デジタル大辞泉 「得」の意味・読み・例文・類語

とく【得】[漢字項目]

[音]トク(呉)(漢) [訓]える うる
学習漢字]5年
〈トク〉
手に入れる。「得点得票獲得既得取得拾得所得生得
もうける。もうけ。「得策得分損得役得余得欲得利得
心にかなう。わかる。「得意得心得得会得感得自得説得体得納得なっとく
〈え〉「得体えたい得手えて
[名のり]あり・なり・のり・やす

とく【得】

[名・形動]
(「徳」とも書く)利益を得ること。もうけること。有利であること。また、そのさま。「一文にもならない」「性分」⇔
成就すること。成功すること。
「つつしめるは―の本なり」〈徒然・一八七〉
仏語浄土に往生し、涅槃ねはん証果を得ること。
[類語]利得両得利益儲け収益利潤利沢黒字得分実益益金利金純利純益差益利鞘マージンゲインプロフィット

え【得/能】

[副]《動詞「う(得)」の連用形から》
(下に打消しの語または反語を伴って)不可能の意を表す。…できない。うまく…できない。
若者挨拶言葉も―言わないような人で」〈有島・溺れかけた兄弟
「数ならぬ身は、―聞き候はず」〈徒然・一〇七〉
可能の意を表す。…できる。うまく…できる。
「面忘れだにも―やと握りて打てども懲りず恋といふやっこ」〈・二五七四〉

う【得】

[動ア下二]え(得)る」の文語形

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「得」の意味・読み・例文・類語

とく【得】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 得ること。なすことの叶うこと。成就すること。
    1. [初出の実例]「一とせの行幸の後、又見参らせばやと、ゆかしくおもひ参らするに、そのとくなければ」(出典:讚岐典侍(1108頃)上)
    2. [その他の文献]〔春秋左伝‐定公九年〕
  3. ( 「徳」とも ) もうけ。利益。利得。
    1. [初出の実例]「時の受領は、世にとく有物といへば、只今そのほどなめれば、つかうまつらむ」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. 「我儘をするやうでゐて、実は帳場に得(トク)の附くやうにする」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一)
    3. [その他の文献]〔漢書‐項籍伝〕
  4. ( 形動 ) 有利であること。便利であること。また、そのさま。
  5. ( [梵語] prāpti の訳語 ) 仏語。衆生(しゅじょう)が身に得たものを失われないようにつなぎとめておく力をいう。逆に身から離れさせる力を非得という。〔倶舎論‐四〕
  6. 仏語。真宗で、因位のとき得ることを獲というのに対し、果位において得ることをさしていう。信を得るのは獲、極楽往生してさとりを得るのは得である。
    1. [初出の実例]「獲の字は因位のときうるを獲といふ、得の字は果位のときにいたりてうることを得といふなり」(出典:三帖和讚(1248‐60頃)正像末)

え【得・能】

  1. 〘 副詞 〙 可能の意を表わす。
  2. あとに肯定表現を伴って用いる。よく…できる。→えも
    1. [初出の実例]「知る所も無く、怯(つたな)く劣(をぢな)き押勝が、得(え)仕へ奉るべき官にはあらず」(出典:続日本紀‐天平宝字四年(760)正月四日・宣命)
  3. あとに否定や反語の表現を伴って用いる。とても…できない。否定表現を省略することもある。
    1. [初出の実例]「しかすがに 黙然(もだ)も得(え)あらねば わが背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど」(出典:万葉集(8C後)四・五四三)
    2. 「ふかき夜のあはればかりは聞きわけど琴よりほかにえやはひきける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)横笛)
  4. が固定したため、必ずしも「え」を必要としない、可能の意味をもつ表現の前にも強調的に用いることがある。
    1. [初出の実例]「山一つあなたで御ざらば、馬上でなくは得参られますまい」(出典:虎寛本狂言・縄綯(室町末‐近世初))

得の語誌

もともと単に可能の意を表わし、否定表現との呼応は徐々に慣習化して固定した。この流れが、現代関西方言の「よう…ん」に連なっている。


どく【得・徳】

  1. 〘 造語要素 〙
  2. 動詞の連用形に付いて、そうすると利益を得る、また、そうした結果有利になった意を表わす。「買い得」「ごね得」
  3. 名詞や形容詞の語幹などに付いて、そのことが利点となる意、また、そのことを利用する意を表わす。
    1. [初出の実例]「我れがなれがとたがいにことばをいやしうたがいに云て、心安すどくにあいしらうことを云ぞ」(出典:玉塵抄(1563)四四)

うる【得】

  1. ( 動詞「える(得)」の文語的な言い方で、本来は「う(得)」の連体形であるが、現在では終止形としても使われる ) ⇒える(得)

う【得・獲】

  1. 〘 他動詞 ア行下二段活用 〙える(得)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「得」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] トク
[字訓] うる・とる・さとる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
彳(てき)+貝+(又)(ゆう)。彳は行路。は手。他に赴いて貝貨(財産)を取得することをいう。卜文の字形は貝をもつ形。〔説文〕二下に「行きて得るるなり」とみえる。金文に「之れを得たり」というのは獲得の意。〔左伝、定七年〕「用をるを得と曰ふ」とあり、本来財貨を収奪し、獲得することをいう。また贖(とく)と通用し、古くはその義があった。

[訓義]
1. うる、とる、手に入れる、むさぼりとる。
2. あたる、かなう、とげる。
3. さとる、わかる、しる。
4. 贖・悳(とく)・徳と通じ、あがなう、恩に思う、めぐむなどの意に用いる。
5. 動詞の下に語詞的に加えて用いる、記得、料得など。

[古辞書の訓]
名義抄〕得 ウ・ホシイママ 〔字鏡〕得 ホシイママ・ウ・エタリ

[声系]
〔説文〕八下に「(とく)は取るなり」とあり、字をに作るが、見は貝の誤り。は得の初文。得は金文において贖の意に用いることがある。

[語系]
得・・悳・(徳)tkは同声。もと同じ語源の語であろう。jiok、贖djiokも声義近く、得はまた贖の意に用いる。

[熟語]
得安・得意・得一・得・得過・得解・得閑・得間・得挙・得業・得極・得君・得幸・得采・得罪・得策・得志・得旨・得時・得失・得実・得手・得終・得所・得勝・得色・得職・得心・得勢・得喪・得脱・得中・得・得度・得道・得得・得能・得民・得名・得利・得理
[下接語]
会得・得・獲得・学得・感得・記得・帰得・求得・計得・見得・後得・得・購得・自得・写得・取得・収得・拾得・修得・習得・所得・心得・新得・生得・性得・説得・損得・体得・貪得・知得・独得・納得・能得・買得・余得・利得・留得・了得・両得・料得・領得

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