デジタル大辞泉
「寸」の意味・読み・例文・類語
き【▽寸】
[接尾]
1 古代における長さの単位の一。後世の曲尺の寸に相当する。
「御歯の長さ一―」〈記・下〉
2 古く、馬の丈を測るのに用いる語。4尺を基準とし、それより1寸、2寸、…8寸と高ければ、それぞれ「ひとき」「ふたき」…「やき」といい、9寸以上は「丈に余る」という。また、3尺9寸は「かえりひとき」という。
「黒栗毛なる馬の、たけ八―あまりばかりなる」〈宇治拾遺・七〉
すん【寸】
1 尺貫法の長さの単位。1寸は1尺の10分の1で、約3.03センチ。
2 長さ。寸法。「寸足らず」
3 ごく短いこと。また、ごく少ないこと。
「彼をふるい此を移せど―の紙だになし」〈蘆花・不如帰〉
4 近世の遊里で、局女郎の揚げ代を表す語。1寸が1匁または100文にあたる。
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すん【寸】
- 〘 名詞 〙
- ① 尺貫法で長さの単位。一尺の十分の一。一分の十倍。一寸は、明治八年(一八七五)以来の、折衷尺を基準とする曲尺(かねじゃく)では、約三・〇三センチメートル。くじら尺では、約三・七九センチメートル。
- [初出の実例]「凡度。十分為レ寸。十寸為レ尺。十尺為レ丈」(出典:令義解(718)雑)
- 「御くしの裾までけさやかに〈略〉いと美しげにて七八寸ばかりぞ余り給へる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
- [その他の文献]〔大戴礼‐主言〕
- ② 長さ。寸法。
- [初出の実例]「顔の持ちやう、貴人の御顔にあてて、そのすんに持つべし」(出典:花鏡(1424)時節当感事)
- 「ああ、あの女形の。━寸(スン)のちょいと短い」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉向島)
- ③ 短いこと。少ないこと。
- [初出の実例]「五郎もかげのごとくすんもはなれずして、もろともにとほりけり」(出典:曾我物語(南北朝頃)四)
- 「父の寸のゆがみをとがめて、三従の戒をわすれたり」(出典:俳諧・父の終焉日記(1801)五月二日)
- [その他の文献]〔老子‐六九章〕
- ④ 手首の下の動脈のうつ箇所のこと。患者の橈骨(とうこつ)動脈の茎状突起部に、医者の反対側の中指の指頭をおき、無名指・食指を添え、そのおのおの当たっている箇所を、関部、寸部、尺部という。
- [初出の実例]「人の両の手に寸(スン)・関・尺の三部」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)二)
- ⑤ 近世、江戸の吉原その他で、局女郎(つぼねじょろう)の揚代を表わすのに用いる語。一寸が一匁(または、百文)にあたる。
- [初出の実例]「位は一を一寸とも月ともいふ、二は二寸とも影ともいふ」(出典:浮世草子・御前義経記(1700)一)
- ⑥ カブ賭博で、数を数えるのに用いる語。数によってつかない場合もあり、地方によって異なる。
- [初出の実例]「四郎三郎はつけ目出入なしとあたまから、三郎左衛門は七すん」(出典:浮世草子・御前義経記(1700)八)
き【寸】
- 〘 接尾語 〙
- ① 古代での長さの単位の一つ。近年の寸(すん)(=約三センチメートル)に相当する。
- [初出の実例]「御歯の長さ一寸(ひとき)、広さ二分(ふたきだ)」(出典:古事記(712)下)
- ② 昔、馬の丈(たけ)を測るのに用いた語。馬は、四尺を標準として馬長(うまたけ)といい、それ以上の場合、一寸(ひとき)、二寸(ふたき)、七寸(ななき)、八寸(やき)などといった。九寸(一説に八寸)以上を、「丈(たけ)に余る」という。三尺九寸は「かえり一寸」という。一説に四寸から七寸までに限っていったという。
- [初出の実例]「むまのたけ八きばかりなる一つ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
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普及版 字通
「寸」の読み・字形・画数・意味
寸
常用漢字 3画
[字音] スン・ソン
[字訓] わずか
[説文解字]
[字形] 会意
(又)(ゆう)+一。は手指の形、指一本の幅を寸という。拇指と中指をひろげて、手首をそえた形は尺。寸はその十分の一にあたる。〔大戴礼、主言〕に「指を布きて寸を知り、手を布きて尺を知る」という。〔説文〕三下に「十なり。人の手、一寸を卻(しりぞ)くところの動、之れを寸口と謂ふ」とするが、寸口は脈の大候の存するところで、医術上の用語。尺字条八下に「の制、寸・尺・咫(し)・・常・仞の度量は、皆人の體を以て法と爲す」とあり、尋は左右の手を広げた長さ、常は尋を折り返した織物の長さである。わが国では手指四本をならべた長さは「つか」、「ひろ」は左右の手を伸ばした長さ。尋とひろは同じ長さであるから尋を「ひろ」と訓するが、寸にあたる国語はない。
[訓義]
1. すん。
2. わずか、すこし。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕寸 キダキダ・ツダツダ 〔立〕寸 ワヅカ・ツダツダ・ミジカシ
[部首]
〔説文〕に寺・將(将)・・專(専)・・(導)の六字を属し、〔玉〕に射・尉など三字を加える。字の初形からいえば、みなに従う字で、寸尺の寸の意をもつものはない。字書の寸部の字も同じ。ただ(らつ)は手中に物のある形の字である。
[声系]
〔説文〕にを寸声とし、「切る」と訓する。村の初文は邨、もと屯(とん)声の字である。忖は〔新附〕十下にみえ、忖度(そんたく)することをいう。
[熟語]
寸意▶・寸陰▶・寸暇▶・寸罅▶・寸函▶・寸柬▶・寸閑▶・寸簡▶・寸願▶・寸▶・寸許▶・寸景▶・寸隙▶・寸功▶・寸口▶・寸刻▶・寸札▶・寸私▶・寸紙▶・寸時▶・寸尺▶・寸旬▶・寸書▶・寸壌▶・寸心▶・寸刃▶・寸寸▶・寸誠▶・寸節▶・寸截▶・寸絶▶・寸牋▶・寸善▶・寸▶・寸丹▶・寸断▶・寸地▶・寸衷▶・寸楮▶・寸腸▶・寸鉄▶・寸土▶・寸馬▶・寸府▶・寸分▶・寸兵▶・寸歩▶・寸補▶・寸眸▶・寸報▶・寸脈▶・寸廩▶・寸縷▶・寸裂▶・寸禄▶
[下接語]
一寸・運寸・盈寸・環寸・径寸・原寸・高寸・裁寸・尺寸・積寸・丹寸・長寸・膚寸・分寸・方寸・寸
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寸
すん
尺貫法の長さの単位。尺の10分の1をいう。現行の曲尺(かねじゃく)の1寸は33分の1メートルである。中国古代から用いられてきたが、時代により尺の長さに変化があったため、寸も一定していなかった。『大戴礼(だたいれい)』に「布指知寸」とあり、この「指」は親指をさし、「寸」は親指を当てたくらいの長さとしている。このことから、尺とは独立に発生したものと思われる。
[小泉袈裟勝]
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寸 (すん)
尺貫法の長さの単位。古代中国から,また日本でも大宝令以前から用いられてきた。1/10尺に等しく,1891年制定の度量衡法では1/33m,すなわち約3.03cmで,分量単位は1/10寸の厘,以下,十進法による毛,糸である。また鯨尺1寸は鯨尺1/10尺に等しく,約3.8mmで,分量単位は1/10寸の鯨尺分である。
執筆者:三宅 史
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寸【すん】
尺貫法の長さの単位。1寸=1/10尺=100/33cm≒3.0303cm。→尺
→関連項目文
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すん【寸】
長さの単位。1寸は1尺の10分の1。約3.03cm。中国では古代から、日本でも8世紀から使われた。1寸の長さは時代によって異なり、もともとは、親指の幅にちなんだ長さだったとされている。
出典 講談社単位名がわかる辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の寸の言及
【尺】より
…ここで実効上というのは,法文上は尺を長さの単位の基本としていることによる。したがって1尺は約30.303cmであり,分量単位は1/10尺の寸,以下十進法による分(ぶ),厘,毛である。倍量単位は寸法用と距離・間隔用に分かれ,寸法用の倍量単位は10尺に等しい丈,距離用の倍量単位は6尺の間(けん),60間の町,36町の里である。…
【度量衡】より
…
[起源]
度量衡の起源は大別して次の五つに含まれるであろう。(イ)腕や足の長さ,腰まわりなど,人体の諸部分の寸法,(ロ)穀粒の長さや質量など,自然物のサイズ,(ハ)たる1杯の体積など,道具のサイズ,(ニ)1日に歩くことのできる道のり,半日で耕すことのできる農地の面積など,人や家畜の能力,(ホ)特定の周波数の音を発する笛の長さなど,物理法則。いうまでもなく現今の精密測定の基準とする諸単位は,もっぱら(ホ)に着目する方法で厳密に定義されるが,史上の度量衡の名称や実体を理解するためには,(イ)~(ホ)にも注意する必要がある。…
※「寸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」