仕掛ける(読み)シカケル

デジタル大辞泉 「仕掛ける」の意味・読み・例文・類語

し‐か・ける【仕掛ける】

[動カ下一][文]しか・く[カ下二]
相手に対して、こちらから働きかける。相手が乗ってくるように扱う。仕向ける。「技を―・ける」「けんかを―・けられる」

㋐作用するように、装置工夫などを設ける。「わなを―・ける」「ダイナマイトを―・ける」
㋑煮炊きするために、火の上にかける。「御飯を―・ける」「なべを―・ける」
動作・作用をしはじめる。また、何かをしはじめて、その中途である。「話を―・けてやめる」「仕事を―・けている」
取引市場で、株価の騰落を予想して、新たに売買の注文をする。
物を作って、それを他の物の上にかける。
御衣掛みそかけの御装束など、例のやうに―・けられたるに」〈・葵〉
浴びせかける。ひっかける。
「父君に尿しとふさに―・けつ」〈宇津保・蔵開上〉
[類語]働きかける持ちかける仕向ける畳みかける仕組む始めるしだすやりだす掛かる取り掛かるしかかる開始する着手する幕開き開幕始まる踏み出すスタート出出し立ち上がり手始め皮切り口切り封切り起動始動発動幕がふたく・蓋を開けるしょ・ちょ端を発する口火を切る火蓋を切る幕を切って落とす狼煙のろしを上げる手を付ける御輿みこしを上げる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「仕掛ける」の意味・読み・例文・類語

し‐か・ける【仕掛】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]しか・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ( 「し」はサ変動詞「する」の連用形 )
  2. [ 一 ] ( 「かける」は、覆うようにかぶせるの意 )
    1. 物を用意して、それを他の物にかける。
      1. [初出の実例]「腹を立ちて、しかけたる衣どもも著ずて」(出典:落窪物語(10C後)二)
    2. 息を吹きかけたり、水を浴びせたりする。特に、尿などの汚物を相手にかける。かけてよごす。
      1. [初出の実例]「父君に尿(しと)(ふさ)にしかけつ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
      2. 「息しかけなどして物くはす」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
    3. 煮たきするために、鍋、釜、やかんなどを、火の上に置く。火にかける。
      1. [初出の実例]「茶の湯にすいたれば、おくのまにしかけておいたが、いかにもりんりんりんと、たぎってある」(出典:虎明本狂言・鱸庖丁(室町末‐近世初))
      2. 「宿の女房は、鑵子(くんす)あらひて、茶をしかくれば」(出典:浮世草子・好色貝合(1687)下)
    4. 浴びせるように勢いよく飲む。ひっかける。
      1. [初出の実例]「先いきやすめに一ッぱいしかけ、いきをひをつけんと、料理茶屋へづっとはいる」(出典:洒落本・恵比良濃梅(1801)一)
  3. [ 二 ] ( 「かける」は、動作や作用を相手に向ける意 )
    1. 相手に対して、こちらから働きかける。行為をしむける。積極的に働きかける。
      1. [初出の実例]「口をひき垂れて、『知らぬことよ』とて、さるがうしかくるに」(出典:枕草子(10C終)一四三)
      2. 「きゃくにはなしをしかける」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初)
    2. ( から転じて自動詞的に用いる ) 強引に相手のところへ行く。押し掛ける。乗り込む。
      1. [初出の実例]「それより直に主膳屋形に仕掛(シカケ)案内申せば」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)七)
    3. 相撲で、相手よりも先に技をかける。攻勢に出る。
    4. 将棋で、序盤の駒組が完了して戦いを開始する。また、ある指し手に着手する。「千日手をしかける」
  4. [ 三 ] ( 「かける」は設備する、設ける意 )
    1. ある働きをさせるために、装置、工夫などを設けたり、準備をしたりする。しかけを作る。
      1. [初出の実例]「朝起、夜放し会朝は、寅一天より茶湯仕懸る也」(出典:山上宗二記(1588‐90))
      2. 「門柱に装置(シカ)けた電鈴の釦鉏(ボタン)を推しつつ」(出典:くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉七)
    2. 相手を自分の考えにひき込むために、ある計画をする。たくらむ。
      1. [初出の実例]「召連(めしつれ)の者、駕籠までも嵐ふく夜はわざとならぬ首尾に仕懸(シカケ)て」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
    3. 行儀作法などを教え習わせる。しつける。
      1. [初出の実例]「随分厳敷(きびしく)(シ)かけても、大かたは母親ひとつになりて、ぬけ道をこしらへ」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
    4. 巧みに相手をごまかして扱う。相手をたくらみに乗せる。ごまかす。だます。
      1. [初出の実例]「油も壱升弐匁の折から弐匁三分に仕掛(シカケ)られ」(出典:浮世草子・日本永代蔵(1688)五)
  5. [ 四 ] ( 「かける」は、動作を始めそうになる。また、始めてその途中であるの意 ) 動作、作用をし始める。また、動作をし始めて、その途中である。
    1. [初出の実例]「自害を半(なかば)にしかけて、路の傍に伏たりけるを」(出典:太平記(14C後)二九)
    2. 「Xicaqeta(シカケタ) コトノ スマヌ ウチニ マタ ベチノ ムツカシイ コトガ アル」(出典:天草版金句集(1593))
    3. 「もう帰らうと思って挨拶をしかける所へ」(出典:三四郎(1908)〈夏目漱石〉三)

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