将・当(読み)はた

精選版 日本国語大辞典 「将・当」の意味・読み・例文・類語

はた【将・当】

〘副〙 他の事柄と関連させて判断したり推量したり、あるいは列挙選択したりするときに用いる語。
① 事の成否を危惧しながら推量するときに用いる。
(イ) ひょっとして。もしかして。→はたや
万葉(8C後)六・九五三「さ男鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君が当(はた)逢はざらむ」
(ロ) (下に否定語を伴って) まさか。よもや。
※伊勢物語(10C前)六九「女もはたいと逢はじとも思へらず」
② 当然のこととして肯定する気持を表わす。やはり。さすがに。思ったとおり。はたして。
源氏(1001‐14頃)明石「男の御かたち・有様、はたさらにもいはず」
③ 他に考えてもやはり、と肯定する気持を感動的に表わす。
古今(905‐914)夏・一四三「ほととぎす初声聞けばあぢきなくぬし定まらぬ恋せらるはた〈素性〉」
先行の事柄と類似の事柄をさらに想定してみるときに用いる。
(イ) 打消表現と呼応して、それもだめだという気持を表わす。そうはいうものの。しかしながら。
落窪(10C後)四「げにさせばやと思せど、数より外の大納言になさん事は難し。人のはたとるべきにあらず」
(ロ) 二つの事柄のどちらを選ぶか迷う気持を表わす。はたまた。それともまた。あるいは。
※蘇悉地羯羅経略疏寛平八年点(896)「是の諸の行相一人に具せりとや為む、当(ハタ)多人に具せりとや為む」
⑤ 先行の事柄と類似の事柄を列挙するときに用いる。
(イ) それもまた同様であるという気持を表わす。また。同様に。
平中(965頃)一「この男はた宮仕へをば苦しき事にして、ただ逍遙をのみして」
(ロ) さらに類似のことが加わることを表わす。その上にまた。さらにまた。いっそう。
※宇津保(970‐999頃)嵯峨院「例の遊び、はたまして、心に入れてし居たり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android