精選版 日本国語大辞典 「意志」の意味・読み・例文・類語
い‐し【意志】
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意志は多義的な概念で広狭さまざまにとらえられる。日常の語法で意志が〈強い〉とか〈弱い〉と言われるような場合の意志とは,人間が本能的衝動を抑制し,一定の目的意識のもとにある行動を起こしたり持続したりする人間特有の心的能力を指す。この意志が知性や感情といった他の心的機能といかなる関係にあるかという点については,哲学者や心理学者のあいだでも意見が分かれ,それぞれを自立した機能と見る知情意三分法(J.N.テーテンス)や,意志は表象や判断のような知的機能から生ずると考える主知的立場(プラトン,デカルト),意志を感情の一種と見るか,あるいは少なくとも感情によって動機づけられると見る主情的立場(ブント),逆に感情を意志過程の反映と見る立場(W.ジェームズ),意志を自我にかかわる欲求と考える立場(F.E.ベネケ)などさまざまである。そして,この意味での意志が本能的欲求や感情によって動機づけられているか,それともそれらから自立し,ある種の自律性をもつか(カント)という点をめぐって,自由意志の存否が争われてきた。
一方,たとえばショーペンハウアーが〈表象としての世界〉に対して〈意志としての世界〉を究極の実在だと主張したり,ニーチェがあらゆる存在者の根本性格を〈力への意志〉に見たりする場合に考えられている意志は,単に人間のもつ一能力ではなく,広く生命衝動をもふくめた意味での意欲を指す。近代においても,合理主義的・主知主義的傾向の強い英仏の哲学にあっては意志は副次的な能力と見られていたが,ドイツ哲学にはこの意味での意志・意欲を究極の実在と見,したがって世界を生きて生成するものと見る伝統があった。ライプニッツ,カント,シェリング,ヘーゲル,ショーペンハウアー,ニーチェといったドイツの哲学者には,一貫してこうした〈意志の形而上学〉が受け継がれている。
→主意主義
執筆者:木田 元
意志の障害として〈意志薄弱〉がある。〈意志欠如〉という語もほぼ同義に使用されている。これは意志発動と持続力が不足している状態であり,そのために外部からの影響を受けやすく,意図や目的がすぐに変わる。このような状態は異常人格としての意志欠如者や軽佻者においてもっとも典型的にみられる。〈意志欠如者Willenlose〉はK.シュナイダーの精神病質人格の類型の一つであり,〈変温動物のような環境人間wechselwarme Milieumenschen〉(ブロイラー)といわれるように,あらゆる影響に対し自分の意志をもって抵抗することができない性格の人である。悪い方に誘惑されやすいが,またよい感化も受けやすい。教育・訓練には順応し,失敗すればただちに後悔や決意を表明するが,それが長続きしない。一般にのん気で,みずから悩むことはない。人のいうなりになるので扱いやすいが,信用できない。この類型は社会的な意義が大きく,学校のずる休み,家出,浮浪,頻回の転職などから,さらにはずるずると犯罪生活におちこむ場合が少なくない。犯罪としては窃盗,詐欺,横領などの財産犯罪が主である。また浮浪者,売春婦などにこの類型の人をみることがある。〈軽佻者Haltlose〉は社会的な概念といえるが,爽快な基底気分と活動性をもつため,軽率,浅薄なところがあり,享楽をもとめ,誘惑におちいり,付和雷同しやすい。そのために家出,頻回の転職,浮浪,非行,犯罪などの行動に傾きやすい。
→意欲障害
執筆者:小見山 實 なお,法律上は〈意思〉と言うが,これについては〈意思能力〉〈意思表示〉などの項目を参照されたい。
執筆者:編集部
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
価値の感情を伴う目的動機に促され、その目的の実現によって終わる一連の心的プロセスが、普通、「意志」とよばれている。一般に人間の行為は、これから遂行される行為によって実現されるはずの未来のできごと、つまり「目的動機」、および、この目的動機=企図そのものを決定づけた利害、関心、状況判断、性格、習慣等々の「理由動機」とによって説明される。「未来」先取り的な目的動機と「過去」の諸経験に根ざす理由動機とが互いに連結しつつ、行為とよばれるある統一的な連関を形成し、「意志」はその連関を貫通すると考えられている。
しかし、哲学思想史上「意志哲学」と称されるショーペンハウアーやニーチェの哲学によれば、根源の「意志」はいわゆる「動機」をも超えたところで威力を振るい、それゆえ「動機」によっては説明されえない。ショーペンハウアーの『意志と表象としての世界』(1819)によれば、動機は一定の時と場所と状況における意志の発動を説明し、その意味で「動機の法則」は行為に関する一種の根拠律ではあるが、しかしそれは「そもそも意志する」という始原の事実、いわゆる「生への意志」を理由づけ、説明するものではない。
根拠律(理由律)とは、すべて事物や事態がかくかくにあるについては、それに対する十分な根拠(理由)がなければならないというものであり、行為の場合の充足根拠律は、結局、「動機の法則」であるが、ショーペンハウアーによれば、「動機」は個々の経験から推究され、不完全な仕方で合成された人間の(経験的)性格との関係においては、その人間の行為について十分な根拠(理由)づけをなし、説明を与える。しかし、人間が「そもそも意志する」という始原的事実は、まったく根拠律の外にあり、一般に合理性を旨とする科学的認識、根拠律を手引きとする体系的認識をもってしては、主観にとっての客観であるにすぎない「表象」相互の関係(理由と帰結の関係)はとらえられても、表象の世界の根底にある「意志」の世界には届かないのである。
時間空間および因果によって構成される「表象」の根底には、「物自体」である「意志」が渦巻いているとするショーペンハウアー哲学の真髄は、知性の力によっても容易に脱しえない意志衝動の支配下に人間は置かれているという非合理主義的な洞察にあり、西洋哲学思想の主流の伝統=理性主義に反逆するこの洞察は、「力への意志」を説いたニーチェにも受け継がれている。
[山崎庸佑]
『ショーペンハウアー著、斎藤忍随他訳『意志と表象としての世界』(『ショーペンハウアー全集2~6』1972・白水社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…欲動と意志をあわせて意欲という。欲動は自発的に発生する,何かをしようとする衝動であり,緊張した,不快な感情をともなうが,それが解放されると快の感情が生じる。…
…一般に知性よりも意志・意欲――必ずしも人間の意志には限られない――を重視する神学,哲学,心理学上の立場。意志を精神活動の中心に据えるアウグスティヌスや,神における意志の優位を説くドゥンス・スコトゥスの教説は神学上の主意主義である。…
※「意志」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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