いわ・せる いはせる【言】
〘他サ下一〙 いは・す 〘他サ下二〙
※枕(10C終)一〇三「それまたときがらがいはせたるなめり。すべて、ただ題からなん、文も歌もかしこきといへば」
※
花鳥余情(1472)一六「たとへば我いひたきことを人をやと
ひていはせて」
※
浄瑠璃・子四天王北国大合戦(1662)一「あの
めんざいのごとく成、こく
はじゃばらを、四天王なぞといわせぬるこそむねんなれ」
※枕(10C終)二八「物につきさはりて、
そよろといはせたる」
④ (「…にいわせれば」「…にいわせると」などの形で) その人の言うところによれば。その人の言うところによると。また、その
見方・考え方・
立場によると。
いわ・す いはす【言】
[1] 〘他サ五(四)〙
① 言い負かす。
※
小早川家文書‐(年未詳)(
室町)一〇月二日・小早川弘景置文写「自然かれら又うらみ候へは、
我等か家もつよくてつよからす候。いわされてなさけなくめされ、御あつかいあるましく候」
② 口に出すようにしむける。言うようにしむける。口をきかせる。いわせる。
※
歌舞伎・仏母摩耶山開帳(1693)一「此の書いた物に
物言はしたら、
此方(こなた)の好からう程に」
③ 制止しないで、言うままにさせる。自由に話させる。いわせる。
※歌舞伎・
傾城金秤目(1792)三番目「つかはないとはいはさぬいはさぬ、是を見ろ」
④ 音を立てるようにする。いわせる。
※
女難(1903)〈
国木田独歩〉三「
老人は〈略〉筮竹
(ぜいちく)をがちゃがちゃいはして見たり」
いや【言】
① (動詞「いやる(言)」の変化したもの) 言う。おっしゃる。
② (動詞「いやる(言)」の命令形「いやれ」の変化したもの)
(イ) 言いなさい。おっしゃい。
※浄瑠璃・心中宵庚申(1722)下「ムム其の涙は、まだ母に恨が有るさうな。有るならいや。聞きませう」
(ロ) (「…といや」の形で用い、「…といやれば」の意) と言えば。
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三「こちゃ日本の女子に成りたい。なぜといや、日本は大きにやはらぐやまとの国といふげな」
ごん【言】
[1] 〘名〙
① 笙(しょう)の笛で、右から数えて一〇番目の管の名。高い上無(かみむ)の音で、左手の親指によって奏するもの。〔楽家録(1690)〕
② 雅楽の琵琶の甲所(かんどころ)の名。第三弦の第三の柱(じ)を押えた時の音。左手の薬指によって奏する。壱越調、平調、太食調、黄鐘調、盤渉調では鳧鐘、双調では下無(しもむ)とする。〔楽家録(1690)〕
[2] 〘接尾〙 ことば、発言を数えるのに用いる。「一言申し上げる」
げん【言】
〘名〙
① ものを言うこと。言ったことば。語句。文句。
※古事談(1212‐15頃)四「爰絶入之宮人、聞二此言一忽蘇生」 〔春秋左伝‐襄公二四年〕
② 字。文字。〔漢書‐東方朔伝〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「言」の意味・読み・例文・類語
こと【言】
《「事」と同語源》
1 口に出して言うこと。言葉。現代では多く複合語として用いられる。「泣き言」「わび言」「片言」「一言多い」
「旅といへば―にそ易き少なくも妹に恋ひつつ術なけなくに」〈万・三七四三〉
2
㋐言葉で表現された事柄・内容。
「たらちねの母の命の―にあらば年の緒長く頼み過ぎむや」〈万・一七七四〉
㋑うわさ。評判。
「心には忘るる日なく思へども人の―こそ繁き君にあれ」〈万・六四七〉
㋒詩歌。特に、和歌。
「この歌は、常にせぬ人の―なり」〈土佐〉
3 体系としての言語。
「唐とこの国とは、―異なるものなれど」〈土佐〉
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世界大百科事典内の言の言及
【国学】より
…日本古代の文学・言語・制度・習俗などを研究し,古代社会に日本文化の固有性をさぐろうとする学問。江戸時代中期に興り,しだいに思想界に勢力を得て幕末に至り,その影響力は明治初期にまで及んだ。…
【ことば(言葉)】より
…〈ことば〉という日本語の原型は〈こと(言)〉であり,〈ことば〉はその派生語として,おそらく7,8世紀のころより用いはじめられたらしい。最古の日本語文献である《古事記》《万葉集》の場合,〈ことば〉は数例しかみられないのに対し,〈こと〉は〈よごと(寿詞)〉〈かたりごと(語り事)〉〈ことあげ(言挙げ)〉〈ことわざ(諺)〉,また〈ことほぐ(言祝ぐ)〉〈ことどう(言問う)〉などの複合語形で多数みいだされるからである。…
【本居宣長】より
…みずからも記しているが,心ひそめて《源氏物語》をくり返し読み味わうという経験にもとづいてその論はなされており,実証性の自覚がそこには存するといっていい。《排蘆小船》は《石上私淑言(いそのかみのささめごと)》(1763成立)の,《紫文要領》は《源氏物語玉の小櫛(たまのおぐし)》(1796成立)の草稿にあたるが,京都遊学を終えた宣長はすでに紛れもなく一家をなす独歩の学者であった。 33歳のとき,旅の途次松坂に泊まった賀茂真淵と初めてあい,やがて入門する。…
【韻律】より
…遠い古代にはこの規則は歌謡や宗教上の典礼などに,なかば無意識に行われていたものと思われるが,文芸上の美がしだいに意識されるようになるにつれて,韻律の規則も精密に意識化され,ついにはその規則性それ自体が一つの美的価値とみなされるに至った。言語学の上からそれぞれまったく違う系統に分類されるどの国語においても,ほとんど例外なしに,韻律は詩歌の形式的規範となっている。韻律法prosodieはいわゆる詩法art poétiqueの大半を占め,極端な場合には,韻律の規則を守りさえすればいかに内容が無味乾燥であろうと,詩として認められるというような,形式的理解が行われたこともある。…
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