(読み)いみ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


いみ

日本における禁忌の意。忌は日本人の精神生活において重要な意義をもち,通常,相異なる清浄の忌と穢れの忌とがある。前者は主として神事儀礼に関する忌で,穢れを取去り,身を清めることをいい,後者は死や出産,婦人の月事などにみられる。この2つの忌の区別は外国にもあるが,一般にタブーといわれているものが日本の忌と同一のものであるかどうかについては疑問視されている。清浄の忌にせよ,穢れの忌にせよ,忌に服する者は普通の人と接触しないという禁制があるため,別居別の生活をすることがあった。たとえば祭りの忌に服する人のこもる精進屋や,出産,月事の忌を避ける産屋 (うぶや) ,月小屋などである。忌の種類によってそれぞれ服する期間が決っており,それから出るときには忌明けの儀礼を行なった。また個人や家族だけでなく,特に神事や凶事については村民全体が服するという村忌の習俗もある。このほかの忌としては,一定の日を忌む忌日,方角の忌の方違 (かたたがえ) ,ある種の動植物を口にしない食栽禁忌,特定の言葉や数を避ける忌言葉忌数などがあり,特に凶事の作法を日常は行うことを避けるという傾向は一般的にみられる。

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デジタル大辞泉の解説

いみ【忌(み)/斎】

《動詞「い(忌)む」の連用形から》
(斎)心身を清浄に保ち、けがれを避けて慎むこと。
(忌み)死・不浄など、はばかりのあること。
(忌み)人の死後、近親者が、しばらくの間家に慎みこもること。喪。喪中。忌(き)。「―が明ける」
(忌み)陰陽道(おんようどう)などで、ある方角・日取りなどをはばかって避けること。物忌み。かたたがえ。
「―もたがへがてら、しばしほかにと思ひて」〈かげろふ・中〉
他の語の上に付いて複合語をつくり、汚れを清めた、神聖な、の意を表す。「―火」「―殿(どの)」

き【忌】

死者の喪に服して慎む一定の日数。忌中。喪中。いみ。「にこもる」
死者の命日。「一周」「芭蕉」→忌日補説

き【忌】[漢字項目]

常用漢字] [音](漢) [訓]いむ いまわしい
いやなこととして避ける。恐れはばかる。「忌諱(きき・きい)忌憚(きたん)忌避禁忌嫌忌猜忌(さいき)
死者の命日。「忌日(きにち)遠忌(おんき)年忌一周忌桜桃忌三回忌
喪に服する期間。「忌中忌引(きびき)忌服(きぶく)
[難読]忌忌(いまいま)しい

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大辞林 第三版の解説

き【忌】

喪にこもる一定の日数。いみ。忌中。 「 -が明ける」
死者の命日。他の語と複合して用いられる。 「一周-」 「七回-」 「桜桃-」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


(い)むべき状態。とくに人の死によって、近親者などが受ける穢(けが)れた状態をいう。忌には神聖であるために近づきにくいものと、穢れているために遠ざかるべきものとがあり、正反対であるのに一括して受け止めている。後者の最大のものは死と出血だと考えられてきた。血の忌は、出産、月経、傷の出血などを忌むものであるが、なかでも死の忌は、死者に対する哀惜や追悼の気持ちに結び付き、文明社会にも根強く残っている。忌はこのように、死者との関係によって自動的に入る状態をいい、その忌に対して慎みの気持ちを表す儀礼や方式を「喪(も)」という。ただし両者はしばしば混同され、また忌の期間や命日(めいにち)の意味にも使われる。[井之口章次]

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精選版 日本国語大辞典の解説

いま‐・う ‥ふ【忌】

〘他ハ四〙 (動詞「いむ(忌)」の未然形に、接尾語「ふ」の付いたもの) 嫌って避ける。
平家(13C前)一一「三位をこそし給ふべかりしかども、平家のし給ひたりしをいまうてなり」

いまし・い【忌】

〘形口〙 いまし 〘形シク〙 いまいましい。忌み嫌うべきことである。腹立たしい。残念である。
仮名草子・見ぬ京物語(1659)下「いましひ所業をすてて、浄土専念の宗旨をひろめ給へり」

いまわいまはし【忌】

いまわし・い いまはしい【忌】

〘形口〙 いまはし 〘形シク〙 (動詞「いまう(忌)」の形容詞化)
① よくない事が起こる前兆のようで、縁起が悪い。不吉である。
※平家(13C前)三「あの御浄衣のよにいまはしきやうに見えさせおはしまし候」
② いやな感じである。好ましくない。不愉快である。
※浄瑠璃・都の富士(1695頃)二「ヤア聞たくもなきかんげんいまはしし勝重」
いまわし‐が・る
〘他ラ四〙
いまわし‐げ
〘形動〙
いまわし‐さ
〘名〙

いも・う いまふ【忌】

〘他ハ四〙 ⇒いまう(忌)

き【忌】

〘名〙
① 凶事をきらい避けること。
② 喪(も)にこもって忌み慎む一定の日数。いみ。忌中。喪中。
死者の命日。「一周忌」「三回忌」「七年忌」などと熟して使うことが多い。
※観智院本三宝絵(984)中「七七日(なぬかなぬか)の忌の間は此の寺に来て一日に一鉢をまうけて、一人に一巻を講ぜむ」 〔周礼‐春官・小史〕

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世界大百科事典内のの言及

【忌服】より

…服忌ともいい,死が発生してのち一定期間,喪服(凶服)を着て家に忌みこもること。〈忌〉は死のけがれにより家に謹慎することであり,〈服〉とはもと素服(そぶく)を着ることである。…

【葬制】より

… 現在の人類社会において葬制の意味するところは単なる死体の処理を超えてはるかに広い。それは,たとえば人間は霊魂をもつという観念のなかに端的に見られるように,個人の人格は肉体の存在とは別の文化的表象をもっており,それによって死および死者にかかわる儀礼は死の直後だけでなく,服喪の順守や年忌・法事の執行に現れているように長期間にわたって継続される可能性があるからである。さらに重要なことは,このようにして表象された死者は社会的な存在であるということである。…

※「忌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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