秘密(読み)ひみつ

精選版 日本国語大辞典 「秘密」の意味・読み・例文・類語

ひ‐みつ【秘密】

〘名〙
① (「秘奥深密」で容易に示さない教えの意) 仏語
(イ) 仏が理由があって、はっきりそれと示さないで説くこと。密意。〔大智度論‐一〇〇〕
(ロ) 天台宗で説く化儀の四教の一つ。仏が、聞く人たち相互の間に互いに何を聞いたか知らせないようにして説いた教えのこと。秘密教
※中右記‐天永二年(1111)三月二四日「仍有此事者。秘密之習、他人不是非也」 〔天台四教儀〕
(ハ) 真言の教え。その秘奥な教義内容などをいう。密教。秘密教。
※観智院本三宝絵(984)下「いただきのうへに水をうけたる心の中に花をなげむ事煩しきににたれども秘密のふかき道なれば」
(ニ) 特に、真言陀羅尼をいう。〔大宝積経‐七〕
② 人に知らせない奥の手。秘法。秘術
※浄瑠璃・国性爺合戦(1715)九仙山「日本ひみつの炮烙火矢」
③ (形動) (━する) 公にしないこと。隠して他におしえないこと。また、その事柄やさま。
菅家文草(900頃)四・題南山亡名処士壁「秘密郷村与姓名、年顔朽邁意分明」
浮世草子日本永代蔵(1688)四「本紅(ほんもみ)の色にかはらぬ事を思ひ付、是を秘察(ヒミツ)して染込
※ひかげの花(1934)〈永井荷風〉六「此晩のことはそれなり秘密に葬られてしまった」

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デジタル大辞泉 「秘密」の意味・読み・例文・類語

ひ‐みつ【秘密】

[名・形動]
他人に知られないようにすること。隠して人に見せたり教えたりしないこと。また、そのようなさまやそのような事柄。「秘密をもらす」「秘密にする」
「云わば―な悪事でもそそのかすように」〈谷崎・魔術師〉
一般に知られていないこと。また、公開されていないこと。「古代史秘密
人に知らせない奥の手。秘訣ひけつ。「成功秘密
仏語。
㋐深遠・微妙で容易に知りがたい奥義。
㋑ある隠された意味をもって説くこと。密教で大日如来の説法などをいう。
真言宗の教義。密教。
[補説]書名別項。→秘密
[類語](1内密内証ないしょ内証ないしょう内内ないない隠密おんみつ極秘ごくひ厳秘げんぴ丸秘まるひ機密枢密すうみつ天機機事密事秘事暗部隠し事秘め事みそか事秘密裡内緒内分非公開非公式暗に暗暗裏人知れず陰ながら秘中の秘こっそり忍びやかそっと内内うちうち内内ないない内輪内部内密内幕内裏うちうら内証内聞内情内実隠密おんみつ極秘ごくひ厳秘げんぴ丸秘まるひ機密枢密すうみつ天機機事密事秘事暗部内緒ないしょ(形動用法で)ひそみそ秘めやか

ひみつ【秘密】[書名]

東野圭吾長編小説。平成10年(1998)刊。第52回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞交通事故死した妻の魂が娘の体に宿ってしまったことから、夫と父という二つの立場で葛藤する男の姿を描く。滝田洋二郎監督による映画化作品のほか、テレビドラマ化作品がある。

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普及版 字通 「秘密」の読み・字形・画数・意味

【秘密】ひみつ

人に秘めかくす大事。〔晋書、劉隗伝〕元~豪強を排抑(はいよく)せんと欲す。~隗(くわい)、外に在りと雖も、の祕密は、皆豫(あらかじ)め之れを聞く。

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デジタル大辞泉プラス 「秘密」の解説

秘密〔小説:東野圭吾〕

①東野圭吾の長編ミステリー。1998年刊行。第52回日本推理作家協会賞受賞。
②1999年公開の日本映画。①を原作とする。監督:滝田洋二郎、脚本:斉藤ひろし。出演:広末涼子、小林薫、石田ゆり子、金子賢、伊藤英明、篠原ともえ、岸本加世子ほか。
③①を原作とする日本のテレビドラマ。放映はテレビ朝日系列(2010年10月~12月)。全9回。脚本:吉田紀子。音楽:溝口肇。出演:志田未来、佐々木蔵之介ほか。ミステリー。

秘密〔映画〕

1952年公開の日本映画。監督:久松静児、原作:中村八朗、脚本:井手俊郎、音楽:斎藤一郎。出演:千田是也、田中絹代、宮城野由美子、若尾文子、東野英治郎ほか。第7回毎日映画コンクール音楽賞受賞。

秘密〔小説:P・D・ジェイムズ〕

英国の作家P・D・ジェイムズのミステリー(2008)。原題《The Private Patient》。「アダム・ダルグリッシュ警視」シリーズ第14作。

秘密〔ドラマ〕

TBS系列放映による日本の昼帯ドラマ。花王愛の劇場。1982年3~5月放映(全40回)。原作:松山善三。出演:上村香子、原田大二郎、黒田福美ほか。

秘密〔小説:ケイト・モートン〕

オーストラリアの作家ケイト・モートンのミステリー小説(2012)。原題《The Secret Keeper》。

秘密〔小説:池波正太郎〕

池波正太郎の時代小説。1987年刊行。

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