(読み)ホトホト

デジタル大辞泉 「殆」の意味・読み・例文・類語

ほと‐ほと【×殆/幾】

[副]
困り果てた、また、うんざりした気持ちを表す語。まったく。つくづく。「弟には―手を焼いている」
ほとんど。
「或いは稗史体と―相類似するものあり」〈逍遥小説神髄
すんでのことで。あやうく。
「帰りる人来たれりと言ひしかば―死にき君かと思ひて」〈・三七七二〉
[類語]本当にまことに実にしんまったくまさにまさしくひとえにせつげにすっかりつくづくうんざり全く以てなんとも実以てげんなりこりごり食傷へきえき閉口まっぴらい加減果てしない限りない本に現に真実真個真正正真しょうしん事実実際紛れもない他ならない有りのまま現実そのものしん以てかみ掛けてほんま正真正銘いかにも

たい【殆】[漢字項目]

人名用漢字] [音]タイ(漢) [訓]ほとんど
あぶない。あやうい。「危殆
[名のり]ちか

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「殆」の意味・読み・例文・類語

ほと‐ほと【殆・幾】

  1. 〘 副詞 〙 ( 古く「ほとほど」「ほとおと」とも。「に」または「と」を伴って用いることもある )
  2. すっかりそうなるわけではないが、事態が進んでそれに非常に近い状況になるさまを表わす語。もう少しのところで。すんでのことに。あやうく(…するところだ)。ほとんど。
    1. [初出の実例]「幾(ホトほと)に人を失ひつる哉(かな)」(出典日本書紀(720)雄略一三年九月(前田本訓))
  3. まったくというわけではないが、比率的に見て大体そういう状態であるさまを表わす語。大方。ほとんど。
    1. [初出の実例]「法文の事をいふに、智海ほとほと云まはされけり」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)四)
  4. 切実であるさまを表わす語。苦しい事態や悪い状況が続いて、困惑したり、うんざりしたりする場合にいうことが多い。ほんとうに。まったく。
    1. [初出の実例]「イヤもう何が不景気で、ほとほと致します」(出典:滑稽本・人間万事虚誕計‐前(1813)喜怒哀楽虚誕之略図)

殆の語誌

( 1 )辺や側を示す「ほとり」の語基「ほと」の畳語で、「境界をなす部分(周縁)において」が原義
( 2 )上代には「に」を伴う用法が主であったが、中古以降「に」を伴わない用法が優勢となる。ただし、訓点資料では、平安鎌倉時代を通じて「に」を伴っても用いられる。和文・漢文訓読ともに使用され、訓点資料では、「殆」「幾」字の訓に当てられた。
( 3 )院政期から鎌倉時代にかけて「ほとほど」「ほとをと」となり、室町中期以降「ほとんど」の形をとり、今日に至る。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「殆」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 9画

[字音] タイ
[字訓] あやうい・ほとんど

[説文解字]

[字形] 形声
声符は台(たい)。(がつ)は残骨の形。〔説文四下に「きなり」とあり、危殆の意。危害に殆(ちか)づく意で、また「殆(ほとん)ど」という副詞によむ。(幾)にも「幾(ちか)し」「幾(ほとん)ど」という訓がある。いずれも、古い呪儀を示す字と思われる。

[訓義]
1. あやうい、やぶれる。
2. おそれる、うたがう。
3. つかれる、くずれる。
4. ちかづく、ほとんど、ねがわくは、必ず。
5. 怠と通じ、おこたる。

[古辞書の訓]
名義抄〕殆 アヤフシ・ホトホド・マヌカル・オドロク・オコタル・ヤブル・ヤウヤク・チカシ・アヤマチ・オヨブ 〔字鏡集〕殆 オコタル・ヤブル・ヤウヤク・アヤマチ・オヨブ・マヌカル・アヤフム・ハジメ・ホトホト・アヤフシ・チカチカ・ヒサク・オドロク

[熟語]
殆哉殆危殆其殆庶
[下接語]
往殆・危殆・幾殆・欺殆・困殆・辱殆・疲殆

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android