Orchidaceaeに属する植物の総称。ラン科は約700属2万5000種からなり,被子植物の中でもっとも大きい科の一つである。美しい花を有する種が多数あり,重要な観葉植物になっている。両極地帯を除く南北両半球に広く分布するが,熱帯の雲霧林に種類が多い。日本には琉球を含めて73属約220種がある。

多年生の草本,まれにつる状または灌木状になる。地生または着生植物で通常,独立栄養を営むが,ときに腐生する。根は不定根でまれに塊根となり,通常,菌根性である。茎は地上性で長く延びるものから,短縮し,さらに地下性の根茎になるものまでさまざまで,しばしば偽球茎が発達する。葉は単葉,通常全縁で,平行脈をもち,基部は葉鞘(ようしよう)となる。花序は穂状,総状または円錐花序となり,花は左右相称で,通常両性花である。花被片は3枚の萼片と3枚の花弁からなり,さまざまの程度に合着する。花序軸に面した花弁は,形や色彩が他の花被と異なり唇弁と呼ばれるが,多くのもので子房が180度ねじれるため,開花時には花の花茎の反対側(背軸側)に位置するようになる。多くのものではおしべとめしべは合着して蕊柱(ずいちゆう)を形成し,柱頭の一部は通常くちばし体を形成する。花粉塊は2個から8個,粉質または蠟質。子房は下位,側膜胎座まれに中軸胎座を有し,果実は蒴果(さくか)または肉質の不裂開果となる。種子は多数で微細,胚乳がない。ショウガ科やバショウ科,あるいはヒガンバナ科に類縁があるといわれている。

ラン科は大きく5亜科に分けられる。ヤクシマラン亜科は,中軸胎座,めしべとおしべの合着が不十分で,唇弁はとくに分化しておらず,ほぼ放射相称花になるなどの特徴をもち,通常のランと一般の単子葉植物を結ぶ原始的なランと考えられている。2属からなり,日本にはヤクシマラン,1属1種がある。アツモリソウ亜科は内輪の2本のおしべに稔性があり,唇弁は発達し,袋状になる特徴がある。4属約100種からなり,日本にはアツモリソウ属5種が自生する。他の3亜科は外輪の1本のおしべだけに稔性があり,唇弁はよく分化している。チドリソウ亜科は主に地生のランで茎的性質を有する塊根を有し,花は基部で蕊柱と幅広く合着した葯と,いくつかの部分に分かれる花粉塊などで特徴づけられ,日本にはツレサギソウ属,ハクサンチドリ属などがある。サカネラン亜科もやはり地生ランだが,基部で細いささえを仲介として反転ぎみにつく葯,粉質の花粉塊などで特徴づけられ,カキラン属,トキソウ属,シュスラン属などが日本に産する。ラン亜科は着生生活に適応したグループと考えられ,大部分の着生ランが所属する。この亜科はさらに茎が仮軸分枝をするグループと単軸分枝をするグループに分けられ,前者にはエビネ属,シュンラン属,クモキリソウ属セッコク属などが,後者にはフウラン属,カヤラン属などが属する。チドリソウ亜科,サカネラン亜科,ラン亜科は一つにまとめられ,ラン亜科とされることもある。

ラン科植物の菌根性,微細で多量の種子,多彩な花の形態や色は互いに関連しており,全体として進化してきたと考えられる。すなわち胚乳をもたない微細な種子は,自然状態では少なくともその発芽初期に菌から栄養の供給を受けないとうまく発育できないことが知られている。そのことは逆に菌との共生関係が成立したために,種子が小さくなり,多量の種子を散布することができるようになったともいえよう。種子数,いいかえれば花の胚珠数の増加に伴い,その多量の胚珠を有効に受精するためには,花粉数をも増加させなければならなかったであろう。この大量受粉の必要性から,花粉塊が形成されるようになったと考えられる。また,まとめられた少数の花粉塊を損失する危険性をなるべく減少させるため,ランの花は特定の動物(おもに昆虫)の特定の部位に花粉塊を付着させるさまざまのくふうを進化させてきた。ランの特定の種の花形と昆虫の吸蜜行動の適合性は著しいものがあり,共進化coevolutionの代表例とされていることがある。なかには昆虫の雌の形や発散するにおいを擬した花を有し,雄に交尾行動を引きおこさせ花粉塊を運搬させるほど特殊化した種類も知られている。受粉における昆虫との1対1の種対応関係が明確になっているためか,ランの仲間では種や属間の植物自身の遺伝的隔離機構が発達していない場合がしばしば見られる。このため,人為雑種がつくりやすく,園芸品種の育成に重要な役割を果たした。また種子が小型であることは明らかに風散布に有利であり,樹上着生生活に適応する一つの原因となったと思われる。微細な風散布種子をつくるにもかかわらず,ランの種分布域は,多くの場合それほど広くはない。着生ランが熱帯で多様に分化する契機になったのは,花形を通しての交配機構の分化が重要な役割を果たしたのであろう。

 ラン科は,被子植物の中でもっとも多くの種を有し,茎や偽球茎という多肉化した部分を有するにもかかわらず,人類によって食用とされる種の少ない植物群である。主食としてはもちろん,野菜や果物としてもほとんど利用されていない。それと対照的に,著しい花形の変化や香りを観賞するという点では,ラン科ほど珍重される観賞用植物は他にない。開花期間も長いし,着生ランでは乾燥にも強く,栽培がそれほどむずかしくなく,苗の長距離輸送もやさしいことが,園芸植物としてのランの利用を発展させたのであろう。観賞以外の利用としては食品香料となるバニラや,生薬のサレップなどがある。
執筆者:

日本の園芸界では,ラン科植物を東洋ラン,洋ラン,和ランなどに分けて取り扱っているが,これは植物学上での分類ではない。

 日本や中国に原産し,古くから栽培されていたカンランやシュンランは東洋ランと呼ばれる。それに対して洋ランはおもに明治以後,欧米を通じて日本に導入された花の観賞価値の高いラン科植物を指し,それらの中にはフィリピン,タイなどの東洋原産のラン科植物も含まれる。したがって洋ランとは原種の地理的分布を指したものではない。また,多くの洋ランは,熱帯系で,自然状態では北回帰線から南回帰線の間に分布しているため,耐寒性は小さく,日本での栽培は越冬のための保護設備の必要な点も,東アジア暖温帯原産の東洋ランとの栽培上の相違点となっている。

 観賞上の面で比較すると,東洋ランは鉢植えとして全草を眺めるのが中心だが,洋ランは鉢花のほか切花にも多く利用されている。また洋ランは品種改良が次々にすすめられ,つねに種間交配種あるいは属間交配種が生まれるのに対し,東洋ランは自然に生育している変異品種をそのまま楽しむことが多い。

洋ランの株がはじめてヨーロッパに渡ったのは1731年で,西インド諸島プロビデンス島からといわれる。この株は,ブレティア・ベレクンダBletia verecunda R.Br.で,翌年開花し,ヨーロッパにおける洋ランの最初のものとなったとされている。その後78年に,鶴頂蘭(かくちようらん)Phajus grandifolius Lindl.(=P.tancarvilleae(Banks)Bl.)が東南アジアからイギリスに輸入され,さらに1818年,カトレア・ラビアタCattleya labiata Lindl.が,ブラジルで発見される,など次々と洋ランが見つかりはじめた。これらはおもにラン株をとる採集家orchid hunterによってイギリスへ送りこまれたが,この採集行は積極的に行われた。

洋ランの原産地域はおよそ三つに分けられる。(1)熱帯アジア地域 インドからオーストラリアにわたる広い地域で,中心はフィリピン,タイ,インドネシアなどの東南アジアの熱帯降雨林の地帯である。ファレノプシスコチョウラン),シンビジウムデンドロビウムパフィオペディルムセロジネ,エリアEriaバンダアスコセントルム,カランセCalanthe,リンコスティリスRhynchostylis,レナンセラRenantheraエリデス,ツニアThuniaなど,着生ランが多い。(2)熱帯アメリカ地域 メキシコ,フロリダより南で,ウルグアイ,パラグアイより北で,ブラジルが中心となる。カトレアオンシジウムレリア,ブラッサボラBrassavola,ブラッシアBrassiaミルトニアオドントグロッスムリカステ,アングロアAnguloaソフロニティス,ロドリグネチアRodrigneziaジゴペタルムエピデンドルムなどを産し,着生ランがほとんどである。(3)南アフリカとマダガスカル島 属は少なく,分布も前2者に比べると少ない。ディサDisaアングレクム,アンセリアAnsellia,エランギスAerangis,ユーロフィエリアEurophieliaなどがある。

洋ランの大きな特色である品種改良は,1852年,イギリスのドミニーJ.Dominyが,カランセ・フルカタCalanthe furcata Lindl.にカランセ・マッスカC.massuca Lindl.を交配したのが始めとされている。この交配種は56年に開花し,カランセ・ドミニーC.dominyiと命名された。また属間交配のほうでは,やはりドミニーがカトレア・モシアエCattleya mossiae Hook.にレリア・クリスパLaelia crispa Reichb.を交配し,63年に開花させ,これをレリオカトレア・イクソニエンシスLaeliocattleya Exoniensisと命名したのが最初のものとされている。

 こうした品種改良は,当初イギリスだけで行われていたが,その後,ヨーロッパ各国にひろがった。現在,品種改良が盛んに行われている国として,アメリカ,イギリス,ドイツ,オランダ,タイ,シンガポール,フランス,オーストラリア,日本などがある。

明治以前,長崎のグラバー家の温室に,シンビジウム・トラシアヌムCymbidium tracyanumがあったといわれるが,はっきりしたことはわからない。現在のところ,明治10年(1877)ごろ,横浜にあったボーマー商会がイギリスからランや観葉植物を輸入していたので,ここから日本に渡来したとされている。また,1881年上野で開かれた,第2回内国博覧会のおりに温室が建ち,この中にシンビジウムやパフィオペディルムがあったといわれているし,89年,福羽逸人(いつんど)が東京麴町に温室をつくって,栽培をしていたともいわれている。いずれにしても,明治の初年から中ごろにかけて,イギリスやフランスなどから輸入されたものといえる。

 こうした洋ランの栽培は,貴族を中心に趣味栽培として発展してきたが,一般への普及はあまり行われず,営利栽培もあまりなかった。第2次世界大戦後は,洋ランの栽培は営利生産を中心に発展した。これは切花としての需要が出てきたためで,1955年ころからこのきざしが見られ,70年ころには大量生産がはじまり,洋ラン普及時代になった。現在,鉢花として最も量産されているのはシンビジウムで,デンドロビウム,カトレアがこれについでいる。
執筆者:

東洋ランに含まれる種類は,日本はもとより,中国中南部や台湾の比較的温暖な地方に自生するシュンランやカンラン,またやや暑い地方に自生するキンリョウヘン(金稜辺),ホウサイラン(報才蘭),オラン(雄蘭),メラン(雌蘭),カンポウラン(寒鳳蘭)などとこれらのあいだで自然交配されたと思われる変種などをさす。すべて自然にはえているもので人工交配品種はない。

 東洋ランの姿は洋ランに比べれば,地味である。またむしろ花をめでる洋ランに対し,葉,花および鉢植えにした全形を観賞する。そのため,文人趣味の極致をあらわすものとして,花や葉のもつ独特の姿態が,古くから文人や芸術家や一部の有識者に珍重されてきた。東洋ランを楽しみの伴侶として栽培するようになったのは,日本では鎌倉から室町時代にかけて,中国との往来がはげしくなったころからといわれ,ホウサイランやソシンラン(素心蘭)などが,僧侶や貿易商などによって少しずつ輸入され,気品のある花と香りが観賞されてきた。その後,江戸時代を機に,中国産のランに加えて,日本産のシュンランやカンラン,フウラン,セッコクなどの葉芸もの(縞,中斑,虎,中透,蛇皮など)に目が向けられ,それがエスカレートして,享保から天明にかけて大名から豪商,はては大衆の数寄者にいたるまで東洋ランを培養する気風が流行し,数々の出版物も出された。とくに文政年間に発行された水野忠敬の《草木錦葉集》(1826)は全般の植物にわたる柄物の大集成として著名であり,ランも各所にとりあげられている。明治になり,西欧の文化が流入するにおよんで,皇室をはじめ政治家や豪商などが洋ランの本格的な培養に取り組みはじめたころから,東洋ランも文人墨客を主として趣味者をひろげ,《剣蘭花鏡集》や《古今要覧稿》などに色刷りのランの絵がみられるようになった。明治の末期になると,シュンランの柄物が名品として世に発表され,カンランも優雅な品位を鉢植えにして産地を中心に愛好され,この時代に東洋ランの趣味が洗練された姿で定着したのである。

 大正時代にはいると,華族や豪商などのいわゆる特権階級から大衆へとラン趣味がひろがる時期をむかえ,精神的植物観賞から脱して,美しい花をたのしむ風潮に変わり,花や柄の良し悪しに対する基本的な基準もととのい,初歩的な観賞方式が確立されたのである。しかし,これが引金になり,愛好者たちの競争心をあおる結果になってしまった。東京ではじめて全国的規模の大蘭展が開かれたのがこの時期であり,中国では清の呉恩元が収集した春蘭100余種を銅版で製図した《蘭蕙(らんけい)小史》(1933)が発行された。

 昭和になると,花と柄に対する鑑識眼が一段と進歩し,その格付けにはっきりとした公式をうち出して,異常なまでの熱狂家が続出して,新種の発表のたびに興奮して売買するありさまは,まさに狂気の様相を呈し,一部の地方では禁止令さえ出た。しかし,この白熱した流行も,名花の発見に寄与した功績は大きく,静かな観賞態度を忘れて培養と売買にうきみをやつした姿に対する反省へのよい経験になった。

 第2次大戦後は,大衆のラン趣味が根強くなり,柄物のケイラン(蕙蘭)から中国ラン,日本シュンラン,カンランへと新品種の発見は枚挙にいとまがなく,愛ラン家の増加がめざましい。
執筆者:

中国では古来その高雅な香りと姿,花色をめで,君子の花,国香として貴ぶ。前3世紀の屈原(くつげん)の《離騒(りそう)》にいう〈余すでに蘭の九畹(えん)を滋(う)え,また蕙(けい)の百(ほ)を樹(う)う〉をはじめ《楚辞》には蘭を詠うことが多い。また《春秋左氏伝》では鄭の文公の妾燕姑が,天人から蘭を与えられ,生まれる子はその香りのように人々から慕われると夢みた記事があり,すべて,国香,王者の香りのイメージを定着させるに役立った。春秋時代の楚の宮殿や,漢の宮中図書館,さらには御火台を蘭台と呼び,皇后宮を蘭殿というのも最上の香気の意味を含ませる。時代は下るが,王羲之の蘭亭も単にそこに蘭花が多かった以上の印象を与えるし,寺院āraṇyaに蘭若(らんにや)の字を当てるのも,蘭と杜若(カキツバタ)のもつイメージと無関係ではない。

 中国の観賞用の蘭は,温州や婺(ぶ)州蘭谿など浙江省南部の山地,福建の海岸一帯,あるいは江蘇省宜興などに生育し,湖北や漢中にも産地がある。通例は一茎一花を蘭,一幹数花を蕙と呼び,春蘭,建蘭などの区分もある。本草書には沢蘭(都梁香)の名もみえるがラン科の植物であっても,観賞用の蘭とは異なる。蘭の栽培,愛玩がいつから始まるか正確にはわからぬが,南宋の紹定6年(1233)の趙時庚の《金漳蘭譜》と《蘭譜奥法》,淳祐7年(1247)の王貴学の《王氏蘭譜》などを見るかぎりでは,十数萼を中心に15萼にいたる多くの種類,灌水,根分け,培養土,その他現在に通じる栽培法などの詳しい記載がある。南宋では都市の市民,士大夫(したいふ)の間で相当広範に栽培されていたことがうかがえる。蘭愛好は明・清にいたるとさらに増大し,珍種の収集,品種改良が行われ,珍品が市場に出ると客どうしが殴り合いで奪ったといわれる。蘭の名品番付や栽培法を書いた本も多く,中国風に《易経》や《史記》の形に倣った《蘭易》《蘭史》などの書もある。南宋の遺臣鄭思肖(所南)が土をつけぬ蘭を描いて以後,水墨画の蘭は士大夫のたしなみの一つともなり,《芥子園(かいしえん)画伝》でも梅菊竹とならぶ四君子の一つとして蘭譜が作られている。
執筆者:

ランは英語でorchis,orchidと二通りに表されるが,前者は主として温帯地方に自生するハクサンチドリ属を指し,後者は熱帯産や温室栽培の美麗な種を指す。ともに語源はギリシア語orchis(〈睾丸(こうがん)〉の意)でその塊茎の形との類似による。またギリシア神話では,サテュロスの息子オルキスがバッコス祭に女官を犯して八つ裂きになり,ランに変わったという。そのため,この根から作られる生薬サレップsalepは催淫性があると信じられ,飲料にして娼婦が用いたり,鎮痛剤や食用ともされた。ネパールやボルネオでは聖所にランをまき,寺院にもこれを飾り,メキシコでは結婚式や葬式の献花として欠かせぬ花であったという。熱帯地方に広く分布するランの珍種を求めて多くの採集家が危険な旅行を企てたが,とくにランダンJ.Linden(1817-98)は19世紀半ばに中南米を旅し,1200に達する新種を発見した。しかし営利目的の収集家が殺到した地域では原産地からまったく姿を消した種類も続出した。熱帯産ランに対する熱狂はヨーロッパではチューリップの場合よりもはるかに長く続き,19世紀に最盛期を迎え,一生をランに捧げたライヘンバハH.G.Reichenbachは〈ラン狂の王〉と呼ばれ,死後は収集品がウィーン帝国博物館に残る。花言葉は〈美人〉〈華麗〉。
執筆者:



ラン
Laon

フランス北部,エーヌ県の県都。人口2万9000(1990)。パリ盆地北東部の比高約100mの丘の上に立地し,周囲の平野を見下ろしている。古くからの要塞都市で,カロリング朝期(8~10世紀)には王宮が置かれた。中世の城壁と城門,旧司教館,教会堂など史跡が多い。とくにラン大聖堂は,初期のゴシック建築として有名である。行政やサービスなどの第3次産業部門が卓越し,工業は停滞している。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラン」の意味・わかりやすい解説

ラン(蘭)
らん / 蘭
orchid

ラン科Orchidaceae植物の総称。APG分類でもラン科とされる。

分類と生態

3亜科700属2万5000種からなる大きな科を構成する。園芸界では、東洋ランと洋ランに分けることがあるが、日本や、中国大陸中・南部など主として温帯原産で、日本で古くから栽培されてきたものを東洋ラン、熱帯から亜熱帯原産で、主として欧米で改良され、明治時代に導入された花色の美しいものを洋ランとよんでいる。

 東洋ランはシンビジウム(シュンラン)属が中心で、シュンラン、カンランなどがある。ほかにデンドロビウム(セッコク)属のセッコク、バンダ(ヒスイラン)属のフウランなどがある。洋ランにはカトレア、パフィオペジラム、バンダなど多くの属があり、ほとんどが着生種。色彩が豊富で大形の交雑種が多数つくられている。

 一般に栽培されるランは複茎性と単茎性の2型に大別される。複茎性のパフィオペジラム、カトレア、デンドロビウム、シンビジウムやエビネなどでは、新しい芽が前年完成した茎(多くは肥厚して偽鱗茎(ぎりんけい)とよばれる)の基部から生じ、匍匐(ほふく)茎で連なり、1年で生育が完成する。こうして年々新しい茎を生じ株立ちとなる。日本での栽培では、複茎性のランは春に新芽が生育を始め、秋に完成する。この間、秋までに一人前の大きさまで育て上げないと花をつけないことになる。

 単茎性のバンダ、ファレノプシスやナゴランなどでは1本の茎が葉を左右に互生し、先端は止まることなく生育を続け、年々上方へと伸長を続ける。

 花茎の発生部位は種によって異なり、パフィオペジラムやカトレアなどでは茎の頂部から生じ、シンビジウムでは偽鱗茎基部の節(葉腋(ようえき))から、デンドロビウムでは茎の頂部あるいは上半部の節から生ずる。匍匐茎の節から生ずる種もみられる。単茎性の種では花茎は葉腋から生ずる。花茎は一般に、地生ランでは直立、着生ランの多くでは下垂する。

 花序は基本的には総状、花茎が分枝する場合は円錐(えんすい)状、なかには散形状に花をつける種もみられる。

 ラン科植物は熱帯から亜寒帯まで、湿地から乾燥地、また低地から高山までとあらゆる環境のもとで自生がみられ、それぞれの環境にみごとに適応した性状がみられる。

 地中に根を張って生育するものを地生ランとよび、これらは熱帯から亜寒帯まで広い範囲に分布している。一方、温度と湿度の高い地域には岩上や樹幹に根を広げて生育するものがみられるが、これらは着生ランとよび、熱帯地方に多く分布し、緯度が高くなるにしたがい種類と個体数は少なくなる。

 ランは生活様式がさまざまで、乾期に葉を落としたり、寒い季節に地上部が枯れる種があり、これらは常緑性に対して落葉性のランとよばれる。また、なかには葉がない無葉ラン、葉緑体を欠き地中の腐葉を養分として生きる腐生ラン、あるいは一生を地中で過ごす種さえみられる。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

形態

ランの花の形は多種多様で変化に富んでいる。これは虫媒花であるためで、花粉媒介をする昆虫の形や行動にあわせて変化し、特殊化したものと考えられている。花は花弁3枚、萼片(がくへん)3枚からなり、3枚の花弁のうち1枚は形を変えて唇弁となる。この唇弁は花粉媒介をする昆虫の目印となるため、形ばかりでなく他の弁と色彩も異なっている。また、唇弁の基部は長く伸び距(きょ)を形成する仲間もある。蕊柱(ずいちゅう)先端には葯(やく)があり、中の花粉は粉質から粒質さらに花粉塊(8~2個)へと進化し、一度に大量の花粉が運ばれるように変化してきている。花粉塊は基部に粘着体があって、昆虫の頭部や背胸部に付着して運ばれる。柱頭は蕊柱の下面にあり、ラン亜科では粘液を分泌して花粉塊がつきやすく(受粉しやすく)なっている。

 カトレアやデンドロビウムなどの着生ランは一般に葉や茎が多肉化して水を蓄え、乾燥に耐えることができるようになっている。多肉化した茎は偽鱗茎(プセウドバルブ、単にバルブとも)といい、新しい葉のあるバルブをリードバルブ、古いものをバックバルブとよぶ。また、地生ランのウチョウランやサギソウなどでは根が肥大して塊根を形成し、休眠する。着生ランの根はとくに太く、空中に裸出し、気根とよばれる。これは、本来の根の外側がベラーメン層というスポンジ状の厚い組織に覆われているためで、根を保護し、水分や養分を蓄える役目を果たしている。

 生育形態は大別して2型あり、茎が1年で生育を完了し、新しい芽は茎の基部から毎年生じ、株立ちとなる複茎性のラン(カトレア、シンビジウムなど)と、1本の茎の先端が成長し続ける単茎性のラン(バンダ、ファレノプシスなど)とがある。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

特性

ランの種子は種子植物中もっとも小さく、長さ1ミリメートル以下のものが多い。内部には未発達な細胞塊があるだけで、胚(はい)の分化もなく、発芽のための養分となる胚乳も備えていない。自然ではラン菌とよばれるカビ類がランの種子の細胞内に共生し、生育を助けることによってのみ発芽生育することができる。1果実中の種子数はきわめて多く、たとえばカトレアでは鶏卵大の果実中に100万粒を超える種子が入っている。この微細な種子はわずかな微風、上昇気流にのって、岩上や樹上に散布されるのには都合がよい。しかし雨に流されることもあり、樹幹に落ち着くものは数少なく、そこでうまくラン菌に巡り会えた種子だけが育つことになる。

 一部のランにおける光合成様式はサボテンや多肉植物と同じであることがわかっている。植物は通常昼間に気孔を開き、二酸化炭素を取り込み、根から吸収した水と太陽エネルギーを使って炭水化物をつくりだす。これに対し、ファレノプシス、カトレア、レリアやデンドロビウムの一部など肉厚の葉をもつランでは、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を吸収し、これをいったんリンゴ酸に合成して蓄え、昼間は気孔を閉じ、蓄えていたリンゴ酸を分解して二酸化炭素を発生させ、この二酸化炭素を利用して炭水化物を合成している。この光合成様式をもつ植物はCAM(キャム)植物とよばれている。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

栽培

植え方

着生ランは根が新鮮な空気を好むので、普通ミズゴケで排水をよくして植える。鉢は乾きやすい、やや小さめな素焼鉢を用いる。地生ランは、アズキからダイズ大の軽石や山砂を用い、やや堅い鉢に植える。腐葉土や樹皮チップを加えてもよい。

 植え替えは生育開始直前がよく、普通3月中旬から5月上旬に行う。しかし、夏期の高温に弱いミルトニア、オドントグロッサムマスデバリアなどは涼しくなり始める9月中・下旬に行うのが無難である。一般に植え替えは2~3年に1回行う。また、着生種はヘゴ板につけてもよい。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

肥料

ランは1年間の生育量の少ない植物で、多量の肥料を必要としない。したがって与えすぎないようにする。施肥は生育期の4~6月に1~2回、少量の油かすと骨粉を混合したものを置く。また、薄く溶かした液肥を春と秋に月2~3回与えてもよい。普通、夏と冬には施肥は行わない。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

温度

ラン栽培では冬の温度管理がもっとも重要である。熱帯から亜熱帯原産の、一般に洋ランとよばれる仲間は、冬期間、温室やワーディアン・ケースなどの加温設備のある室内に収容保護する必要がある。生育適温はそれぞれの種によって異なるので、それにあった管理が必要となる。冬期の最低温度はおよそ低温、中温、高温性の3段階に分けて管理することができる。ここに示す温度は冬期この程度の温度を保てば枯れないで越冬できる目安で、よりよく生育させるにはさらに2~3℃高いことが望ましい。以下に各段階のおもな種類を示す。

(1)低温性(最低7~8℃)はシンビジウム、デンドロビウム(ノビル系)、レリア、ソフロニティス、ツニア、ファイウス、ディサなど。

(2)中温性(最低10~13℃)はカトレア、オンシジウム、パフィオペジラム、リカステなど多くの種類がある。

(3)高温性(最低15℃以上)はバンダ、ファレノプシス、デンドロビウム(ファレノプシス系)、エリデス、レナンセラ、アングレカムなど、熱帯低地産の種類がある。

 一方、熱帯高地産のオドントグロッサム、コクリオーダ、ミルトニアやマスデバリアなどは日中の最高が30℃以下、25~26℃に保つのが好ましい。日本の低地では冷房するか、よほど涼しく、通風のよい場所が必要である。なお、これらの仲間は冬期は最低10~13℃に保つ。冬期に十分な温度のない場合は、できるだけ乾かしぎみに保つ。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

日照

デンドロビウム、シンビジウム、レリアの岩生種(ロックレリア)、バンダのテレス系(棒状葉の種)、レナンセラなどは強光でよく育つが、夏の間だけ30%程度遮光し、葉焼けを防ぐ。他方、ファレノプシス、パフィオペジラム、アネクトキルスなどは年じゅう半日陰で管理する。その他の多くのランは春・秋30%、夏50~60%の遮光下で管理する。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

灌水

ランは根がつねに湿った状態は好ましくない。日常の水やりは、植え込み材料の表面が乾いてから灌水(かんすい)することを原則とし、過湿にしてはいけない。ただし、春から秋の生育期には多少多めに与え、冬の低温期や休眠期には乾きぎみに保つ。

 灌水するときは鉢底から十分流れ出るまでたっぷり与える。これは単に水の補給だけでなく、鉢内の古い空気を新鮮な空気と交換し、余分な肥料などを洗い流すためでもある。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

湿度

自生地では定期的な降雨や霧の発生によって空中湿度が高く保たれている。栽培にあたっては湿度を70~80%に保つよう心がけ、乾きやすいときは葉水(はみず)を与えるか、株の周辺、通路などに打ち水をして湿度を高める。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

通風

ランは新鮮な空気のもとでよく育つ。夏期はとくに通風をよくし、葉面温度を下げ、涼しくする。また冬期閉め切った室内では適当に換気を行い、新鮮な空気と入れ替え、室内の空気を攪拌(かくはん)して温度の平均化を図ることも必要である。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

病虫害

ウイルス病は致命的である。感染すると生育が悪く、奇形を生じたり、黄色斑(はん)のモザイクを生じ、組織を壊死(えし)させる。感染すると治すことができず、他の株への伝染源となるので焼却処分する以外方法がない。ウイルスは、アブラムシなどの吸汁害虫や植え替え時の器具、古い鉢や病株を扱った手などから伝染する。予防として、害虫の防除、器具の消毒、植え替えには一鉢ごとに手を洗うなどが必要である。また、鋏(はさみ)、ナイフなどの器具は炎で焼くか、第三リン酸ナトリウムの3%溶液に浸(つ)けて消毒するとよい。

 黒斑病、炭疽(たんそ)病などカビによる病気は「ダイセン」水和剤や「オーソサイド」水和剤、「ベンレート」水和剤などの殺菌剤を散布する。軟腐病のような細菌性の病気はボルドー液か「ヒトマイシン」や「アグレプト」などの抗生物質製剤を用いる。薬品は指定の濃度で用い、罹病(りびょう)してからでは遅いので、春から秋の間は月1、2回定期的に散布して予防に努める。

 アブラムシやカイガラムシなどの害虫には「オルトラン」水和剤や「スミチオン」乳剤を、ハダニには「ケルセン」乳剤などを散布する。ナメクジは殺ナメクジ剤を夕方打ち水したあと、鉢周辺に置いて誘殺するか、夜間8~10時に見回って捕殺する。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

繁殖

複茎性のカトレア、シンビジウム、デンドロビウムなどは株分けする。花をつけるためにはバルブを3、4個ずつに分け、あまり小分けはしない。その際、葉のないバッグバルブも基部に芽があれば、根をミズゴケで包んで植えておけば苗が得られる。デンドロビウム(ノビル系)やエピデンドルム(ラジカンス系)、ツニアなどは茎を2、3節に切ってミズゴケに挿しておけば苗が得られる。また、これらはときに茎の上部の節より高芽が出ることがあり、根が数ミリメートル伸びれば切り離して植える。

 ラン科植物は、種間はもちろん、近縁な属間においても交雑が可能である。属間交雑によって、それぞれの属の備える特徴を取り入れて、より美しい実用品種の作出に成功し、園芸化が大きく発展してきている。また近年、多くのランでは人工養分で発芽させ(無菌培養)、多量の苗を得ることができるようになった。ほかに、優れた個体を急速に増殖するためのメリクロン(成長点培養)も行われている。新しく作出された交雑種はイギリス王立園芸協会に登録されており、すべての交雑種の系統を原種までさかのぼって知ることができる。

[唐澤耕司 2019年5月21日]

文化史

花が観賞栽培される近代以前、ランは実用品であった。古代のギリシアではオルキスOrchis属、オフリスOphrys属の球根を催淫(さいいん)剤として食用した(ディオスコリデス『薬物誌』De materia medica)。Orchisはギリシア語の睾丸(こうがん)の意味で、薬効は球根が似ることからの連想である。中国ではセッコク(石斛)類が古代から薬用にされ、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』に載る。日本ではセッコクは古くは少彦薬根(すくなひこのくすね)あるいは石薬(いわぐすり)とよばれ、石斛の名は『出雲国風土記(いずものくにふどき)』に神門(かむど)郡の産物としてあがる。現代もセッコクは漢方に使われ、中国雲南省の黒節章Dendrobium candidumWall. ex Lindl. からつくる龍頭鳳尾(りゅうとうほうび)は中国でもっとも高価な薬用飲料の一つである。台湾のツォウ族はキバナセッコクを神聖視し、首狩りの儀式に使った。ニューギニアではセッコク属の茎から生活用品を編む繊維をとる。バニラはスペインの侵入前から、メキシコなどで香料にされていた。

 古代中国の「蘭」の字はフジバカマをさし、現在の蘭と置き換わるのは宋(960~1279)以降で、唐代(618~907)にはまだ混乱がある。宋の趙時庚(ちょうじこう)の『金漳蘭譜(きんしょうらんぷ)』(1233)では21の品種、王貴学の『王子蘭譜』(1247)では約50の品種が扱われ、特徴の解説と栽培法が記述された。南宋で東洋ランの栽培が流行したとみられる。中国ではランは香りが好まれ、その香りは「香祖」「国香」「天下第一香」と称される。

 日本のラン栽培は江戸時代にフラウン、セッコク、ミヤマウズラが流行し、後2種は天保(てんぽう)時代(1830~1844)にブームが頂点に達し、セッコクは55品種(秋尾亭主人『長年草』)、ミヤマウズラは111品種(帆兮亭(はんけいてい)『錦蘭品さだめ』)の名が記載されている。

 欧米のラン栽培は中国、日本よりはるかに遅く、19世紀前半にブラジルから、カトレア属、中米からレリア属などの美しいランが相次いでイギリスやフランスに導入され、関心を集めた。1835年ごろイギリスで着生ラン栽培の技術が確立され、ランブームがおこり、ルクセンブルクのジャン・リンデンJean Jules Linden(1817―1898)は1835年から10年かけて中南米を探索し、1200種近くのランをもたらし、上流階級のランブームに拍車をかけた。ランの人工交配は1852年イギリスでシペリペジウム属の種間で最初に成功した。

 日本の洋ラン栽培は第二次世界大戦後の室内暖房の普及とメリクロンの栽培技術によって大衆化した。1962年(昭和37)日本洋ラン市場が開設され、昭和40年代のメリクロンの採用で大量生産が確立し、近年は東洋ランをはるかにしのぐ勢いで栽培が普及している。

 ランを国花とするのはグアテマラ、コスタリカ、パナマ、ベネズエラ、コロンビア、ブラジル、エクアドル、シンガポールなどの国々である。

[湯浅浩史 2019年5月21日]



ラン(フランス)
らん
Laon

フランス北東部、エーヌ県の県都。パリ北東134キロメートル、標高181メートルの残丘上に位置する。人口2万6265(1999)。残丘の戦略的価値により、ローマ人が要塞(ようさい)化し、ラウドゥヌムLaudunumとよんだ。5世紀に司教座となり、中世にはカロリング朝の中心都市となった。百年戦争(1337~1453)中にはしばしば支配者が交代した。歴史的建造物の豊富な美しい町で、旧市街を囲む城壁、一部13世紀の司教館、パリなど各地寺院のモデルとなった12~13世紀ゴシック様式のノートル・ダム大聖堂などが残る。金属加工、暖房器具などの産業がある。

[大嶽幸彦]

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百科事典マイペディア 「ラン」の意味・わかりやすい解説

ラン(蘭)【ラン】

ラン科植物の総称。熱帯の雲霧林地帯に多く分布し,世界に約700属2万5000種が知られる。多年生で地生,または樹上などに着生。根は太く蘭菌が共生する。根茎,偽球茎をもつものもある。葉は単葉で互生し,基部は鞘となり茎を包む。葉緑素のない腐生性のものでは葉が鱗片状に退化することが多い。花は両性で,子房下位,左右相称で萼片は3枚。花弁は3枚であるが,うち1枚は唇弁(しんべん)となり,ときに距(きょ)がある。開花のときに上下転倒して,唇弁が下側になるものが大多数。おしべ,めしべは合着して蕊(ずい)柱をつくり,おしべは6本のうち1〜2本のみが発達,他は退化する。果実はふつう【さく】果(さくか)で,3〜6片に裂開,種子は多数,微細で軽くてよく風に飛ぶ。ラン科植物は受粉に際して特定の動物(とくに昆虫)と密なかかわりを持つことが多く,共進化の好例とされている。日本には約73属約220種がある。シュンラン,カンランなどは園芸上では東洋ランとされ,常緑の長い葉があって,観賞用に珍重されるものが多い。エビネサギソウクマガイソウシランなどの地生ランは鉢植や地植にして観賞され,フウランナゴランセッコクなどの着生ランは洋ランと同様に取り扱われる。カトレアシンビジウムパフィオペディルムなどは熱帯産の洋ランで花が美しく温室で栽培され,ミズゴケ,オスマンダ,ヘゴの根などを培地として鉢,ヘゴ板などに植えられる。ランの中にはバニラ,ツチアケビ,オニノヤガラなど香料・薬用になるものもある。
→関連項目熱帯植物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラン」の意味・わかりやすい解説

ラン
Lunn,Sir Arnold

[生]1888.4.18. インド,マドラス
[没]1974.6.2. イギリス,ロンドン
イギリスのアルペンスキー選手で,スキーの国際的権威。フルネーム Arnold Henry Moore Lunn。 1922年,コースに2本1組で立つ旗門を設置し,その間を滑らなければならないという回転 (スラローム) 競技を考案した。少年時代,父親からスキーの手ほどきを受ける。オックスフォード大学入学後,オックスフォード・スキークラブを設立。続いてイギリス・スキークラブ (1903) ,アルペンスキークラブ (1908) ,カンダハー・スキークラブ (1924) を創設。 1928年,カンダハーレースを始めた。 1930年国際スキー連盟 FISを説得し,滑降 (ダウンヒル) と回転をスキー競技として認定させた。 1936年ガルミッシュパルテンキルヘン・オリンピック冬季競技大会の運営支援を行なう。 FIS役員 (1934~49) ,国際滑降競技委員会会長 (1946~49) を歴任するとともに,1919年から 50年以上にわたりイギリス・スキー年鑑の編集に携わった。スキー,登山,哲学,キリスト教関係の著書多数。 1952年には,イギリス・スキー界への貢献およびイギリス・スイス両国の親善に尽くした実績から,ナイトの爵位を授与された。

ラン(蘭)
ラン
orchid

ラン科植物の総称。単子葉植物のなかで最も進化した一群で,種類数も多くキク科,マメ科に次ぐ大きなグループである。全世界に約 500属,1万 7000種が知られている。熱帯アジア特にマレーシアは最も豊富で約 5000種,日本には約 70属,約 200種が知られている。すべて多年草で,地上または樹幹や岩壁に着生し,少数のものは葉緑素を失って腐生や死物寄生をする。茎は直立またはつる性,あるいは球茎や根茎となることもある。根は普通肥厚し,着生ランでは吸湿に適した組織が発達している。葉は単葉で,多くは互生し基部は茎を抱く。多肉となったりまたは退化して鱗片状となることもある。花は左右相称で両性,子房は下位,この子房の部分が普通 180度ねじれ,花は上下転倒している。外花被,内花被はともに3枚,内花被のうち正面の1片は普通特異な形と色彩をもち唇弁と呼ばれ,後方に距を伸ばすこともある。おしべとめしべは合生して特有のずい柱をつくり,おしべは1本,まれに2本だけ完全で他は退化する。このずい柱を構成するおしべが1本だけのものをラン亜科,2本のものをアツモリソウ亜科に分類する。大部分の種は前者に属し,後者に入るのは4属数十種である。花後 蒴果を結び,3~6片に裂け微小な種子を出す。花の特異な形,色彩,香りなどのため多くのものが観賞用に栽培されている。園芸上はカンラン,シュンラン,シランなどの東洋ランと,カトレヤなど主として明治以後に輸入された洋ラン (熱帯ラン) とに大別される。

ラン
Laon

フランス北部,エーヌ県の県都。パリの北東約 130km,パリ盆地の北東部にある商業都市。旧市は周囲より 100mほど高い丘の上にあり,12~13世紀に建立された有名な大聖堂などが遠方から望まれる。軍事的に重要な位置にあり,古代ローマ人により要塞化された。中世を通じてこの地方の宗教,文化の中心で,カロリング朝時代には一時その首都でもあった。新市は丘のふもとにあり,製糖,印刷,プラスチック工業などが盛ん。工業の地方分散政策によりパリから移ってきた工場も多い。人口2万 8670 (1990) 。

ラン
Ran

北欧神話の女神。大洋の神エギルの妻 (娘) 。しけを起しては,船を手で捕え海中に引込み,網で溺死者を捕獲して海底にある館に客として迎える。無慈悲な女神として恐れられたが,客となった溺死者は美食を供せられ,厚遇されると信じられた。

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岩石学辞典 「ラン」の解説

ラン

岩脈状あるいは岩床状の不規則な形をした鉱体で,普通は層理,節理,破砕などの構造的な状態の後に続くものである[Lindgren : 1928].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「ラン」の解説

ラン

プログラムを実行すること。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

DBM用語辞典 「ラン」の解説

ラン【LAN】

LAN参照。

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世界大百科事典(旧版)内のランの言及

【ラン大聖堂】より

…フランス北部,ランの大聖堂。正称はノートル・ダムNotre‐Dame。…

※「ラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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