ソウル(読み)そうる

精選版 日本国語大辞典 「ソウル」の意味・読み・例文・類語

ソウル

〘名〙 (soul)
① 魂。こころ。霊魂
※ヱマルソン(1894)〈北村透谷〉二「哲学的に考へ来れば、宇宙は自然と霊心(ソール)との二者より成立り」
② 「ソウルミュージック」の略。
※さらばモスクワ愚連隊(1966)〈五木寛之〉二「私たちバンドは何でも演奏した。ディキシーだ、ソウルだ、モダンだと」

ソウル

(Sə-'ur 首都の意) 大韓民国の首都。朝鮮半島の中央部、漢江下流盆地に位置する。一三九四年、李朝王都となり、漢城と称した。一九一〇年(明治四三)から四五年(昭和二〇)までの日本支配の間は京城と称し、解放後、ソウルと改称した。政治経済・文化・交通中心特別市制がしかれている。昌徳宮南大門などの史跡・名勝に富む。外港に仁川がある。

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デジタル大辞泉 「ソウル」の意味・読み・例文・類語

ソウル

大韓民国の首都。漢江下流にある。漢城府と称して李氏朝鮮500年の首都。1910年韓国併合により朝鮮総督府が置かれ、京城けいじょうと呼ばれた。1945年解放でソウルと改称。翌1946年特別自由市に、1949年特別市になる。景福宮など李朝時代の史跡が多い。人口、行政区1003万(2008)。
[補説]中国語では「首爾」(簡体字で「首尔」)と記す。

ソウル(soul)

《「ソール」とも》
霊魂。魂。心。
ソウルミュージック」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソウル」の意味・わかりやすい解説

ソウル
そうる

韓国(大韓民国)北部にある同国の首都。政治・経済・文化・交通の中心地。ソウルの本来の語意は、朝鮮語で国、都城であったが、一般には「都」という意味で使われる固有語で、漢字表記はなく、固有名詞ではなかった。面積605.5平方キロメートル、人口985万3972(2000)。行政区域は鍾路(しょうろ)区、中区、東大門区、城東区、城北区、道峰区、西大門区、麻浦区、竜山(りゅうざん)区、永登浦区、冠岳区、江南区、江西区、江東区、恩平区、銅雀(どうじゃく)区、九老区、広津区、中浪区、江北区、蘆原区、陽川区、衿川区、端草区、松坡区の25区からなる。

 ソウルの中央を東西に貫流する漢江を境に江北と江南に二分される。江北の北部には北岳山(342.4メートル)、西に仁旺(じんおう)山、東に駱(らく)山、南に南山(232メートル)があり、その中央にソウルの心臓部になっている盆地がある。江南には冠岳山(629メートル)、清渓山、南漢山(495メートル)がある。山地・丘陵の地質は南西部の花崗片麻(かこうへんま)岩と北東部の花崗岩の2地域に区分することができる。年平均気温11.1℃、1月平均気温零下4.9℃、8月平均気温25.4℃、年降水量1259ミリメートルである。

 ソウルは韓国全人口の約21%が住んでおり、また全国経済力の約65%を占める。江南の永登浦工業地区は仁川(じんせん)広域市に連なる京仁工業地帯の一部で、繊維、食品、金属、機械、化学薬品工場が多い。商業中心地には南大門、東大門、清涼里、永登浦市場などがあり、南大門路には韓国銀行をはじめとして各銀行の本店と百貨店、ホテルなどが密集している。世宗路には中央庁、政府総合庁舎、そのほか太平路に官庁、言論機関、会社の本社などがある。

 ソウルは交通の大中心地になっていて、とくに京仁・京釜両高速道路の始発地、鉄道の京仁・京釜・京元・京義・中央各線の起点となっている。地下鉄の1号線は1974年に完成し、ソウル駅から市庁、鍾路などを経て清涼里駅まで連結されている。環状線としての2号線、北西の旧把撥から南東の良才を結ぶ地下鉄3号線、北東の上渓から漢江の南(江南)の舎堂を結ぶ4号線も85年に完成した。西方郊外にある金浦(きんぽ)国際空港は15か国(1999)へ航空路網を形成していたが、2001年3月仁川国際空港が開港。これに伴い金浦空港は国内線専用となった。

 国立ソウル大学校をはじめ、高麗(こうらい)、延世、漢陽、成均館、中央、西江、東国、慶煕(けいき)、梨花(りか)女子、淑明女子などの総合大学のほか単科大学、専門大学がある。国立中央博物館、中央図書館、世宗文化会館、国立劇場、子供の大公園、オリンピック競技場、ソウル運動場、奨忠体育館などの文化施設が多い。

 そのほか、ソウル大学の跡地や新村にも若年層を中心とする小劇場などがつくられ、文化的な地区に変わってきている。

 ソウルは李朝(りちょう)500余年にわたる都であったので史跡が多く残っている。景福宮、昌徳宮、徳寿宮などの王宮、南漢山城、幸州山城、北漢山城などの山城、宗廟(そうびょう)、南大門、東大門などが昔の姿をとどめている。また近代の三・一独立運動で知られるパゴタ公園、清(しん)朝からの独立の決意を示した独立門などもある。

 韓国経済の発展とともに、1970年代から汝牟(ヨイ)島が重点的に開発され、その後、江南の永東地区が開発された。汝牟島には国会議事堂や証券取引所が建設され、江南には高層アパートが林立し、中産階層の大多数が移住するようになり、ソウルの重心は江北から江南に移ってしまった。

 政府はソウル偏重を防ぐため、1988年に開催されたオリンピック以後は、大田、大邱(たいきゅう)、釜山、光州などの都市を重点的に発展させ、ソウルは1000万人の住む首都として、過度の集中がおこらぬよう、整備を進めている。

[張 保 雄]

世界遺産の登録

ソウル市内では、宗廟(1995年)と昌徳宮(1997年)が、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により、ともに世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部]

歴史

ソウルの地は古くは馬韓(ばかん)=百済(くだら)の領土であったが、5世紀なかば過ぎ、高句麗(こうくり)に占領され、南平壌ともよばれた。6世紀なかば以降は新羅(しらぎ)の支配下に置かれ、755年、漢陽郡となった。高麗初期は楊州(ようしゅう)と命名されたが、1067年、南京留守官が置かれ、以後、都市として発展し始め、南京あるいは中京ともよばれ、やがて開城、平壌と並ぶ三京の一つとなった。1308年、漢陽府と改められ、李朝に入ると、1394年、李成桂(りせいけい)がこの地へ遷都、翌年、漢陽を漢城と改名し、景福宮などの宮殿や官庁、周囲18.5キロメートルの城壁と四大門などを築き、城郭都市として一新、李朝初期の人口は約10万人に達した。以後、漢城(京城は俗称)は約500年間、李朝の王都として政治、経済、文化の中心地となった。壬辰倭乱(じんしんわらん)(豊臣(とよとみ)秀吉の朝鮮侵略)の際、大半を焼失したが、やがて復旧され、18世紀末には人口20万人を数える大都市となった。しかし、1910年、韓国併合とともに日本は名称を京城とした。1945年の解放で初めて正式名をソウルと改称、大韓民国の成立とともにその首都となった。北朝鮮も、1972年の改憲で平壌を首都と改めるまで、憲法でソウルを首都と定めていた。ソウルは朝鮮戦争で破壊されたが、1960年代以降、近代的な高層ビルも林立する大都市となっている。

[矢澤康祐]


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百科事典マイペディア 「ソウル」の意味・わかりやすい解説

ソウル

韓国の首都。朝鮮半島中央の西部,京畿道の地域内にある特別市。ソウルは韓国語の固有語で漢字表記はなくハングルのみで表記する。25自治区からなる。旧市街は漢江北岸に位置し,周囲には北漢山など山が多い。韓国の政治・経済・教育・文化・交通の中心で,李朝の旧王宮であった景福宮・中央政庁・国会・各官庁・美術館・図書館・国立劇場・ソウル大学校高麗大学校・延世大学校・梨花女子大学校などがある。市の中心部を南北に横切る漢江の北の江北が古くからの市街地で,第1の繁華街明洞(ミョンドン)もあるが,南の江南が1990年代から新興住宅地,ビジネスセンターとして大規模に開発され,賑わいをみせている。日本統治時代には商工都市として繊維工業を中心に軽工業が発達。現在は商業・サービス業・製造業など,第2次・第3次産業が中心で,食品加工・繊維・化学・印刷工業が多い。ソウル〜仁川間は京仁工業地帯とよばれ,韓国最大の工業地区。京釜・京元・京仁・中央・京春各線の起点。金浦国際空港が国際・国内線の中心であったが,2001年隣接する仁川市の永宗島に仁川国際空港が開港,東アジア随一の国際ハブ空港となっている。三国時代から要害の地として争奪が繰り返されたが,1394年李朝の太祖(李成桂)が開城から遷都し,漢城と改称して以来,500年間李朝の首都であった。日韓併合後,京城と改称され,朝鮮総督府が置かれて統治の中心地となった。解放後,ソウルと改称,従来の日本式町名も一掃し,1946年8月特別市制をしき,京畿道の管轄からはずれた。朝鮮戦争では一時朝鮮民主主義人民共和国軍に占領された。1970年代以後,漢江南岸(江南)地区に住宅団地,バスターミナル,卸売市場,大学など各種施設が建設され,居住人口も急増している。また漢江中洲の汝矣島(ヨイド)が副都心として開発され,国会議事堂,証券取引所なども移転した。1974年―1985年に4号線まで開通した地下鉄網は,電鉄への乗入れと相まってベッドタウン化した衛星都市(城南富川安養果川など)を結んでいる。1988年のオリンピック開催はソウルの変容に拍車をかけた。江北の旧城内にある宗廟昌徳宮(李朝の王宮)は1995年,1997年に世界文化遺産に登録された。市内の中心を流れる清渓川(チョンゲチョン)は暗渠となっていたが,2005年復元工事を完成し,市街中心部の美しい都市景観を実現している。面積605.4km2。人口は1970年の553万人からほぼ倍増し,979万4304人(2010)。
→関連項目ソウルオリンピック(1988年)大韓民国南大門李朝(朝鮮)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ソウル」の解説

ソウル

朝鮮半島中央西部,漢江(ハンガン)下流に位置する都市。ソウルとは朝鮮語で首都の意。李氏朝鮮以降たびたび戦乱で破壊されたが復興した。最初は1394年,太祖李成桂(りせいけい)が高麗の漢陽府を首都として漢城府(かんじょうふ)と改称,城壁都市が整備されたが,豊臣秀吉の朝鮮侵入のとき多くの王宮を焼失した。1910年(明治43)韓国併合で朝鮮総督府の設置とともに京城(けいじょう)と改称。朝鮮軍司令部・朝鮮銀行やのち京城帝国大学も設立され,日本の植民地支配の拠点となった。この時代に城壁の大部分が撤去され,都市・交通などの開発も進められたが,19年(大正8)独立を求める3・1運動の発火点ともなった。45年(昭和20)の解放後ソウルと改称。48年大韓民国の独立と同時にその首都・特別市となる。50年の朝鮮戦争では南北両軍の戦火で破壊されたが復興し,88年には第24回オリンピック大会が開催された。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ソウル」の解説

ソウル
Seoul

朝鮮半島の中央部の西海岸寄り,漢江下流域にある大韓民国の首都
高麗時代の11世紀半ばに南京が置かれてから都市として発達し,李朝の成立とともにその都(漢城府)となり,以後500余年間,朝鮮の政治・経済・文化の中心として栄えた。文禄・慶長の役,清軍の侵入などで兵火を受け,壬午 (じんご) 軍乱,甲申 (こうしん) 政変などの中心ともなった。1910年日韓併合とともに京城と改称され,総督府が置かれて,日本の朝鮮支配の中心となった。第二次世界大戦後はソウル(首都の意)特別市として大韓民国の首都となった。四囲に山をめぐらす盆地で,古都にふさわしい名所旧蹟が多く,新しい近代的なビル街と新旧よく調和した都市美をつくっている。

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世界大百科事典 第2版 「ソウル」の意味・わかりやすい解説

ソウル【Sŏul】

大韓民国の首都。朝鮮語でソウルは首都の意。人口1060万(1995)。朝鮮半島の黄海側,中部西海岸寄りにあって,京畿湾に注ぐ漢江下流の盆地に位置する。旧市街は四方を山に囲まれ,夏の平均気温は25.4℃,冬の平均気温は-4.9℃と年間温度差が30℃を超え,内陸性の気候を示している。北と南に,それぞれ北漢山(836m)・北岳山と,南漢山・冠岳山(629m)などがそびえ,また,中央部を漢江が東から西へと流れて自然の要害をなす。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソウル」の意味・わかりやすい解説

ソウル
soul

音楽用語。元来「魂」に由来することばであるが,ジャズの演奏において,技巧よりも,その魂に回帰しようとする様式あるいは音楽。また,ブルースゴスペル・ソングなどの要素を取り入れて,1960年代にはアフロ=アメリカ系の新しい音楽のジャンルとして成立した。初期は黒人間の連帯を鼓舞する歌詞が多かったが,しだいに洗練された編曲が増えた。代表的な歌手にオーティス・レディング (1941~67) ,ジェームズ・ブラウン (1933~2006) らがいる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ソウル」の解説

ソウル
Seoul

韓国の首都。この地は朝鮮王朝時代に首都となり,漢陽または漢城と呼ばれたが,1910年の「韓国併合」とともに京城と改められ,朝鮮総督府が置かれた。45年8月15日の解放とともに,元来は「都」を意味する朝鮮語であるソウルと,名称が改められた。現在の人口は1000万人を超え,88年のオリンピック開催を契機に,世界的な大都市に成長している。

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