沈黙(遠藤周作の小説)(読み)ちんもく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈黙(遠藤周作の小説)」の意味・わかりやすい解説

沈黙(遠藤周作の小説)
ちんもく

遠藤周作長編小説。1966年(昭和41)書き下ろしとして新潮社刊。切支丹(キリシタン)禁制の日本に渡ってきた司祭ロドリゴは、無辜(むこ)の信徒たちを救うために踏絵を踏むことになるが、このとき彼は、「踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生まれ、お前たちの痛さを分つため十字架を背負ったのだ」というキリストの声を聴く。神の沈黙への問いと、背教汚名のゆえに歴史の底に沈黙せしめられている人々に声を与えんがために書いたというこの作品は、その主題のはらむ深い問いかけと、成熟した文体、手法において代表作とよぶに足る。

[佐藤泰正]

『『沈黙』(新潮文庫)』

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