すん【寸】
〘名〙
①
尺貫法で長さの
単位。一尺の十分の一。一分の十倍。
一寸は、明治八年(
一八七五)以来の、
折衷尺を
基準とする
曲尺(かねじゃく)では、約三・〇三センチメートル。くじら尺では、約三・七九センチメートル。
※令義解(718)雑「凡度。十分為レ寸。十寸為レ尺。十尺為レ丈」
※
源氏(1001‐14頃)若菜上「御くしの裾までけさやかに〈略〉いと美しげにて七
八寸ばかりぞ余り給へる」 〔
大戴礼‐主言〕
※花鏡(1424)時節当感事「顔の持ちやう、貴人の御顔にあてて、そのすんに持つべし」
③ 短いこと。少ないこと。
※
曾我物語(南北朝頃)四「
五郎も
かげのごとくすんもはなれずして、もろともにとほりけり」
※俳諧・父の終焉日記(1801)五月二日「父の寸のゆがみをとがめて、三従の戒をわすれたり」 〔老子‐六九章〕
④
手首の下の
動脈のうつ箇所のこと。患者の
橈骨(とうこつ)動脈の茎状突起部に、医者の反対側の
中指の指頭をおき、無名指・
食指を添え、そのおのおの当たっている箇所を、関部、寸部、尺部という。
⑤
近世、
江戸の吉原その他で、
局女郎(つぼねじょろう)の
揚代を表わすのに用いる語。一寸が
一匁(または、百文)にあたる。
※
浮世草子・
御前義経記(1700)一「位は一を一寸とも月ともいふ、二は二寸とも影ともいふ」
⑥ カブ賭博で、数を数えるのに用いる語。数によってつかない場合もあり、地方によって異なる。
※浮世草子・御前義経記(1700)八「四郎三郎はつけ目出入なしとあたまから、三郎左衛門は七すん」
き【寸】
〘接尾〙
① 古代での長さの単位の一つ。近年の寸(すん)(=約三センチメートル)に相当する。
※古事記(712)下「御歯の長さ一寸(ひとき)、広さ二分(ふたきだ)」
② 昔、馬の丈(たけ)を測るのに用いた語。馬は、四尺を標準として馬長(うまたけ)といい、それ以上の場合、一寸(ひとき)、二寸(ふたき)、七寸(ななき)、八寸(やき)などといった。九寸(一説に八寸)以上を、「丈(たけ)に余る」という。三尺九寸は「かえり一寸」という。一説に四寸から七寸までに限っていったという。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「むまのたけ八きばかりなる一つ」
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デジタル大辞泉
「寸」の意味・読み・例文・類語
き【▽寸】
[接尾]
1 古代における長さの単位の一。後世の曲尺の寸に相当する。
「御歯の長さ一―」〈記・下〉
2 古く、馬の丈を測るのに用いる語。4尺を基準とし、それより1寸、2寸、…8寸と高ければ、それぞれ「ひとき」「ふたき」…「やき」といい、9寸以上は「丈に余る」という。また、3尺9寸は「かえりひとき」という。
「黒栗毛なる馬の、たけ八―あまりばかりなる」〈宇治拾遺・七〉
すん【寸】
1 尺貫法の長さの単位。1寸は1尺の10分の1で、約3.03センチ。
2 長さ。寸法。「寸足らず」
3 ごく短いこと。また、ごく少ないこと。
「彼をふるい此を移せど―の紙だになし」〈蘆花・不如帰〉
4 近世の遊里で、局女郎の揚げ代を表す語。1寸が1匁または100文にあたる。
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寸
すん
尺貫法の長さの単位。尺の10分の1をいう。現行の曲尺(かねじゃく)の1寸は33分の1メートルである。中国古代から用いられてきたが、時代により尺の長さに変化があったため、寸も一定していなかった。『大戴礼(だたいれい)』に「布指知寸」とあり、この「指」は親指をさし、「寸」は親指を当てたくらいの長さとしている。このことから、尺とは独立に発生したものと思われる。
[小泉袈裟勝]
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寸【すん】
尺貫法の長さの単位。1寸=1/10尺=100/33cm≒3.0303cm。→尺
→関連項目文
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すん【寸】
尺貫法の長さの単位。古代中国から,また日本でも大宝令以前から用いられてきた。1/10尺に等しく,1891年制定の度量衡法では1/33m,すなわち約3.03cmで,分量単位は1/10寸の厘,以下,十進法による毛,糸である。また鯨尺1寸は鯨尺1/10尺に等しく,約3.8mmで,分量単位は1/10寸の鯨尺分である。【三宅 史】
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すん【寸】
長さの単位。1寸は1尺の10分の1。約3.03cm。中国では古代から、日本でも8世紀から使われた。1寸の長さは時代によって異なり、もともとは、親指の幅にちなんだ長さだったとされている。
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世界大百科事典内の寸の言及
【尺】より
…ここで実効上というのは,法文上は尺を長さの単位の基本としていることによる。したがって1尺は約30.303cmであり,分量単位は1/10尺の寸,以下十進法による分(ぶ),厘,毛である。倍量単位は寸法用と距離・間隔用に分かれ,寸法用の倍量単位は10尺に等しい丈,距離用の倍量単位は6尺の間(けん),60間の町,36町の里である。…
【度量衡】より
…
[起源]
度量衡の起源は大別して次の五つに含まれるであろう。(イ)腕や足の長さ,腰まわりなど,人体の諸部分の寸法,(ロ)穀粒の長さや質量など,自然物のサイズ,(ハ)たる1杯の体積など,道具のサイズ,(ニ)1日に歩くことのできる道のり,半日で耕すことのできる農地の面積など,人や家畜の能力,(ホ)特定の周波数の音を発する笛の長さなど,物理法則。いうまでもなく現今の精密測定の基準とする諸単位は,もっぱら(ホ)に着目する方法で厳密に定義されるが,史上の度量衡の名称や実体を理解するためには,(イ)~(ホ)にも注意する必要がある。…
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