(読み)フ

デジタル大辞泉 「府」の意味・読み・例文・類語

ふ【府】[漢字項目]

[音](呉)(漢)
学習漢字]4年
書類や財宝をしまっておく庫。「府庫御府ぎょふ秘府
役人が集まって仕事をする所。役所。「楽府がふ衙府がふ開府官府国府政府幕府総理府
みやこ。「参府首府出府城府水府都府
物事の多く集まる所。「怨府えんぷ学府
地方公共団体の一。「府警府県府立府知事

ふ【府】

地方公共団体の一。現在は大阪京都の2府がある。→都道府県
国の行政機関の一。「内閣
物事の中心となる所。「学問」「行政の
くら。特に宮廷の文書・財貨を入れておく所。
役人が事務をとる所。役所。
江戸時代、幕府の所在地であった江戸をさしていう。
中国行政区画の一。代から代まで、一般に県の上に置かれた。長官は唐では府尹ふいん以降は知府
[類語]

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精選版 日本国語大辞典 「府」の意味・読み・例文・類語

ふ【府】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くら。倉庫。特に、朝廷の文書・財物などを納めておく所。
    1. [初出の実例]「烽(とぶひ)を列ね訳を重ぬる貢、府(ふ)(〈別訓〉くら)に空しき月無し」(出典古事記(712)序)
    2. [その他の文献]〔国語‐周語中〕
  3. 役人が事務をとる所。役所。つかさ。「近衛府」「国府」「大宰府」「鎮守府」など。
    1. [初出の実例]「大宰管内大隅・薩摩〈略〉等司、有闕、選府官人、擁補之」(出典:続日本紀‐養老六年(722)四月丙戌)
    2. [その他の文献]〔周礼‐天官・大宰〕
  4. 江戸時代、幕府のあった江戸をさしていう。「在府」「出府」など。
  5. 人や事物の多く集まるところ。物事の中心。
    1. [初出の実例]「天下の学問の府」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉犬物語)
    2. [その他の文献]〔漢書‐司馬遷伝〕
  6. 国の行政機関の一つ。昭和二四年(一九四九)から平成一三年(二〇〇一)までの総理府、昭和二四年から同二七年までの法務府などがあり、省と法律上の差異はなかったが、現在の内閣府は各省の上に置かれる。
    1. [初出の実例]「行政組織のため置かれる国の行政機関は、府、省、委員会及び庁とし」(出典:国家行政組織法(1948)三条)
  7. 都・道・県と並ぶ普通地方公共団体の一つ。現在は京都、大阪の二府があるが、昭和一八年(一九四三)東京都が成立するまでは、東京を含めて三府であった。
    1. [初出の実例]「太政官達第六十九号を以て〈略〉内閣を組織する旨官省院庁府県へ達せらる」(出典:団団珍聞‐五二五号(1886))
  8. 中国の行政区画。唐以降清まで設けられた。地方行政の一単位で、州・県を統轄する。長官は唐では府尹、宋以後は知府。〔新唐書地理志・一〕

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普及版 字通 「府」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音]
[字訓] くら・つかさ・やくしょ・みやこ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は付(ふ)。〔説文〕九下に「書のなり」とあり、重要な文書は府庫に収蔵した。〔左伝、定四年〕「載書(盟約の書)はして府に在り」、〔左伝、襄十一年〕「して府に在り」のようにいう。列国期の字に貝を加えてに作るものがあり、多く財物を蔵したのであろう。のち政府・官府の意となり、その所在の地をいう。

[訓義]
1. くら、文書を蔵するところ、府庫。
2. つかさ、やくしょ。
3. もののあつまるところ、あつまる、もと。
4. みやこ、まち、やしきまち。
5. 腑(ふ)と通じ、臓腑、はらわた、内臓。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕府 タツ・アツム・スミカ・アツマル・シルシ・タスク・アマリナリ・カナフ・トル・クツ・モト・タダス・タタル・クチタリ

[声系]
〔説文〕に府声として腐を収める。また腑も府声。臓腑は諸器官を蔵するところ。また腐敗の速やかな部分である。

[語系]
府・腑pioは同声。〔説文〕に腑の字なく、膽(胆)字条四下に「肝をぬるの府なり」とあって、古くは府をその字に用いた。

[熟語]
府尹・府院・府掾・府学・府館・府君・府庫・府史・府司・府寺・府主・府署・府然・府蔵・府第・府宅・府治・府中・府朝・府邸・府庭・府帑・府兵・府望・府吏・府廩
[下接語]
陰府・怨府・開府・外府・学府・楽府・官府・義府・旧府・宮府・御府・胸府・玉府・軍府・京府・芸府・公府・国府・宰府・三府・私府・首府・書府・署府・相府・上府・城府・心府・水府・枢府・政府・仙府・泉府・膳府・倉府・蔵府・大府・台府・知府・智府・天府・都府・内府・入府・覇府・幕府・藩府・秘府・兵府・文府・謀府・明府・冥府・盟府・幽府・六府・霊府

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改訂新版 世界大百科事典 「府」の意味・わかりやすい解説

府 (ふ)

中国,唐以後の行政区画名。物の集まる蔵の原義から転じ,〈みやこ〉の意をもつ。唐の開元1年(713),国都長安(雍州(ようしゆう))と副都洛陽(洛州)をそれぞれ京兆(けいちよう)府,河南府としたのが最初である。唐代には王室と関係したを府に改め,10を数えた。宋は北宋末には34に増え,南宋にいたってさらに増加した。元代にはの下の行政区画に変わったが,明代,路に代わる中間行政区となり,主要地域はすべて府と称し,200余に達した。民国にいたって消滅する。
執筆者:


府 (ふ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「府」の意味・わかりやすい解説


市町村を包括する広域の自治体で、都道県と同格である普通地方公共団体。1868年(慶応4)の政体書で、府・藩・県の地方行政区画を定め、徳川幕府直轄地のうち、東京・京都・大阪を府、その他を県と、初めて府県の名称を付したが、両者の間に制度上の区別は設けなかった。1943年(昭和18)の東京都制制定後、京都・大阪の二府になった。

[高木鉦作]

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百科事典マイペディア 「府」の意味・わかりやすい解説

府【ふ】

(1)国家行政組織法で定められている行政機関の一種。総理府がこれに当たる。(2)地方公共団体の一種。→都道府県

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「府」の解説

府(ふ)

中国の行政区画。もと将軍の役所をさしたが,隋,唐初の総管府,都督府が兵権を奪われたのちは,一般のと変わらなくなった。唐以後国都その他重要な所に置き,長官を唐では府尹(ふいん),宋以後はおおむね知府(ちふ)といった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「府」の解説


中国の地方行政区の単位
初め将軍の鎮守府をさしたが,唐の開元年間に長安を京兆府,洛陽を河南府としたのが始まり。首都や主要都市の州を府に改めていった。長官を唐では府尹 (ふいん) ,宋以後は知府と呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【府県制】より

…府県は市町村を包括する広域的普通地方公共団体であり,直接公選の知事と議会の二元的代表機関のもとに,普通地方公共団体の権能のうち,広域的なもの,統一的処理の必要なもの,市町村にゆだねるのが不適当な規模のものを処理するとともに,市町村間の調整を責務とするとされている。府県とは歴史的沿革による名称の違いであって,実質的権能を異にするものでない。…

【省】より

…明治初期に大宝令にならって採用されて以来用いられている名称。第2次世界大戦後の行政組織の基本法である国家行政組織法の下では,府と省が基本的な行政機関であり,現在,1府(総理府のみ),12省(法務省,外務省,大蔵省,文部省,厚生省,農林水産省,通商産業省,運輸省,郵政省,労働省,建設省,自治省)が設置されている。これらが内閣の統轄の下に行政事務を分担し,全体として国の行政組織を構成する。…

【中国】より

…殊に我国は神州と号して,世界のうちあらゆる国々,我国に勝れたる風儀なし〉。明治元年京都府が府下人民に与えた〈告諭大意〉の書き出しであるが,中村光夫《現代日本文学史》第1章〈明治初期〉,第2節〈啓蒙思想〉はそれを引用して次のごとく論じている。〈この一節の文章に見られる奇妙な思想の混合は,明治人の心理を象徴しています。…

※「府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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