当てる(読み)アテル

デジタル大辞泉 「当てる」の意味・読み・例文・類語

あ・てる【当てる/充てる/宛てる】

[動タ下一][文]あ・つ[タ下二]
あるものを他のものに触れるようにする。直面させる。
㋐ある物にぶつける。「ボールを頭に―・てる」「的に―・てる」
㋑光・熱・風などに触れさせる。さらす。「日に―・てて布団を乾かす」「鉢植え夜露に―・てないようにする」
㋒密着させる。あてがう。「額に手を―・てる」「継ぎを―・てる」「座布団を―・ててください」
㋓対抗させる。「練習試合で強豪に―・てて実力を試す」
期待やねらいどおりの状態にする。
くじなどで賞を得る。「一等賞を―・てる」
㋑催しや企画などが成功する。「株で一山―・てる」「芝居で―・てる」
㋒正しく推測する。「彼の年齢を―・てる」「小説の途中犯人を―・てる」
他のものに合わせる。うまく振り分ける。
㋐対応させてつける。「外来語漢字を―・てる」
㋑仮にあてはめる。「わが身に―・てて考える」
㋒(充てる)全体の一部をそのために使う。「余暇読書に―・てる」「ボーナス旅費に―・てる」
㋓指名してやらせる。「先生に―・てられる」
㋔仕事や役などを割り振る。「重要なポスト新人を―・てる」
㋕(宛てる)相手に向ける。「母に―・てて手紙を書く」→当てられる
[類語](1ぶつける打ち付ける打ち当てる突き当てる突っかかる突っかける衝突激突命中的中百発百中体当たり一撃打撃強打痛打連打乱打滅多打ち/(3充当する充塡する当てはめる引き当てる補塡補給塡補穴埋め増補拾遺補遺補う追加付加補足補充カバー加味補完相補補訂補綴ほてい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「当てる」の意味・読み・例文・類語

あ・てる【当・中・充・宛】

  1. 〘 他動詞 タ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]あ・つ 〘 他動詞 タ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] 人や動物、物に、他のあるものを接触させる動作・行為全般をいう。この場合、その速度・強さは大きい場合もあれば、小さい場合もある。
    1. 勢いよくぶつける。打ちつける。
      1. [初出の実例]「執金剛神杵を以て之に擬(アツ)」(出典:大智度論天安二年点(858)一〇〇)
      2. 「馬にあてられじと引き退いて、みな船へぞ乗りにける」(出典:平家物語(13C前)一一)
    2. 触れさせる。くっつける。あてがう。
      1. [初出の実例]「ひたひに手をあてて喜ぶことふたつなし」(出典:土左日記(935頃)承平五年二月六日)
    3. 風、光、熱などにさらす。
      1. [初出の実例]「三栗のその中つ土(に)を 頭(かぶ)(つ)く 真火には阿弖(アテ)ず」(出典:古事記(712)中・歌謡)
      2. 「ただ『あらずとも』と書きたるを、廂(ひさし)にさし入りたる月にあてて、人の見しこそをかしかりしか」(出典:枕草子(10C終)二九二)
    4. ある状態に直面させる。
      1. [初出の実例]「もしかかること世にきこえば、きんぢらをさへ罪にあてむといましめ給ひて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    5. 人を扱う。
      1. [初出の実例]「幼少より、兄弟子の太夫達に、つらくあてられた事なく」(出典:浮世草子・傾城禁短気(1711)二)
    6. 他のことにかこつけたりして遠まわしに悪口を言う。非難する。あてこする。
      1. [初出の実例]「Atete(アテテ)、または、atetçuqete(アテツケテ) ユウ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    7. 交渉してととのえる。調達する。
      1. [初出の実例]「剣菱を五合、青蕃椒の奴豆腐で、一杯けづらう。其うち、夕河岸も来るであらう。ちょっと五合、あてて来さっし」(出典:歌舞伎・法懸松成田利剣(1823)大詰)
    8. 飲食物や寒、暑、毒、不快な事や言葉などが、からだや気持に害を与える。多く「あてられる」の形で用いる。
      1. [初出の実例]「種々の毒薬に中(アテ)らるることを被(かが)ふらむに」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)一)
    9. 相手の急所を打って一時気絶させる。当て身をくわせる。
      1. [初出の実例]「きうび先の息合にはたと当(アテ)たる当身のこぶし」(出典:浄瑠璃・唐船噺今国性爺(1722)上)
    10. 男女が、仲のよいところを見せつける。また、のろけ話を聞かせる。多く「あてられる」の形で用いる。
      1. [初出の実例]「『腹の中に箒を立てておきなすって』『当(ア)てられましたかね』」(出典:歌舞伎・鼠小紋東君新形(鼠小僧)(1857)三幕)
    11. ( の意から )
      1. (イ) 座ぶとんを敷く。「どうぞおあてください」
      2. (ロ) 測るために物さしなどを物にあてがう。
        1. [初出の実例]「定木をあつるに中くほなる処定木ありにくき程に、定木を中くほにたむる也」(出典:笠懸聞書(1792))
      3. (ハ) 剃刀(かみそり)で毛をそる。
        1. [初出の実例]「決してあたまに剃刀はあてぬがよい事で厶(ござ)る」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初)
    12. 人に損をかけることをいう、芝居関係者の言葉。
  3. [ 二 ] ある物や人などを、ある状態、用途、方角などに対応させて用いる。また、ある役目、作業などを指示する。
    1. 物事をある目的に使うようにあてはめる。物をある目的、用途に使う。充当する。
      1. [初出の実例]「凡そ水に浄触を分つ〈略〉浄をは非時の飲用に擬(アツ)」(出典:南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)一)
      2. 「羶肉(なまぐさきしし)・酪(らく)のつくり水もって飢渇にあつ」(出典:平家物語(13C前)八)
    2. うまく対応するようにする。また、対応するように分け配る。
      1. [初出の実例]「経一部を一日にあてて、九部なんはじめたりける」(出典:落窪物語(10C後)三)
    3. ある役目や仕事などを担当させる。
      1. [初出の実例]「かくて、その日の御節供(せっく)、よき御庄ある国々の受領(ずりゃう)にあてられたり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
    4. 場所がある方角にあるように位置をとる。
      1. [初出の実例]「山をうしろにし、山をまへにあつ」(出典:平家物語(13C前)七)
    5. ( 「目をあてる」の形で用いる ) ある物に視線を向ける。多く打消を伴って用いる。
      1. [初出の実例]「くさき香(か)世界にみち満ちて、変りゆくかたちありさま、目もあてられぬこと多かり」(出典:方丈記(1212))
    6. 何かをやらせたり、質問に答えさせるために指名する。
      1. [初出の実例]「中(ア)てられさへすれば、必ず起立して訳をつけた」(出典:彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉風呂の後)
    7. 郵便物の送り先の人を指定する。
      1. [初出の実例]「出席の由を幹事へ宛(ア)てて申入れた」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一)
  4. [ 三 ] ねらいや望みをその通りに実現する。
    1. 矢や弾丸などをねらった所にうまくぶつける。命中させる。
      1. [初出の実例]「柳の葉を百(もも)たび射あてつべき舎人(とねり)どもの」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    2. 事実を正しく推測したり計算したりする。また、正しい答えを考えつく。
      1. [初出の実例]「十露盤(そろばん)にあてて見れば」(出典:洒落本・跖婦人伝(1753))
    3. 物事をうまくいかせる。事業、商売、興行などを予定どおりに成功させる。
      1. [初出の実例]「どのしばゐにも、一あてづつあてる事、是藤十郎をまなぶにあらずや」(出典:評判記・役者口三味線(1699)京)
    4. くじや懸賞の催しで、当籤(とうせん)する。
      1. [初出の実例]「佐久間ダム見学記について」(出典:<出典>)

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