惜しい(読み)オシイ

デジタル大辞泉 「惜しい」の意味・読み・例文・類語

おし・い〔をしい〕【惜しい】

[形][文]を・し[シク]
大切なものを失いたくない。むだにすることが忍びない。もったいない。「―・い人物を失った」「時間が―・い」「名残が―・い」
もう少しのところで実現されずに終わって心残りである。残念だ。「―・くも受賞を逃す」「最後一筆の足りないのが―・い」「―・い試合を失う」
いとしい。かわいい。
「汝、命と婦といづれかはなはだ―・しき」〈欽明紀〉
[補説]3は「愛し」を当てることが多い。
[派生]おしがる[動ラ五]おしげ[形動]おしさ[名]
[類語]もったいないあたら残念残り惜しい名残惜しい残り多い口惜しい惜しむ心残り物惜しみ未練愛惜痛惜去り難い後ろ髪未練がましい後を引くしつこい執念深いねちっこいねついねちねち悪あがきうじうじうだうだいじいじぐじぐじもじもじ因循断腸の思い負け惜しみこだわる尾を引く執拗恋恋れんれん惜しげ思い残すたゆたう思い迷う忍びない死蔵退蔵倹約無駄遣い浪費濫費散財空費徒費冗費宝の持ち腐れ不経済無にする無になる無に帰する水泡に帰する水の泡捨て金湯水のように使う髀肉ひにくたん

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「惜しい」の意味・読み・例文・類語

おし・いをしい【惜・愛】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]〘 形容詞シク活用 〙
  2. ( 愛 ) いつも自分のものにしておきたいほどかわいい。いとしい。ほしい。
    1. [初出の実例]「汝命(いのち)と婦と孰(いづれ)か尤(はなはた)(ヲシキ)」(出典:日本書紀(720)欽明二三年七月(寛文版訓))
  3. 事物を愛するあまりに手放しにくい。心をひかれて手ばなしにくい。思いきって捨て難く思う。
    1. [初出の実例]「磯の浦に常よひ来住む鴛鴦(おしどり)の乎之伎(ヲシキ)あが身は君がまにまに」(出典:万葉集(8C後)二〇・四五〇五)
    2. 「たがひに命をおししとせず」(出典:浄瑠璃・三社託宣由来(1678))
  4. 思うようにならなかったり、物事のねうちが生かされなかったりするのを残念に思う。心残りである。
    1. [初出の実例]「逢はずして行かば乎思家(ヲシケ)む麻久良我(まくらが)の許賀(こが)漕ぐ船に君も逢はぬかも」(出典:万葉集(8C後)一四・三五五八)
    2. 「お初を呼に遣ればよかったのう。惜(ヲシ)いことをした」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)三)

惜しいの語誌

( 1 )自然の推移や時間の経過により、変化したり消えたりしていく対象への、愛着の思いを表わす。
( 2 )類義語「あたらし(惜)」は、対象を立派ですばらしいものと評価する客観性を持ち、その評価にふさわしい扱いがされないことに不満をいだき訴え嘆く気持がこめられる。

惜しいの派生語

おし‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙

惜しいの派生語

おし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

惜しいの派生語

おし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

あったらし・い【惜】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]あったら〘 形容詞シク活用 〙 「あたらし(惜)」の変化した語。〔温故知新書(1484)〕
    1. [初出の実例]「荘公の用られぬはあったらしい事哉」(出典:両足院本毛詩抄(1539)三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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