全然(読み)ゼンゼン

デジタル大辞泉の解説

ぜん‐ぜん【全然】

[ト・タル][文][形動タリ]余すところのないさま。まったくそうであるさま。
「―たるスパルタ国の属邦にあらずと雖も」〈竜渓経国美談
[副]
(あとに打消しの語や否定的な表現を伴って)まるで。少しも。「全然食欲がない」「その話は全然知らない」「スポーツは全然だめです」
残りなく。すっかり。
「結婚の問題は―僕に任せるという愛子の言葉を」〈志賀暗夜行路
(俗な言い方)非常に。とても。「全然愉快だ」

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大辞林 第三版の解説

ぜんぜん【全然】

( 副 )
(打ち消し、または「だめ」のような否定的な語を下に伴って)一つ残らず。あらゆる点で。まるきり。全く。 「雪は-残っていない」 「金は-ない」 「 -だめだ」
あますところなく。ことごとく。全く。すべて。すっかり。 「一体生徒が-悪るいです/坊っちゃん 漱石」 「母は-同意して/何処へ 白鳥
〔話し言葉での俗な言い方〕 非常に。とても。 「 -いい」
( トタル ) [文] 形動タリ 
すべてにわたってそうであるさま。 「実に-たる改革を宣告せり/求安録 鑑三」 〔明治・大正期には、もともと
の「すべて」「すっかり」の意で肯定表現にも用いられていたが、次第に下に打ち消しを伴う
の用法が強く意識されるようになった。近年、
の意で肯定表現を伴って「全然おいしい」などと程度の強調を表す用法が見られるが、これは俗用である〕

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

ぜん‐ぜん【全然】

[1] 〘形動タリ〙 余すところのないさま。全くそうであるさま。
※百一新論(1874)〈西周〉下「陽明に至っては程朱にも輪を掛けた全然たる教門でござって」
[2] 〘副〙
① 残るところなく。すべてにわたって。ことごとく。すっかり。全部。
※黄葉夕陽邨舎詩‐後編(1823)八・頼子成連恵伊丹酒前此見示西遊草賦此併謝「匹似余飲憎甜赤、臭味全然異女児
※牛肉と馬鈴薯(1901)〈国木田独歩〉「僕は全然(ゼンゼン)恋の奴隷(やっこ)であったから」
② (下に打消を伴って) ちっとも。少しも
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五「全然似寄らぬマドンナを双幅見せろと逼ると同じく」
③ (口頭語で肯定表現を強める) 非常に。
※安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉田園ハレム「アプレゲールは全然エライよ」
[語誌](1)近世後期に中国の白話小説から取り入れられ、「まったく」というルビを付けて用いられていた。
(2)明治期に入っても、小説では「すっかり」「そっくり」「まるで」「まるきり」などのルビ付きで用いられていることが多い。二葉亭四迷「浮雲‐二」の「全然(スッカリ)咄して笑ッて仕舞はう」、尾崎紅葉「金色夜叉‐前」の「此家は全然(ソックリ)お前に譲るのだ」、島崎藤村「破戒‐三」の「全然(マルデ)師範校時代の瀬川君とは違ふ」、坪内逍遙「当世書生気質‐一〇」の「先刻桐山から聞いた事をば、全然(マルキリ)鸚鵡石で喋口(しゃべ)りたてる」など。漢語「ぜんぜん」が一般化するのは明治三〇年から四〇年にかけてである。
(3)(2)に挙げた例のルビでもわかるように、「全然」は「すべてにわたって」「残るところなく」「全部」というような意味で、(二)①②のように、もともとは肯定表現にも否定表現にも使うことができた。否定表現との結びつきが強まるのは大正末から昭和にかけてである。
(4)(二)③は、昭和二〇年以後に現われた用法で、肯定表現を伴う点では(二)①と似ているが、①のように「残らず」「全部」の意味は含まず、ある状態の程度を強調するだけの働きである点が異なる。多くの人がこれを奇異な使い方に感じたのは、否定表現を伴わないということだけではなく、(二)①とは違って、「とても」「非常に」と同様、単なる程度強調に使われたということが大きな理由である。

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