デジタル大辞泉
「一端」の意味・読み・例文・類語
いっ‐ぱし【一端】
[名]一人前。人並み。「口だけは一端のことを言う」「やっと一端の板前になった」
[副]
1 一人前に。人並みに。未熟なのに一人前のように振る舞うさまにもいう。「あれで一端専門家のつもりでいる」
2 いったん。ひとまず。
「―町の宿老へ断りたれば」〈浮・懐硯・二〉
ひと‐はし【一端】
1 一方の端。片端。いったん。
2 事柄の一部分。
「言葉の― ―にその時代おくれなことを自白していた」〈佐藤春夫・都会の憂鬱〉
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いっ‐たん【一端】
〘名〙
※本朝文粋(1060頃)一一・紫藤花落鳥関関詩序〈源順〉「纔記二一端一。以招二衆咲一」
※西洋事情(1866‐70)〈
福沢諭吉〉外「自から政治の一端を学び得て」 〔礼記‐祭義〕
※延喜式(927)一「春日神四座祭 祭神料 〈略〉曝(さらし)布一端八尺」
④
神前で
柏手(かしわで)を打つ回数が一回であること。
※内宮
臨時仮殿遷宮記(1496)「後一同拝。手一端」
[語誌]全体と切り離して一部を取り出すことによって、対象として当面するものに
焦点をしぼる「一端」と、朝の時間を指すことによって、一時的なものを表わす「一旦」とは、
原義を異にする。ところが、同一の
事態に対して、当事者からは「一端」のこととして、
他者からは「一旦」のこととして把握された場合、
両用の表記が可能となり、中世頃から「一端」と「一旦」が原義を越えて混同した
用法を生じるようになる。
いっ‐ぱし【一端】
〘副〙
① 事態が臨時、または一度きりであるさま。一旦
(いったん)。ひとまず。〔
日葡辞書(1603‐04)〕
② (まだ未熟なものが、さも一人前のように思い込んで行動する
ありさまをあざけりぎみにいう) まるで一人前のようにふるまうさま。人なみに。えらそうに。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「
猿田彦いっぱし神の気であるき」
③ (②のようなあざけりの
気持を含めないでいう) ひとかど。一人前。相当。かなり。
※
咄本・正直咄大鑑(1687)白「いっはしゐわんと思ふきなれば」
※
われから(1896)〈樋口一葉〉五「何
(ど)うぞ
世間の人に負けぬやうに、一ッぱしの豪
(ゑら)い方に成って下され」
[
補注]
語源については「一旦」を「一端」と書き、それを重箱読みしたものかともいわれるが、未詳。
ひと‐はし【一端】
〘名〙
① 一方のはし。片端。
② 事柄の一部分。
※神皇正統記(1339‐43)中「神代より継体正統のたがはせ給はぬ一はしと申さんがためなり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報