精選版 日本国語大辞典 「盛」の意味・読み・例文・類語
も・る【盛】
〘他ラ五(四)〙
① 飲食物などで器をいっぱいにする。食物を皿などにのせる。
② うずたかく積み上げる。高く積む。もりあげる。
※栄花(1028‐92頃)花山たづぬる中納言「さまざまの果物を皆物の形にもりなどして」
③ 酒を飲ませる。
※虎明本狂言・大黒連歌(室町末‐近世初)「酒をもる、三つほどのふで、汝らをたのしうなさうと云て」
④ 毒薬を飲食物に混入する。また、一般に薬を飲ませる。
※説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)七「なにかしちふつの、どくのさけを、おもりあるものならば」
⑤ 寸法や分量を割り出してしるしをつける。めもる。
※日葡辞書(1603‐04)「メ。〈略〉ゴ、シャウギ、ナドノ バンニ メヲ morou(モル)」
⑥ 検地をして石盛(こくもり)を定める。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「杖つきの酔はれた所は盛直し」
※上井覚兼日記‐天正三年(1575)三月二三日「此前者以安も本田因幡入道の下手に被レ盛候と」
さかり【盛】
※万葉(8C後)五・八二〇「梅の花今佐可利(サカリ)なり思ふどちかざしにしてな今佐可利(サカリ)なり」
② (形動) 人が男として、または女として精神的、肉体的に最も充実していること。また、その時期やさま。年盛り。
※万葉(8C後)五・八四七「わが佐可理(サカリ)いたくくたちぬ雲に飛ぶ薬はむともまたをちめやも」
※結城氏新法度(1556)三五条「其所之さかりを何方も願義にて候」
④ 畜類などが一定の時期に起こす発情。多く、「さかりが付く」の形で用いられる。
※俳諧・文車(1772)「声もなく香もなく蝶のさかり哉〈菟莱〉」
さか・る【盛】
〘自ラ五(四)〙
① 勢いが盛んになる。物事の盛りになる。その物の最も充実した時期をむかえる。たけなわになる。
※万葉(8C後)一〇・二二三三「高松の此の峯も狭(せ)に笠立ててみち盛(さかり)たる秋の香のよさ」
② 繁盛(はんじょう)する。時めく。にぎわう。栄える。〔和英語林集成(初版)(1867)〕
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二「再び盛(サカ)る牛店(うしや)の繁昌」
③ 性欲が強くなる。また、鳥や獣が発情する。交尾する。つるむ。
※羅葡日辞書(1595)「Admissura〈略〉トリ、ケダモノノ sacaru(サカル) ジブン、すなわち、ツルム、トツグコトヲ ユウ」
④ はやる。流行する。
※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一一「近頃は西洋主義が盛(サカ)ってきたから」
もり【盛】
〘名〙 (動詞「もる(盛)」の連用形の名詞化)
① 盛りあげること。また、そのものや、分量。
※枕(10C終)一〇八「豆一もり、やをら取りて」
② 土器の小さいもの。物を盛るところからいう。〔随筆・安斎随筆(1783頃)〕
③ 人と、役割・任務・分担費用・所属集団・乗船などの事物との対応関係をつくること。また、その関係。また、その関係を同じくする人または事物の集合。割り当て。割りつけ。配分。配置。なお、衆盛・番盛・船盛など、熟しても用いられる。
※上井覚兼日記‐天正二年(1574)一二月七日「明春御千句之盛被レ成候哉と御尋候」
④ 「もりそば(盛蕎麦)」の略。
※洒落本・古契三娼(1787)「ぶっかけ二つとあつらゆるに、女房が盛(モリ)にし給へとすすめしは」
⑤ 「こくもり(石盛)」の略。〔地方凡例録(1794)〕
さかん【盛】
〘形動〙 (「さかり(盛)」の変化した語)
① たいへんに勢いのあるさま。元気のよいさま。たけなわであるさま。充実したさま。
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)一〇「日の斯(ここ)に隠れて、朗月方に陳するが如し。穆(サカンナル)かな」
② 人として最も元気のときであるさま。年盛りであるさま。
※私聚百因縁集(1257)一「彼の后、齢(よはひ)未だ中半(サカンナラ)ざるに墓無(はかな)く成り給ひにけり」
③ 繁盛するさま。にぎわうさま。また、にぎやかに事を行なうさま。
※交易問答(1869)〈加藤弘之〉上「商売がまたおひおひ盛になって来ました」
④ 広く行なわれるさま。はやるさま。
※俳諧・古学截断字論(1834)上「されど今芭蕉翁の俳諧四海に広りて熾(サカ)んなれば」
せい【盛】
〘名〙 (形動) 勢いよく栄えていること。さかんであること。また、そのさま。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)四「大臣迷惑ながら、白人手前の盛(セイ)に汚なびれた事もいはれず」 〔礼記‐月令〕
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