1 時間的にさかのぼった過去の一時期・一時点。時間の隔たりの多少は問わずに用いるが、多く、遠い過去をいう。「昔の話」「昔のままの姿」「とっくの昔」
2 過去の10年を1期としてよぶ表し方。「十年ひと昔」「ひと昔前の事」
3 故人。
「五月二日は、―の母の忌日なり」〈右京大夫集・詞書〉
4 前世。
「さすが―の行ひの力に、関白の御子にてもおはするなるべし」〈今鏡・四〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
〘名〙
① 時間的に、現在からさかのぼっての過去の一時期、一時点。時間の隔たりの多少にかかわらず用いる。以前。かつて。
※万葉(8C後)一五・三六九五「牟可之(ムカシ)より云ひけることの韓国の辛(から)くもここに別れするかも」
※伊勢物語(10C前)一「むかし、をとこ、うひかうぶりして、平城の京、春日の里にしるよしして、狩に往にけり」
② (「ひとむかし」「ふたむかし」などの形で) 一〇年、または、一二年を単位として数えた過去をいう。
③ 特に、ある人が生きていた時点。生前。在世中。
※和泉式部集(11C中)下「この世にはいかがさだめむおのづからむかしをとはん人にとへかし」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)四「死失(しにうせ)しとは知ながら、むかしの形におそれて、かるめなしに掛て済(すま)しける」
④ 転じて、かつて生きていた人。今は亡き人。古人。故人。
※古今(905‐914)哀傷・八五七・詞書「かのみこすみける帳のかたびらのひもに、ふみをゆひつけたりけるをとりてみれば、むかしのてにてこのうたをなんかきつけたりける」
⑤ 特に、この世に生まれて来る前の世。前世。
※今鏡(1170)四「さすが昔の行ひの力に、関白の子にてもおはするなるべし」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報