勝山(市)(読み)かつやま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「勝山(市)」の意味・わかりやすい解説

勝山(市)
かつやま

福井県東部、大野盆地の北にある機業都市。1954年(昭和29)勝山町と荒土(あらど)、野向(のむき)、遅羽(おそわ)、村岡(むろこ)、北谷(きただに)、北郷(きたごう)、平泉寺(へいせんじ)、鹿谷(しかだに)の8村が合併して市制施行。地名は、平泉寺を焼き討ちした一向一揆(いっこういっき)が拠点の村岡山を勝山と改めたのによる。九頭竜(くずりゅう)川右岸段丘上の現市街は、1580年(天正8)柴田勝安(しばたかつやす)が村岡山の城を移したのに始まり、1691年(元禄4)以降は勝山藩小笠原(おがさわら)氏2万2700石の城下町であった。えちぜん鉄道勝山永平寺線、国道157号、416号が通じ、現在は福井と強く結ばれるが、明治までは谷(たに)峠越えに手取(てどり)川上流の牛首谷(うしくびだに)(現、石川県白山(はくさん)市白峰(しらみね))を後背地とし、牛首紬(つむぎ)や生糸、木材を集散して栄えた。1月の年の市(いち)や2月の左義長(さぎちょう)は当時のにぎわいをいまに伝える。また、藩政以来刻みタバコを特産していたが、1905年(明治38)の専売で廃業補償金を得て機業に転じた。工場はもと市街中心の旧武家屋敷地区に多かったが、近年周辺へ移転し、大型商店も進出して人口停滞都市とは思えぬ活気をみせる。市域内の山村は過疎地で、とくに深雪の北谷は人口減が甚だしい。市街南東方、女神(おながみ)川旧扇状地の平泉寺は奈良時代に泰澄(たいちょう)が開いた白山登拝の基地越前(えちぜん)馬場で、1574年(天正2)一向一揆勢により焼き討ちされるまで、広大な寺領と僧兵をもち、奥越の一大勢力であった。いまは白山神社と旧玄成院(げんじょういん)庭園(国指定名勝)が残り、白山平泉寺旧境内として国の史跡に指定されている。市街北方から大野市和泉(いずみ)地区にかけては奥越高原県立自然公園となっている。長尾山総合公園内には福井県立恐竜博物館がある。面積253.88平方キロメートル、人口2万2150(2020)。

[島田正彦]

『『勝山市史』全3巻(1974~1992・勝山市)』『『勝山の歴史』(1970・勝山市)』


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