普及版 字通 「非(漢字)」の読み・字形・画数・意味
非
常用漢字 8画
[字訓] くし・そむく・わるい・あらず
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 象形
すきの形。左右に細かい歯がならぶ。古くは非余といい、金文の〔友鼎〕〔小臣伝(しようしんでんゆう)〕の賜与の品名にみえる。〔説文〕十一下に「ふなり。飛下する翅(はね)に從ふ。其の相ひ背くを取るなり」と鳥の飛翔の形とするが、その象ではない。非余は〔史記、匈奴伝〕に「比余」といい、また、「比」ともいう。〔倉頡(そうけつへん)〕に「靡(こま)かきものを比と爲し、(あら)きものを(そ)と爲す」とあり、〔説文〕六上に「(しつ)は比(そひ)の名なり」とする。比は比のようにもいうが、非がその象形の字。また仮借して否定の意に用い、金文に〔班(はんき)〕「班、敢て覓(わす)るる」、〔侯鐘(さいこうしよう)〕「余(われ)、敢て(ねいばう)するに非ず」のように用いる。不よりは重い用法であったらしく、非違・非命のように、重く意図的に反することをいう。
[訓義]
1. くし、非余、比。
2. そむく、相反する、とがめる、そしる、せめる。
3. いつわり、わるい、あやまち、よこしま。
4. いな、あらず、しからず、ない。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕非 ウラナフ・トガ・アラヌ・アラズ・ソシル・ミル・アシ・クニ
[部首]
〔説文〕に靡・・など四字を属する。非を比の象として、その意に用いるものはない。むしろ非声の字のうちに、その形義を用いるものがある。
[声系]
〔説文〕に非声として誹・翡・腓・・罪・俳・(斐)・・悲・(扉)・排・匪・蜚・輩など二十七字を収める。おおむね左右相配比する意があり、非の声義を承ける。
[語系]
非・匪piuiは同声。同じく否定に用いる。(微)miuiは声近く、「微(な)くす」意。敵方の媚女(巫祝)をうちすえて、敵の呪力を殺(そ)ぐ共感呪術を示す字である。誹phiuiは〔説文〕三上に「謗(そし)るなり」とあり、誹謗することをいう。不・否piuも否定詞に用いる。このうちは、本来否定の意をもつ語である。
[熟語]
非意▶・非彝▶・非夷▶・非位▶・非為▶・非違▶・非怨▶・非横▶・非幾▶・非企▶・非毀▶・非冀▶・非▶・非議▶・非拠▶・非▶・非計▶・非訐▶・非辜▶・非業▶・非才▶・非材▶・非罪▶・非▶・非次▶・非笑▶・非常▶・非職▶・非心▶・非人▶・非是▶・非聖▶・非短▶・非度▶・非道▶・非徳▶・非薄▶・非駮▶・非罰▶・非非▶・非夫▶・非服▶・非分▶・非病▶・非辟▶・非僻▶・非法▶・非謀▶・非望▶・非凡▶・非命▶・非誉▶・非理▶・非類▶・非礼▶
[下接語]
格非・覚非・姦非・愆非・昨非・邪非・心非・是非・先非・前非・知非・匿非・百非・理非
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報