(読み)もる

精選版 日本国語大辞典 「盛」の意味・読み・例文・類語

も・る【盛】

〘他ラ五(四)〙
① 飲食物などで器をいっぱいにする。食物を皿などにのせる。
書紀(720)武烈即位前八月・歌謡「玉笥(たまけ)には 飯(いひ)さへ母理(モリ) 玉盌(たまもひ)に 水さへ母理(モリ)
② うずたかく積み上げる。高く積む。もりあげる。
※栄花(1028‐92頃)花山たづぬる中納言「さまざまの果物を皆物の形にもりなどして」
③ 酒を飲ませる。
※虎明本狂言・大黒連歌(室町末‐近世初)「酒をもる、三つほどのふで、汝らをたのしうなさうと云て」
毒薬を飲食物に混入する。また、一般に薬を飲ませる。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)七「なにかしちふつの、どくのさけを、おもりあるものならば」
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一〇「何のやまひにでも葛根湯ばかりもるが」
⑤ 寸法や分量を割り出してしるしをつける。めもる。
日葡辞書(1603‐04)「メ。〈略〉ゴ、シャウギ、ナドノ バンニ メヲ morou(モル)
検地をして石盛(こくもり)を定める。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「杖つきの酔はれた所は盛直し」
⑦ 役割・任務・費用などを、人々に割り当てる。また、人々を集団・乗船などに割りつける。
上井覚兼日記‐天正三年(1575)三月二三日「此前者以安も本田因幡入道の下手に被盛候と」
⑧ 講の宿をする。長崎県壱岐でいう。「お講盛る」「無尽盛る」

さかり【盛】

〘名〙 (動詞「さかる(盛)」の連用形の名詞化)
① (形動) 勢いの盛んなこと。また、その時期やさま。ある状態がその頂点に達する時期。
※万葉(8C後)五・八二〇「梅の花今佐可利(サカリ)なり思ふどちかざしにしてな今佐可利(サカリ)なり」
徒然草(1331頃)一三七「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは」
② (形動) 人が男として、または女として精神的、肉体的に最も充実していること。また、その時期やさま。年盛り。
※万葉(8C後)五・八四七「わが佐可理(サカリ)いたくくたちぬ雲に飛ぶ薬はむともまたをちめやも」
③ 商売などが盛んであること。繁盛。繁栄。にぎわい。
結城氏新法度(1556)三五条「其所之さかりを何方も願義にて候」
④ 畜類などが一定の時期に起こす発情。多く、「さかりが付く」の形で用いられる。
※俳諧・文車(1772)「声もなく香もなく蝶のさかり哉〈菟莱〉」

さか・る【盛】

〘自ラ五(四)〙
① 勢いが盛んになる。物事の盛りになる。その物の最も充実した時期をむかえる。たけなわになる。
※万葉(8C後)一〇・二二三三「高松の此の峯も狭(せ)に笠立ててみち盛(さかり)たる秋の香のよさ」
② 繁盛(はんじょう)する。時めく。にぎわう。栄える。〔和英語林集成(初版)(1867)〕
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「再び盛(サカ)る牛店(うしや)の繁昌」
③ 性欲が強くなる。また、鳥や獣が発情する。交尾する。つるむ。
※羅葡日辞書(1595)「Admissura〈略〉トリ、ケダモノノ sacaru(サカル) ジブン、すなわち、ツルム、トツグコトヲ ユウ」
④ はやる。流行する。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙一一近頃西洋主義が盛(サカ)ってきたから」

もり【盛】

〘名〙 (動詞「もる(盛)」の連用形の名詞化)
① 盛りあげること。また、そのものや、分量。
※枕(10C終)一〇八「豆一もり、やをら取りて」
② 土器の小さいもの。物を盛るところからいう。〔随筆・安斎随筆(1783頃)〕
③ 人と、役割・任務・分担費用・所属集団・乗船などの事物との対応関係をつくること。また、その関係。また、その関係を同じくする人または事物の集合。割り当て。割りつけ。配分。配置。なお、衆盛・番盛・船盛など、熟しても用いられる。
※上井覚兼日記‐天正二年(1574)一二月七日「明春御千句之盛被成候哉と御尋候」
④ 「もりそば(盛蕎麦)」の略。
洒落本古契三娼(1787)「ぶっかけ二つとあつらゆるに、女房が盛(モリ)にし給へとすすめしは」
⑤ 「こくもり(石盛)」の略。〔地方凡例録(1794)〕

さかん【盛】

〘形動〙 (「さかり(盛)」の変化した語)
① たいへんに勢いのあるさま。元気のよいさま。たけなわであるさま。充実したさま。
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)一〇「日の斯(ここ)に隠れて、朗月方に陳するが如し。穆(サカンナル)かな」
② 人として最も元気のときであるさま。年盛りであるさま。
私聚百因縁集(1257)一「彼の后、齢(よはひ)未だ中半(サカンナラ)ざるに墓無(はかな)く成り給ひにけり」
③ 繁盛するさま。にぎわうさま。また、にぎやかに事を行なうさま。
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉上「商売がまたおひおひ盛になって来ました」
④ 広く行なわれるさま。はやるさま。
※俳諧・古学截断字論(1834)上「されど今芭蕉翁の俳諧四海に広りて熾(サカ)んなれば」

せい【盛】

〘名〙 (形動) 勢いよく栄えていること。さかんであること。また、そのさま。
浮世草子・風流曲三味線(1706)四「大臣迷惑ながら、白人手前の盛(セイ)に汚なびれた事もいはれず」 〔礼記‐月令〕

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デジタル大辞泉 「盛」の意味・読み・例文・類語

せい【盛】[漢字項目]

[音]セイ(漢) ジョウ(ジャウ)(呉) [訓]もる さかる さかん
学習漢字]6年
〈セイ〉力や勢いがさかん。さかえる。「盛運盛会盛況盛衰盛大盛名殷盛いんせい旺盛おうせい全盛隆盛
〈ジョウ〉さかん。さかえる。「盛者必衰繁盛
[名のり]さかり・しげ・しげる・たけ・もり

もり【盛(り)】

[名]
盛ること。また、盛った分量。「飯の盛りがよい」
盛り蕎麦そば」の略。
石盛こくもり」の略。
[接尾]助数詞。皿や茶碗などに盛ったものを数えるのに用いる。「どんぶり飯二ふた盛り

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「盛」の意味・わかりやすい解説


さかり

岩手県南東部、大船渡市(おおふなとし)の行政、文化の中心地。旧盛町。盛川の河口付近に位置し、古くから盛六郷の中心地として商業活動が盛んで、現在も毎月末尾に5のつく日に定期市が立つ。またJR大船渡線BRT(バス高速輸送システム)と三陸鉄道リアス線の連絡地でもある。

[川本忠平]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「盛」の意味・わかりやすい解説


さかり

岩手県の南東部,大船渡市の中心市街地で旧町名。 1952年近隣の町村と合併して大船渡市となる。大船渡湾に注ぐ盛川の低地に位置する。縄文時代から人が居住し,古くは佐狩と書かれた。江戸時代末期まで宿場町,市場として栄え,気仙地方の行政・文化の中心地であった。盛駅は JR大船渡線の終点で,三陸鉄道南リアス線の起点。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【大船渡[市]】より

…岩手県南東部,大船渡湾に臨む市。1952年に大船渡,盛(さかり)の2町と,末崎,赤崎,猪川,立根(たつこん),日頃市の5村が合体して市制。人口3万7264(1995)。…

※「盛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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