正に(読み)マサニ

デジタル大辞泉 「正に」の意味・読み・例文・類語

まさ‐に【正に】

[副]
ある事が確かな事実であるさま。まちがいなく。本当に。「事実は正に予言のとおりだった」
実現継続時点を強調するさま。ちょうど。あたかも。「彼は正に車から降りた瞬間凶弾に倒れた」
漢文訓読から起こった用法》
㋐(「当に」とも書く。「まさに…べし」などの形で)当然あることをしなければならないさま。ぜひとも。「学生たる者正に学問に励むべきだ」
㋑(「将に」とも書く)(「まさに…せんとする」などの形で)ある事が実現しそうだという気持ちを表す語。今にも。「飛行機正に飛び立とうとしている」
(主に、あとに反語表現を伴って)どうして…しようか。
「あやしかりつるほどのあやまりを、―人の思ひとがめじや」〈紅葉賀
[類語]本当まことにじつしんまったくまさしくげにひとえにせつげんほとほとすっかりつくづくうんざりまったく以てまったくの所なんとも実以て本に真実真個真正正真しょうしん事実実際紛れもない他ならない有りのまま現実そのものしん以てかみ掛けてほんま正真正銘いかにもげんなりこりごり食傷辟易へきえき閉口まっぴらいい加減果てしない限りないもちろん元より当然もっとも無論当たり前ご無理ごもっと尤も言うまでもない言わずもがな言をたない論をたないも有りなん無理もない無理からぬ自然至当自明歴然歴歴一目瞭然瞭然灼然しゃくぜん明らか明白明明白白定か明快はっきり明瞭画然顕然必至疑いなく然るべきすべからく言うに及ばず言えば更なり言うもおろか論無し推して知るべし隠れもない理の当然必然妥当自明の理それもそのはずもっともっとも至極もっとも千万うべなるかなむべなるかな合点唯唯諾諾首肯うべなう賛成賛同果たして果たせるかな更にも言わず至極のみならず言わずと知れた紛れもない違いないくっきり諸手もろてを挙げる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「正に」の意味・読み・例文・類語

まさ‐に【正に・当に・応に・方に・将に】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「まさ(正)」から )
  2. 一つの事柄事態が、別の事柄や事態にたしかに合致するという判断を表わす。適切に。ちょうど。
    1. [初出の実例]「答曰一相とは応に(当也)是れ禅定なり」(出典:聖語蔵本成実論天長五年点(828)一八)
  3. ある事態が、誇張やいつわりを含まない正確なものとして成り立つことを強調する気持を表わす。正確に。間違いなく。
    1. [初出の実例]「丈夫の進み先立ち踏める足跡(あと)を見つつ偲はむ直に会ふまでに麻佐爾(マサニ)会ふまでに」(出典:仏足石歌(753頃))
    2. 「時正(マサ)に午後一時」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉六)
  4. ( 推量・命令などの表現を伴って ) ある事態が確実に成立するようにという、強い希望や命令などを表わす。必ず。きっと。
    1. [初出の実例]「蚕(かひこ)(ひひる)飛び尽きて乃ち爾(マサニ)治ることを得む」(出典:大唐西域記巻十二平安中期点(950頃))
  5. ( 「将無(非)」などの漢文訓読で、否定の反語表現「…なからむや」「…にあらずや」などを伴って ) 断定をためらいながらも一つの判断を表わす。…ではないだろうか(…だろう)。
    1. [初出の実例]「此の林の中に将に猛き獣ありて我を損害すること無けむや」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇)
  6. ( 反語表現を伴って ) ある事態が絶対に成立するはずはないという判断を強調して表わす。どうして…しようか。どうして…できようか。
    1. [初出の実例]「わが丈たち並ぶまで養ひ奉りたるわが子を、何人か迎へきこえん、まさに許さんや」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  7. ( 時間の推移視点をおいて ) 行為がこれから始まる、または、状態がいま継続されているという時点を強調して表わす。ちょうどいま。いま現に。
    1. [初出の実例]「則ち悪逆せる僧及び諸僧並に尼を将(マサニ)罪せんとす」(出典:日本書紀(720)推古三一年四月(岩崎本訓))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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