デジタル大辞泉 「哀」の意味・読み・例文・類語 あい【哀】[漢字項目] [常用漢字] [音]アイ(呉)(漢) [訓]あわれ あわれむ かなしい1 せつなくて胸がつまる。「哀歓・哀愁・哀悼/悲哀」2 かわいそうに思う。「哀憐あいれん」3 あわれっぽくする。泣きつく。「哀願・哀訴」[難読]可哀相かわいそう 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「哀」の意味・読み・例文・類語 あわれあはれ【哀】 [ 1 ] 〘 感動詞 〙① うれしいにつけ、楽しいにつけ、悲しいにつけて、心の底から自然に出てくる感動のことば。ああ。あら。やれやれ。[初出の実例]「やつめさす 出雲建が 佩ける太刀 黒葛(つづら)さは巻き さ身無しに阿波礼(アハレ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)「家ならば妹が手まかむ草枕旅にこやせるこの旅人怜(あはれ)」(出典:万葉集(8C後)三・四一五)「人知れぬ思ひ出で笑ひもせられ、あはれとも、うちひとりごたるるに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)② 下に願望、命令などの表現を伴って、願望の気持を表わす。ああなんとかして。ぜひとも。[初出の実例]「わらはをいつも訪ひ慰むる人の候。あはれ来れ候へかし語らばやと思ひ候」(出典:大観本謡曲・三井寺(1464頃))「あの理発にては、あはれ至善格物の道理をしらせたや」(出典:仮名草子・都風俗鑑(1681)三)「あはれ良(よき)人の女子(むすめ)の㒵(かほ)よきを娶りてあはせなば、渠(かれ)が身もおのづから脩まりなんとて」(出典:読本・雨月物語(1776)吉備津の釜)③ はやし詞として用いる。[初出の実例]「いで我が駒 早く行きこせ 待乳山 安波礼(アハレ) 待乳山 はれ」(出典:催馬楽(7C後‐8C)我が駒)[ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) ( [ 一 ]の感動詞から転じたもの ) 心の底からのしみじみとした感動や感情、また、そういう感情を起こさせる状況をいう。親愛、情趣、感激、哀憐、悲哀などの詠嘆的感情を広く表わすが、近世以降は主として哀憐、悲哀の意に用いられる。① 心に愛着を感じるさま。いとしく思うさま。また、親愛の気持。[初出の実例]「めづらしく 鳴くほととぎす〈略〉聞くごとに 心つごきて うち嘆き 安波礼(アハレ)の鳥と 云はぬ時なし」(出典:万葉集(8C後)一八・四〇八九)「うちながめて、いと心細げに見送りたるさまども、いとあはれなるに、もの思ひ加はりぬる心地すれど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)真木柱)② しみじみとした風情のあるさま。情趣の深いさま。嘆賞すべきさま。→もの(物)の哀(あわ)れ。[初出の実例]「かぢとりもののあはれも知らで、おのれし酒をくらひつれば」(出典:土左日記(935頃)承平四年一二月二七日)「からすの寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり」(出典:枕草子(10C終)一)③ しみじみと感慨深いさま。感無量のさま。[初出の実例]「折からの御文、いとあはれなれば、御使さへむつまじうて、二三日すゑさせ給ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)「あはれも醒めてをかしかりけり」(出典:徒然草(1331頃)一二五)④ 気の毒なさま。同情すべきさま。哀憐。また、思いやりのあるさま。思いやりの心。[初出の実例]「命婦は、まだ大殿籠らせ給はざりけると、あはれに見たてまつる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)「王宮を追出し事を哀れに思ひ出して」(出典:今昔物語集(1120頃か)二)「憐れな声が糸の様に浮いて来る」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一)⑤ もの悲しいさま。さびしいさま。また、悲しい気持。悲哀。[初出の実例]「見れば、世間心細く、哀に侍る」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))「老いの波こえける身こそあはれなれ今年もいまは末の松山〈寂蓮〉」(出典:新古今和歌集(1205)冬・七〇五)⑥ はかなく無常なさま。無常のことわり。[初出の実例]「よろづにあはれなるたびの御祈をせさせ給へば」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鳥辺野)「およそ心なき草木、情ある人倫、いづれあはれを逃がるべき」(出典:謡曲・江口(1384頃))⑦ (神仏などの)貴いさま。ありがたいさま。[初出の実例]「霊山は釈迦仏の御住家(すみか)なるがあはれなるなり」(出典:枕草子(10C終)二〇八)⑧ 殊勝なさま。感心なさま。→あっぱれ。[初出の実例]「俗聖とか、この若き人々のつけたなる。あはれなることなり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)「つひに敵を思ふままにうち〈略〉あはれにも、いみじきにも、申つたへたるは、此人々の事なり」(出典:曾我物語(南北朝頃)三)哀の補助注記語源を「あ」と「はれ」との結合と説くものが多いが、二つの感動詞に分解しうるかどうか疑わしい。なお、「あっぱれ」は、「あはれ」が促音化して生まれた語形である。哀の派生語あわれ‐が・る〘 他動詞 ラ行五(四) 〙哀の派生語あわれ‐げ〘 形容動詞ナリ活用 〙哀の派生語あわれ‐さ〘 名詞 〙 あい【哀】 〘 名詞 〙① 悲しむこと。嘆くこと。いたましいこと。[初出の実例]「ココロニ aiuo(アイヲ) ヲモエバ ナンダ サウガンニ ウカブ」(出典:天草版金句集(1593))② 哀れむこと。[初出の実例]「哀余る捨子ひろひに遣(つかは)して〈芭蕉〉 外里(とさと)に鹿の裾引て入(いる)〈其角〉」(出典:俳諧・俳諧次韻(1681))③ 喪。喪中。 あわれ‐しあはれ‥【哀】 〘 形容詞シク活用 〙 いたわしい。ものがなしい。あわれである。[初出の実例]「あはれしや焼野にもれし峰のわのむら草隠れ雉(きぎす)鳴くなり〈源顕仲〉」(出典:永久百首(1116)春)「母を置て先立たらん跡に残りていかにかはせんと歎しづむ様も哀(アハレ)し」(出典:浮世草子・近代艷隠者(1686)二) あわれましあはれま‥【哀】 〘 形容詞シク活用 〙 ( 動詞「あわれむ(哀)」の形容詞化 ) あわれをそそるようなさま。同情心を起こさせるようなさま。また、好感がもてそうなさま。[初出の実例]「うち見るより憎さげなると、あはれましきとあり」(出典:随筆・常山紀談(1739)) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by
普及版 字通 「哀」の読み・字形・画数・意味 哀常用漢字 9画 [字音] アイ[字訓] かなしい・あわれむ[説文解字] [金文] [字形] 会意衣+口。〔説文〕二上に「閔(あはれ)むなり」とし、衣声とするが、字は会意。死者の招魂のために、その衣の襟(えり)もとに、祝詞を収める器の形の(さい)を加える。魂よばいをする哀告の儀礼を示す。[訓義]1. かなしい、いたむ。2. あわれむ。[古辞書の訓]〔名義抄〕哀 カナシブ・イタム・ウレフ・ナク・オモハカル・メグム・ワザハヒ[語系]哀哀・依依・鬱鬱・乙乙・烏烏(おお)・隱隱(隠隠)・怏怏(おうおう)・邑邑(ゆうゆう)・慍慍(うんうん)はみな同系。その鬱屈した音のうちに、悲哀の情を含む。愛・優も同系の語。哀i、依ii、鬱iut、隱in、怏iang、邑ip、unや愛t、憂iuはみな語頭に母音をもち、その声義に通じるところがある。[熟語]哀哀▶・哀哇▶・哀韻▶・哀鬱▶・哀咽▶・哀艶▶・哀怨▶・哀音▶・哀歌▶・哀感▶・哀毀▶・哀泣▶・哀矜▶・哀禽▶・哀吟▶・哀嗷▶・哀号▶・哀告▶・哀哭▶・哀冊▶・哀策▶・哀子▶・哀思▶・哀詩▶・哀辞▶・哀恤▶・哀傷▶・哀杖▶・哀情▶・哀色▶・哀声▶・哀戚▶・哀▶・哀切▶・哀訴▶・哀惻▶・哀弔▶・哀痛▶・哀悼▶・哀慟▶・哀念▶・哀閔▶・哀愍▶・哀憤▶・哀▶・哀慕▶・哀鳴▶・哀容▶・哀楽▶・哀誄▶・哀麗▶・哀▶・哀▶・哀哉▶[下接語]一哀・永哀・過哀・居哀・矜哀・激哀・告哀・新哀・凄哀・清哀・送哀・沈哀・悲哀・余哀・揚哀・楽哀 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報 Sponserd by