デジタル大辞泉 「富」の意味・読み・例文・類語
ふ【富】[漢字項目]
[学習漢字]4年
〈フ〉
1 財産や物がたっぷりとある。とむ。「富強・富豪・富裕/
2 財産でいっぱいに満たす。とます。「富国強兵」
3 豊かな財産。とみ。「富力/巨富・国富」
4 富士山。「富岳」
〈フウ〉とむ。「
〈とみ〉「
[補説]「冨」は俗字・人名用漢字。
[名のり]あつ・あつし・さかえ・と・とます・とめり・とめる・とよ・ひさ・ふく・みつる・ゆたか・よし
[難読]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
富には,分かちがたい二つの要因が関係している。それは一つには幸福,安寧の状態であり,快く安定していることである。したがって,衣食住にかかわる物財が富の条件として必須ではあるが,それ以上に,精神的にどう思うかも大きい要素である。さまざまな欲望を抑制し秩序づけ,この抑制・秩序に意味・目標を与え,価値づけする精神作用が大きいのである。それは各人に固有な具体性を帯びている。〈賢者だけが富者だ〉(キケロ)といった逆説が生まれるゆえんである。語源からいっても,漢字の〈富〉は家中に酒の満々たる酒樽(畐(ふく)は酒樽をかたどっている)がいっぱいにあるということを示し,また英語の〈wealth〉はwell-beingという意味であって,いずれも快の安定的に大きい状態を示唆している。
これだけでなく,富は他に対する優越の関係をも示している。とくに,宝物,貨幣,武器など威力・威信財の所有に関係する。所持しているか否か,どちらが多く保有しているかなど,相対的関係が富の問題である。なにが威信財であるかは社会によって大きく異なっていることがあるが,一社会の中にあっては人々のあいだの比較関係を含んでおり,富は客観的な量によって規定されている。それゆえ富の取得をめぐって人々の生は競争的要素を含むことになる。この点で富は権力,名誉と類似するとともに,富によって権力や名誉を得たり,権力,名誉によって富を得たりというように,富,権力,名誉は相互・互換関係にある。近代ヨーロッパ語のrichesse(フランス語),Reichtum(ドイツ語),richness(英語)のそれぞれの語根は,その語源をさかのぼれば古くは優越,威力,権勢の関係を表していたといわれている。
富を構成するこれら2要因は,ほかに優越しなければ幸福になれない,あるいは互いの物質的生活を適度に確保してやるのでなければ優越,権勢の関係を保つことはできない,といったように,互いに前提しあっている。しかし貨幣経済の発達,資本主義,産業社会の形成は,後者にウェイトをおいた富の観念を普及させて制度化した。そこでは,さまざまの財はそれぞれの交換価値(価格)に擬して富として評価されるようになっただけでなく,貨幣自体が富そのものだと考えられもするようになった。さらに貨幣が容易に広く流通するようになるため,富は広く多くの人々に分散,保有されるようになり,流動性をもつことになった。中世ヨーロッパでは土地を中心に固定的な富の観念が支配的であったが,貨幣経済にあっては土地も売買されるものとして価格評価され,富の,多くのうちの一項をなすにすぎないものとなる。富をめぐる競争は貨幣をめぐる競争となり,富の分布の平準化を伴いつつ,広く激しくなる。それは量的性格を強め客観性を帯びるが,同時に,富の観念を形成する具体的で個性的な側面は希薄となり,質を失い,単なる量にのみ関心が集中する。しかも量の基準をなす貨幣価値までも変化にさらされている現代,富は,国富の推計に表れているように,量としてすらもあやふやである。
執筆者:吉沢 英成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加