(読み)ヨク(その他表記)wing

翻訳|wing

デジタル大辞泉 「翼」の意味・読み・例文・類語

よく【翼】

[名]
鳥のつばさ。羽翼うよく
航空機の機体から左右に張り出した部分。主翼尾翼など。
軍隊の陣形で、左右に張り出した部分。運動競技の陣形などにもいう。「右」「左
動物の骨や植物の種子・茎などで、つばさのように薄く張り出した部分。
プロペラ・タービンなどの、断面が航空機の主翼の断面と同じ形をした羽根。
二十八宿の一。南方の第六宿。コップ座αアルファ星と海蛇座の22星。たすきぼし。翼宿。
[接尾]助数詞。
鳥のはね、また、鳥の数を数えるのに用いる。
「羽二―、鹿の角四頭」〈延喜式・四時祭上〉
船を数えるのに用いる。
「毎歳商船二―を支那の広東に送り」〈輿地誌略・四〉

よく【翼】[漢字項目]

常用漢字] [音]ヨク(漢) [訓]つばさ たすける
鳥のつばさ。「羽翼鶴翼かくよく比翼
飛行機のはね。「銀翼主翼尾翼
つばさのように左右に張り出たもの。「鼻翼最右翼左翼手
力を添えて助ける。「翼賛翼成扶翼
[名のり]すけ・たすく

つばさ【翼】

鳥類の空中を飛ぶための器官。前肢が変形したもので、先端から初列風切り羽が10枚ほど、次列風切り羽が6~30枚並び、その上面に雨覆い羽が並ぶ。
飛行機の左右に突き出たよく。また、飛行機。
[類語](1/(2主翼尾翼両翼銀翼回転翼

つばさ[列車]

山形新幹線で運行されている特別急行列車の愛称。平成4年(1992)運行開始。通常、東京・福島間は東北新幹線やまびこ」の下り側に連結されて走り、福島・新庄間は単独で走行する。

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精選版 日本国語大辞典 「翼」の意味・読み・例文・類語

よく【翼】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 鳥のはね。また、飛ぶ虫のはね。つばさ。羽翼(うよく)。〔易経‐明夷卦〕
    2. 軍隊などの陣形で、中央から左右に張り出した部分。本隊の左右の部隊。鳥のひろげたつばさの部分に相当するところからいう。また、運動競技の陣形などにもいう。〔五国対照兵語字書(1881)〕 〔史記‐李牧伝〕
    3. 船。水に浮かんで進む様子が、鳥がつばさをひろげて空を飛んで行く姿に似ているところからいったもの。
    4. 飛行機、弾丸、ロケット、また水中翼船などの、揚力や空中での安定力をもたらす機能をつかさどる部分。飛行機では、機体から左右に伸びる主翼と、機体の後部にある尾翼とがある。多く飛行機のものをいうところから、飛行機そのものをもいう。つばさ。銀翼。
      1. [初出の実例]「なんなく越ゆる銀の翼(ヨク)」(出典:国民歌謡・航空唱歌(1938)〈西条八十〉)
    5. 一般に、物の左右に張り出した部分。多く、建物などにいう。
      1. [初出の実例]「同じホテルの他翼の部屋ではなかった」(出典:黒い環(1967)〈石原慎太郎〉弾痕)
  2. [ 2 ] 二十八宿の、南方七宿の一つ。コップ座のアルファ星付近の星宿。翼宿。たすきぼし。
    1. [初出の実例]「廿八宿〈略〉奎婁胃昴觜参(西)井鬼柳星張翼(南)」(出典:二中歴(1444‐48頃か)五)
    2. [その他の文献]〔礼記‐月令〕
  3. [ 3 ] 〘 接尾語 〙
    1. 鳥のはね、また、鳥の数をかぞえるのに用いる。
      1. [初出の実例]「弓七張、箟二連、鹿皮十張〈已上三種神祇官充〉羽二翼、鹿角二頭」(出典:延喜式(927)一)
    2. 船をかぞえるのに用いる。艘(そう)。隻(せき)
      1. [初出の実例]「毎歳商舶二翼を支那の広東に送り」(出典:輿地誌略(1826)四)
      2. [その他の文献]〔顔延之‐車駕幸京口三月三日侍遊曲阿後湖作詩〕

つばさ【翼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 鳥類の身体の部分の名称。爬虫類の前肢が変形して飛翔器官となったもの。後方に向かって生えた二〇~四〇枚の大きな羽毛(風切羽)とその基部を上下から覆うようにある多数の小さい羽毛(雨覆)と前肢とから成る。
    1. [初出の実例]「天飛ぶや雁の翅(つばさ)の覆羽(おほひば)の何処(いづく)漏りてか霜の降りけむ」(出典:万葉集(8C後)一〇・二二三八)
    2. 「名は翼(ツハサ)無くして長く飛び、道は根無くして永く固し」(出典:大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)七)
  3. 転じて、鳥。鳥類。
    1. [初出の実例]「天をかけるつばさ、地を走る獣まで、道がなければ来る事なし」(出典:御伽草子・酒呑童子(室町末))
  4. 飛行機の翼(よく)。また、飛行機。
    1. [初出の実例]「世界に誇る荒鷲の 翼(ツバサ)伸ばせし幾千里」(出典:軍歌・加藤隼戦闘隊(1943)〈田中林平〉)
  5. 飛翔すること。あたかも空中をかけるように自在であることを象徴的にいう。
    1. [初出の実例]「自分はふと頭を挙げて、眼を半ば閉ぢ夢想の翼(ツバサ)を空瞑に放った」(出典:帰去来(1901)〈国木田独歩〉一〇)
  6. 左右にあってささえるもの。補佐するもの。つばさの臣。
    1. [初出の実例]「翊(ツハサ)其の左右に侍して」(出典:大日経承暦二年点(1078))

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改訂新版 世界大百科事典 「翼」の意味・わかりやすい解説

翼 (よく)
wing

羽根,つばさともいう。空気など流体の中を動き,または風や流れを受けたとき,大きな揚力を発生することをおもな目的としたもので,航空機を空に浮かべる役割を果たす。航空機のうち飛行機やグライダーの翼は機体と一体となっており,機が前進すると風が当たって揚力を生ずるもので,固定翼と呼ばれる。これに対しヘリコプターなどの翼は軸に取りつけられ,回転させると風が当たり揚力が出るもので,回転翼あるいはローターという。固定翼機は一般にある速度以下では揚力が不足で飛べず離着陸に地上滑走を必要とする。回転翼機は翼を動力で回せば機が止まっていても揚力を作れるので空中停止や滑走なしの発着もできる。しかし回転翼機は高速では後退側の翼の空気との相対速度が低くなるため,ある程度以上の高速飛行はむずかしい。以下では航空機の固定翼について述べ,回転翼については〈ヘリコプター〉の項目を参照されたい。

翼に限らず物体が空気中を動くと,空気抵抗を受けると同時に,多くの場合大なり小なり上向きか下向きの空気の力も受ける。そこで動く物体に働くこれらの空気力を,進行方向に平行な抗力(抵抗といってもよい)と直角な揚力とに分けて考える。翼は他の物体に比べ,とくに大きな揚力が発生し,逆に抗力は小さく,揚力が抗力の数十倍にも達する。これは翼が板状でそれを適度な迎え角で動かすからでもあるが,翼型のくふうによるところが大きい。

翼型はふつう抵抗を減らすため魚のような形をしているほか,全体が上に反っていて上面が下面よりふくらんでいるものが多い。ところで物体が動くときの周囲の空気のようすは,物体が止まっていて前から風を受ける場合も同じで,そのほうが理解しやすい。空気はまず前縁のやや下方に当たって(この点を岐点といい,その位置は迎え角により異なる)いったん止まった後,上下に分かれて流れ,翼型のふくらんだ湾曲部を通るときは,もとの風速よりも速くなって,後縁でほぼもとの風速に戻る。このとき湾曲の強い上面では風速はとくに速くなり,翼型や迎え角によって異なるが,ときには2倍以上になる(図1)。ところで連続した流れの中では流速が増す(動圧が増す)と圧力(静圧)が下がり,流速が減ると圧力が上がる(ベルヌーイの定理)。したがって,風速の速くなる翼上面では下面より圧力が低くなるので,上下の圧力差で翼は吸い上げられ,これが揚力となる。翼型によっては下面がへこんでいるが,そこでは風速が下がって圧力が上がり,翼を押し上げ揚力を増す。このように揚力は翼上面の風速が下面より速くなるためできるのであって,原理的にはボールを回転させて投げるとカーブするのと同じである。
飛行機

上下対称の翼型を対称翼という。対称翼や平板は迎え角0度では揚力を生じないが,迎え角を増して前縁を上げていくと,空気の流れ方が,上面の湾曲が下面より強い翼型と似てきて揚力を生ずる。上面の湾曲が強い翼型や反った板では揚力が0になるのは下向きの迎え角のとき(0度から-6度くらいまでの間で,湾曲が大きいほど下向きになる)で,このときの迎え角を零揚力角あるいはゼロ揚力角zero lift angleといい,これより前縁を上げると揚力が出始める。揚力は迎え角を増すほど大きくなるが,迎え角を大きくしすぎると気流が翼上面についていけなくなり,途中ではがれて渦を巻くので,揚力が逆に減ってしまう。これを失速stallと呼ぶ。翼が失速すると機は急に下降したり横に傾きやすくなるので,ふつうは失速しない範囲の迎え角(翼によって違うが15度くらいまで)で飛ぶ。

 翼に働く揚力をL,抗力をDとすると,LClqSDCdqSという式で表せる。Sは翼面積(m2),qは空気の動圧つまり飛行速度での正面面積1m2当りの風圧で,飛行速度をv(m/s),空気の密度をρ(kgs2/m4)として,q=ρv2/2である。Clを揚力係数lift coefficient,Cdを抗力係数drag coefficient(または抵抗係数)といい,その値は翼の形や迎え角で変わる。迎え角αを横軸にグラフをかくと,揚力係数Clは零揚力角α0lから失速が始まるまで,ほぼαに比例して直線的に増す(図2-a)。その傾斜(揚力傾斜slope of lift curveという)は翼型に関係なく平面形で決まり,低速度ではアスペクト比無限大の直線翼でCl=2π(α-α0l)に近くなる(この場合のαの単位はラジアン)。アスペクト比が小さくなるほど揚力傾斜は小さくなり(図2-b),同じ揚力係数を出すのに大きな迎え角を必要とするようになり,アスペクト比2の翼ではCl=π(α-α0l)に近くなる。また後退翼や前進翼では直線翼より揚力傾斜が減る。揚力係数の最大値(最大揚力係数Clmax)は翼型により異なり1.0~1.8程度であるが,高揚力装置をつければもっと大きくできる。一方,抗力係数Cdは迎え角が小さい領域(翼型の反りによって異なり対称翼では0度)で最小になり,それより迎え角が小さくなっても大きくなっても二次曲線的に増す(図2-a)。揚力が抗力の何倍出るかを示す揚抗比Cl/CdL/D)は,抗力係数が最小となる迎え角より若干大きい迎え角で最大になるが,その値は翼型や平面形で異なる。飛行機は,最高速度を出すには抗力係数が最小となる迎え角で,また燃料消費を減らして長距離を飛ぶには揚抗比が最大となる迎え角で飛ぶのがよい。

翼端では下面の空気が圧力の低い上面へと回り込むので渦(この渦を翼端渦wing tip vortex,または後引き渦trailing vortexという)ができ(図3),この翼端渦に誘導されて翼を通過する気流はやや下を向く。アスペクト比の小さい翼ほど翼端渦の影響が強く気流が下向きになり,前記の同じ揚力を出すのに大きな迎え角が必要となるのはこのためである。揚力も気流に直角にやや後ろを向くので,その水平成分が抵抗となる。これを誘導抗力induced dragといい,揚力発生の副産物で,揚抗比を上げるにはまずこれを減らす必要がある。それには翼のアスペクト比を増し翼端渦を左右に離すほどよいので,輸送機など航続性能や積載能力が要求される機種はアスペクト比7~12,グライダーは20~30もの細長い翼にしている(図4-a)。しかしアスペクト比を増すと翼の構造が重くなり,突風を受けたときのゆれが増し,急な横転運動がしにくくなる不利もある。軽飛行機の翼はアスペクト比6前後であるが,このへんがもっともふつうな翼である。

 一方,音速近くでの抵抗急増や飛行性の急変を和らげるにはアスペクト比の小さい翼がよく,超音速で生ずる造波抵抗を減らすには前後に細長い翼がよい(図4-b)。そこで超音速戦闘機などにはアスペクト比2~4程度の太く短い翼が使われる。アスペクト比がほぼ2以下の翼は,揚力がおもに前縁付近に発生し,後退角の強い前縁の上には渦ができ(図3),この渦が大迎え角では揚力を増す作用をするなど,アスペクト比の大きい翼とは異なる性質を示す。超音速では揚力傾斜がClに近づき,アスペクト比による誘導抵抗の差がしだいに減る。

昔の人々は翼を羽ばたいて揚力と推力を作り飛ぼうとしたが,これはむずかしかった(今日でも人が乗る羽ばたき飛行は成功していない)。翼による飛行の可能性が開けたのは1800年代初期イギリスのG.ケーリーの,固定翼で揚力を出し推進装置は別に設けるとの提唱からといえる。固定翼飛行は1890年代のドイツのO.リリエンタールの滑空飛行や1903年のアメリカのライト兄弟の動力飛行で実現した。これらに始まる初期の航空機の翼は,反りのある薄い翼型がよいとされ(図5),強さを外の支柱や張線で保った。この場合,上下の翼で一体の架構に組める複葉が構造上有利なので,第1次世界大戦時と戦後の1910~20年代は複葉機が主流だった。だが一方で翼を厚くしても空力的に不利はないとの判断から,内部の骨組みで強度を保てるような厚翼とし,外の支柱や張線を廃して抵抗を減らした片持ち式構造の単葉機も作られ始めた。20年代に外板と骨格で強度を保つセミモノコック構造様式が開発されると,空力的に有利な片持ち式単葉翼が構造上も有利となり,30年代には飛行機の主流がこの形式に統一され今日に及んでいる。

 この間各国の航空研究機関が,風胴を使って翼型を作り航空機の設計に大きな役割を果たすようになった。なかでもアメリカのNACA(NASAの前身)が作った翼型の系列はその代表である。40年代初めには層流翼型laminar airfoilが実用化された。これは翼表面の気流の境界層をなるべく後方まで層流に保ち,乱流境界層に変わるのを遅らせて摩擦抵抗を減らした翼型で,その後の亜音速機はこの翼型が主流となった。

 第2次大戦中にジェット機が実用化され飛行速度が音速に近づくと,抵抗の急増や飛行性の急変の問題が起こった。これは翼面の流速が,飛行速度が音速になる以前に音速を超え,強い衝撃波ができて気流がはがされるためなので,それがなるべく音速(飛行速度)近くまで起こらないように,高速機には薄い反りの小さい翼型が選ばれた。また50年代末から,翼面の流速が多少音速を超えてもまだ強い衝撃波を発生させず,抵抗急増を遅らせることができる翼型が使われ始めた。ピーキー翼型peaky airfoil,スーパークリティカル翼型super critical wingなどがこれに属し,遷音速翼型とも総称される。

 超音速飛行は1947年に実現した。超音速では翼は薄く前縁の鋭いものがよく,また超音速では空気は圧縮性で自由に体積が変わるので機体表面に角があってもそれについて流れることができ,理想的な翼型は平板で,次は薄い菱形である。しかし超音速機といえども亜音速飛行もするので,一般の翼型を薄くした形が実用され,翼厚比は亜音速機の十数%,遷音速機の10%内外に対して,超音速機はふつう5%以下である。

飛行機の翼は,その役割,胴体との位置関係,数,平面形などによってさまざまに分類される。

主翼main wingは機の重心付近に設けられ,飛行中に機の重量を支えるための揚力の発生がおもな目的で,横安定を保つ働きもある。単に翼といえばこの主翼を指す。尾翼tail unitは機の尾部にあって,機のつりあいと安定を保つのがおもな目的で,機の縦(前後傾斜)のつりあいと安定を保つ水平尾翼horizontal tailと,機の方向の安定を保つ垂直尾翼vertical tailをもつのが一般であるが,両者を兼ねたV尾翼をもつ航空機もある(図6-a)。

 翼は機の重心より後ろに取りつけると風見と同様に働き,機がゆれて重心を中心に回転したとき,それをもとにもどそうとする安定作用をする。水平尾翼を前方に取りつけた航空機もあり,これを前翼(先尾翼またはカナードcanard)という。前翼は機のつりあいを保つ働きはするが,重心より前にあるので縦安定作用はなく,逆に機を不安定にしようとする。そこで前翼機を空力的に安定にするには,主翼を重心よりやや後ろに置いて,主翼に縦安定作用をさせる。翼の前後位置を重心に近づけたとき,安定作用が中立になるのはその空力中心を重心に合わせた場合で,ふつうの飛行機の主翼はほぼこの位置にある。しかし主翼を空力中心が重心よりやや後ろにくるように取りつければ,尾翼なしでも主翼だけで縦安定を保つことができ,無尾翼機が作れる。ただし無尾翼機は重心と空力中心がずれていても縦のつりあいがとれるように主翼の形にくふうが必要で,後退翼としその翼端をねじり下げるか,三角翼としその後縁の舵面を上げて,前のめりになるのを防いだ例が多い。無尾翼機の翼内に乗員などを収容し胴体を省略した航空機を全翼機と呼ぶ。前翼機や無尾翼機でも,空力的な方向安定をもつには,垂直尾翼を後部に取りつける必要がある。ただし後退翼や三角翼はそれ自身若干の方向安定性があるので,胴体が小さければ垂直尾翼を省略できる場合もある。

低翼は主翼を胴体の下部に,中翼は中ほどに,高翼は上部に,それぞれ取りつけた場合をいう(図6-b)。翼を胴体より上に離してあるものを高翼,胴体上部にあるものを肩翼と呼んだこともある。上下位置による性能上の差はあまりなく,機体構成上どれがつごうよいかで選ばれることが多いが,胴体の空力的影響により,翼の上反角による横安定作用が,高翼では強まり,低翼では弱まる。そこで低翼機は上反角を大きくし6度程度つけるが,高翼機は横安定が強過ぎてもよくないので0度程度が多く,下反角をつけたものもある。

翼が上下2枚あるものを複葉,1枚のものを単葉と呼ぶ(図6-c)。複葉は前述のように主として構造上の理由から1910~20年代には飛行機の主流型式となり,また機全体の寸法を小さくできて機の自転運動がしやすくなることから,翼が上下3枚の三葉機まで作られた。しかし上下の翼の圧力の相互干渉で揚力に若干のロスがあり空力的に損なので,構造上複葉にする必要がなくなってからはほとんど使われていない。

翼弦長が一定の長方形の翼を矩形翼,付け根より翼端が細い台形の翼をテーパー翼(先細翼)と呼ぶ(図6-d)。テーパー翼は翼の構造を軽く作るのに有利で翼内の燃料タンクの容積も大きくなるが,あまり翼端を細くしすぎると翼端失速を起こしやすくなるので,アスペクト比の小さい翼を除けば,ふつうテーパー比を0.25以上としている。矩形翼は構造重量の点では不利だが工作が簡単で翼端失速も防げるので,軽飛行機に例が多い。前後縁が曲線の楕円翼は同じアスペクト比で比べると誘導抗力を最小にできるので1930~40年代によく使われたが,テーパー比0.3~0.5のテーパー翼と比べその差はわずかで,工作がやっかいなので,現在はすたれた。

翼を上から見て,飛行方向(あるいは胴体)にほぼ直角に取りつけられた翼を直線翼,斜め後ろ向きの翼を後退翼,斜め前向きの翼を前進翼と呼ぶ(図6-e)。飛行速度が音速に近づくと,翼面に強い衝撃波が発生して気流がはがされ,抵抗の急増や飛行性の急変が起きる。翼を斜めに置くと,これらの現象が起きるマッハ数を,ほぼΛは後退角または前進角)に比例して上げることができ,発生後も和らげる効果がある(図7)。前進翼は1970~80年代に構造に複合材が使えるようになってから見直されているが,それまでは構造的にむずかしくほとんど使われなかった。そこで高速ジェット機にはおもに後退翼が使われているが,直線翼に比べ翼端失速を起こしやすく,低速での飛行性も劣り,構造も重くなるので,音速近くで飛ばない低速機には直線翼のほうがよい。そこで翼を高速では後退翼に,低速では直線翼に回転させる構造とした可変翼(可変後退角翼)機も1960年代に実用化された。可変翼variable geometry wingはVG翼とも呼ばれ,構造,機構が複雑で重量はかさむが,翼の回転により後退角のほかアスペクト比と翼厚比も同時に変えられるので,高速から低速まで飛行状態に適した翼の形にできる。斜め翼は左右一体の可変翼を一方は後退翼,他方は前進翼となるように回転させる翼で,両翼とも後退翼あるいは前進翼とする場合よりも翼全体を前後に長く分布させ,超音速での造波抵抗を減らし揚抗比を上げるのがねらいである。
超音速飛行

音速を超えるときの抗力の急増や飛行性の急変を和らげるには,翼を薄くし後退角を増すほかに,アスペクト比を小さくすると効果がある。また超音速で生ずる造波抵抗を減らすには,翼を前後に細長い形とするほか,できれば前縁の後退角を衝撃波の角度以上に鋭くするのがよい。そこで鋭い後退角と小アスペクト比の組合せで得られる三角翼delta wing(デルタ翼ともいう)が,超音速機に多く用いられている(図6-f)。三角翼はその空力中心が,亜音速でも超音速でも空力平均翼弦の約50%(中央翼弦の前から約2/3)にあって,あまり動かないという利点もある。一方,三角翼の欠点の一つはアスペクト比が小さいので誘導抗力が大きいことである。そこで造波抵抗も誘導抗力もともに減らして揚抗比を高めるために,翼を前後にも左右にも細長くした形として,三角翼の後部を切り取り翼端を延長した矢形翼も超音速機に見られる。ただし矢形翼のように後退角とアスペクト比をともに大きくすると,翼端失速を起こしやすくなってピッチアップ(大迎え角で急に機首が上がる)を発生しやすくなるので注意がいる。また三角翼はアスペクト比が小さいので揚力傾斜が小さく,離着陸など大きな揚力係数を必要とするときには極端に機首を上げなければならない欠点がある。しかし三角翼では大迎え角で前縁上面に安定した渦ができ,これが揚力を増し失速を防ぐ特徴があり,この性質はアスペクト比を小さくするととくに強くなる。そこで大小2種のアスペクト比の三角翼を組み合わせ,低速から高速までの性能をよくした二重三角翼(ダブルデルタ翼)をもつ機体もある。アスペクト比の大小による揚力傾斜の差は,亜音速では大きいが超音速ではしだいに減るので,二重三角翼の前方部分は,超音速では揚力の分担割合が増す。また一般の三角翼は亜音速と超音速では空力中心の移動が若干あるが,二重三角翼は上記の性質を利用して移動をごく小さくできる。なお,二重三角翼の平面形を曲線的にしたものをオージー翼ogee wingと呼ぶこともあり,また鋭い三角翼で発生する渦が大迎え角まで失速を防ぎ揚力を増す性質を利用して,三角翼を一般のアスペクト比のやや大きい翼と組み合わせた平面形もあり,この場合,前方の三角翼部分をストレーキstrakeと呼ぶ。なお,これらの翼を胴体とまとめて一体として空力設計したものは翼胴一体化blended wing-bodyと呼ばれ,一般に翼と胴体との境目がなだらかになる。
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翼 (つばさ)
wing

飛行のために変形した脊椎動物の前肢で,〈よく〉ともいう。一般に鳥類に特有のものであるが,翼竜類pterosaursやコウモリの前肢も〈よく〉と呼ばれる。翼の形状はもちろん鳥によって異なるが,その基本的構造はすべての鳥類に共通している。翼の骨は,他の脊椎動物の前肢と同様に,上膊(じようはく)骨,橈骨(とうこつ),尺骨,腕骨,掌骨,指骨より成るが,成鳥では腕骨は2個を除いて掌骨と癒合して1個の腕掌骨carpometacarpusとなり,指骨は第4指と第5指が欠如し,残りの3本の指骨も発達していない(欠けているのは第1指と第5指という説もある)。翼の羽毛は3種を区別できる。風切(かざきり)羽remex(複数はremiges)は飛羽flight featherともいわれ,主要な飛行器官で,翼の骨に直接ついている。そのうち,腕掌骨と第2・3指の指骨に付着しているものを初列風切primaryといい,尺骨に付着しているものを次列風切secondaryという。また次列風切の内側の数枚は,他のものと長さや形状が違うので,三列風切tertiary(tertial)として区別されることがある。風切羽の枚数は種によって決まっていて,初列風切は通常10~12枚(多くの非スズメ目は11枚,スズメ目は10枚,ヒクイドリ3枚,ダチョウ16枚など)であるが,第1羽(最外側)はしばしば痕跡的か,なくなっている。次列風切は6枚(ハチドリ)~32枚(アホウドリ)である。小翼羽alula(bastard wing)は第1指骨に付着している羽毛で,数枚の小型の羽毛から成る。雨覆(あまおおい)wing covertは風切羽の基部をおおっている羽毛で,翼上面の上雨覆と下面の下雨覆との区別があり,上雨覆は初列雨覆,大雨覆,中雨覆,小雨覆に分けられる。雨覆羽はいずれも皮膚から生じている。翼の機能はすでに述べたように飛行器官であるが,飛行における初列風切と次列風切の役割は同じではなく,前者は主として推力をつくり,後者は浮力を生む。小翼羽はスロット(すきま)の働きをする。翼の形状と大きさは鳥の生息環境および習性によって異なり,一般に丸翼,細翼,長翼,広翼の4型に分類される。丸翼は森林や灌木林にすむ鳥(キジ,ハト,キツツキ,多くのスズメ目など)に多くみられ,縦横比が小さく,スロットを多くもち,比較的おそい速度で小回りに飛ぶことに適応している。細翼は飛びながら採食するアマツバメ,ツバメ,ハヤブサなどや長距離の渡りをするシギ・チドリ類にみられ,翼形が比較的平らで,縦横比はかなり大きく,高速で飛行するのに適する。長翼は,縦横比がいちばん大きく,海上を滑翔(かつしよう)するアホウドリ,ミズナギドリ,グンカンドリなどの特徴である。広翼は縦横比は中程度で,翼形は強く湾曲し,スロットを多く持つ。陸上で滑翔するタカ,ハゲワシ,ノスリや大型の獲物を運ぶワシ,フクロウなどは広翼である。なお,鳥の翼は,飛行器官としての働きのほかに,各種のディスプレーに役だち,また闘争のとき武器として用いられることもある。
(よく)
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普及版 字通 「翼」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 17画

(旧字)
17画

(異体字)
20画

[字音] ヨク
[字訓] つばさ・たすける

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
〔説文〕十一下に正字をに作り、異(よく)声。「翅(はね)なり」と訓し、また(羽)部四上に「翅(し)はなり」とあって互訓。金文に翼戴・輔翼の字をみな異に作り、「異臨(よくりん)」「休異(きうよく)」のようにいう。異は(翼)の初文。異は鬼形の神の象で、敬翼の意があり、また輔翼・翼の意がある。

[訓義]
1. つばさ、大きなはね。
2. たすける、まもる、おおう。
3. つつしむ、ただしい、うつくしい。
4. すすむ、とる、なす。
5. 翌と通じ、翌日。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕 豆波佐(つばさ)〔名義抄〕 ハネ・ナル・タスク・ツバサ・ツツシム・カクル・ウヤマフ・タクハフ 〔立〕 ツツシム・スチ・タスク・ハヤシ・ハネ・カクル・シタガフ・ウヤマフ・アグ・ツバサ・タケシ

[語系]
・異jikは同声。ともに厳翼の意があり、金文には異をその義に用いる。

[熟語]
翼衛・翼駆・翼訓・翼撃・翼賛・翼讚・翼翅・翼爾・翼日・翼従・翼如・翼助・翼奨・翼成・翼宣・翼然・翼戴・翼扶・翼・翼輔・翼奉・翼翼・翼亮
[下接語]
一翼・引翼・右翼・羽翼・燕翼・鶴翼・挙翼・匡翼・鼓翼・左翼・賛翼・翅翼・十翼・垂翼・双翼・戴翼・比翼・布翼・扶翼・奮翼・輔翼・鵬翼・両翼・励翼

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百科事典マイペディア 「翼」の意味・わかりやすい解説

翼【よく】

一般に流体の中を動くとき流れに対し直角上向きの力を受けるよう形づくられたもの,特に重航空機(航空機)の揚力を発生させる面をいう。飛行機,グライダーなどの固定翼と,ヘリコプターなどの回転翼(ローター)があり,前者では主翼が揚力発生の役目を受け持つ。翼の断面形状(翼型)はふつう前縁に丸みがあり,上面は下面より湾曲が大きく,後縁はとがっている。したがって翼が前進するとき,上面を流れる空気は湾曲の大きな部分を通りつつ加速され,下面では逆に気流がせきとめられたようになって流速が下がり,このため上面では静圧が低下して翼を上方に吸い上げ,下面では静圧が高まって翼を上方に押し上げる。これらの力を合わせたものが揚力で,翼の風圧中心に働く力の垂直分力として与えられる(水平分力(抗力)との比を揚抗比という)。 飛行機の翼はその役割,平面形,断面形(翼型)などによってさまざまに分類される。飛行機の重量を支えるための揚力の発生を主目的としているのが主翼で,単に翼といえばこの主翼を指すが,飛行機にはこのほかつりあいと安定を保つための水平尾翼垂直尾翼があるのがふつうである。 平面形からは矩形翼,テーパー翼(先細翼),楕円翼等に分けられ,また上から見たときの胴体との取りつけの角度から,胴体にほぼ直角になっている直線翼,斜め後ろ向きになっている後退翼,斜め前向きになっている前進翼に分類される。一般に高速機では後退翼が用いられる。 翼型はふつう機体中心線に平行な断面で示される。翼型は翼の性能に大きな影響を及ぼすことから,早い時期から研究に力点がおかれ,1940年代に現在でも亜音速機の翼型として使われている層流翼型が開発され,さらにジェット機実用後は,音速近くまで翼表面の気流のはがれが起こらない,薄く反りの小さい翼型が選ばれるようになった。
→関連項目後退角高揚力装置

翼【つばさ】

鳥類の前肢。飛行器官として適応した構造をもつ。哺乳(ほにゅう)類や爬虫(はちゅう)類の肢と相同であるが,構成している骨の数は癒合あるいは消失して少ない。表面をおおう大羽(羽毛)には初列風切羽,次列風切羽,雨覆羽,小翼などがあり,羽ばたくときには1枚1枚が開いて,初列風切は主として推力を,次列風切は主として浮力を生む。翼の形態は生息環境と飛行習性によって異なり,丸翼,細翼,長翼,広翼の4型に分けられる。なお,航空機の翼については(よく)の項を参照。
→関連項目鳥類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「翼」の意味・わかりやすい解説

翼(よく 動物)
よく
wing

脊椎(せきつい)動物の前肢が飛行のために変形したもので、翼(つばさ)ともいう。翼竜やコウモリの前肢も翼(この場合は「よく」で、「つばさ」とはよばない)であるが、一般には鳥類の前肢をさす。翼が鳥の特徴であるのは、単に優れた飛行器官であるだけでなく、基本的構造がすべての鳥類に共通しているからである。すなわち、腕骨は2個を除いて掌骨と癒合して1個の腕掌骨carpometacarpusとなり、指骨は、第4指と第5指にはまったくなく、他の3指のも小さい。このような前肢の構造は鳥類独特のもので、他の脊椎動物にはみられない。翼の羽毛は、骨についている風切羽(かざきりばね)remige(飛羽(ひう)flight featherともいう)と雨覆羽(あまおおいばね)wing covertとからなる。

 風切羽は主要な飛行器官で、そのうち腕掌骨と第2・第3指骨に付着しているものを初列風切primary、尺骨に付着しているものを次列風切secondaryという。次列風切の内側の数枚は、しばしば長さや形状が異なるため、三列風切tertiaryとして区別されることがある。また、第1指骨には数枚の小翼羽(しょうよくう)alulaが付着する。初列風切は通常10~12枚、次列風切は6~32枚あり、飛行中の推力をつくるのは主として初列風切で、次列風切は浮力を生み、また小翼羽は隙間翼(げきかんよく)(スロット)の働きをすると考えられている。

 翼の形状と大きさは鳥の習性や生息環境に適応していて、一般に丸翼、細翼、長翼、広翼の4型が区別される。丸翼は、森林や低木林にすむ鳥、たとえばキジ、ハト、多くの小鳥類などに多くみられ、比較的遅い速度で小回りに飛ぶのに適する。細翼は、高速で飛ぶのによく、アマツバメ、ハヤブサ、長距離の渡りをするシギ、チドリ類などがもっている。長翼は、海上で滑翔(かっしょう)するアホウドリ、ミズナギドリ、グンカンドリなどの海鳥の翼型である。また広翼は、陸上で滑翔するタカ、ノスリ、ハゲワシや、大形の獲物を運ぶワシ、フクロウの特徴である。鳥の翼は、一義的には飛行器官であるが、いろいろのディスプレーに使われたり、闘争の際の武器として用いられるのも重要な機能である。

[森岡弘之]



翼(よく 航空機)
よく
wing
aerofoil

空気より軽い軽航空機(気球、飛行船など)以外の航空機が、空中でその重量を支える力を発生させる機体の主要部分。「つばさ」ともいう。物体が流体の中を運動するとき、流体からその運動を妨げようとする力(抗力)を受ける。このとき翼は、運動方向とほぼ直角の方向に大きな力の成分(揚力)が生じ、抗力と比べて揚力がとくに大きくなるような断面(翼型)をもち、構造や空力特性に応じていろいろな形がつくられている。一般の飛行機では翼は固定され、おもに空中でその重量を支える役目をする主翼と、飛行方向や姿勢を変えたり、つり合いを保たせる役目をもつ尾翼を備えている。主翼はそれ自体で縦のつり合いをとり、操縦もできるが、その場合は尾翼の必要がないので、無尾翼機とすることもできる。また、飛行機の初期には材料や構造の研究が発達していなかったので、軽く、じょうぶで必要な揚力を得るために十分な一枚の翼をつくることができず、二枚あるいは三枚、またそれ以上の翼をもつ飛行機が少なくなかった。

[落合一夫]


翼(つばさ 動物)
つばさ


翼(つばさ 航空機)
つばさ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「翼」の意味・わかりやすい解説


つばさ
wing

鳥類やコウモリ(→翼手類)の飛行器官。脊椎動物の前肢が変形したもので,鳥類の場合,特別に発達した羽毛が生え,飛行に重要な小翼羽,初列,次列,三列の各風切羽と翼の上下両面を覆う雨覆羽からなる。地上生のダチョウエミューなどのように 2次的に退化したものや,ペンギンのように遊泳器官に変化したものもある。翼は飛行以外にも,ディスプレイのときなどに重要な役割を演じる。


よく
wing

空気中を運動することによって,揚力を発生するもの。鳥の羽,飛行機の翼,ヘリコプタの回転翼 (ロータ) などが翼である。これらが空中を飛行する場合,翼によって垂直上方に揚力Lが発生するが,その代償として抗力Dが生ずる。この揚力に対する抗力の比を揚抗比L/Dといい,翼の性能の判定基準になる。揚抗比は翼の断面形と翼の縦横比 (アスペクト比 ) とで決まり,優秀な断面形で縦横比が十分大きいときは,揚抗比は 100以上にも達する。したがって抗力にうちかつだけの推進力を加えれば,その翼は 100倍の重量を空中で支えることが可能となる。

翼[褶曲]
よく[しゅうきょく]
wing; limb

褶曲の軸面の両側に傾斜する部分を褶曲の翼または足という。ゆるい褶曲構造では背斜軸または向斜軸をはさむ両翼の傾斜は反対方向にあるが,激しい褶曲構造では同方向に傾斜することもある。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【褶曲】より


[単一の褶曲に関する術語]
 単一の褶曲断面において,褶曲面の曲率が最大になる点をヒンジhingeといい,ヒンジを結んでできる線をヒンジ線または褶曲軸という(図2)。ヒンジの両側の曲率の小さい部分を翼または脚といい,曲率0の点を変曲点という。一つの褶曲を構成する複数の褶曲面のヒンジ線をすべて含む面を褶曲軸面(ヒンジ面)ないし単に軸面と呼ぶ。…

【翅】より

…多くの昆虫の成虫には翅が4枚(中・後胸部に各1対)ある。体壁の背側部が左右に伸長してできたものであるが,一般に薄い膜質で,その中には筋肉がなく,気管から変化した脈が走っている。古生代に生息した原始昆虫のなかには前胸も伸長しているものがあるが,翅は広げたままで,滑空できる程度であった。その後,しだいに前翅(ぜんし)・後翅に分化が起こり,たたみこめるようになり,飛翔(ひしよう)能力を獲得することによって生活圏や分布を広げ,昆虫類の現在の繁栄をもたらした。…

【翼】より

…羽根,つばさともいう。空気など流体の中を動き,または風や流れを受けたとき,大きな揚力を発生することをおもな目的としたもので,航空機を空に浮かべる役割を果たす。航空機のうち飛行機やグライダーの翼は機体と一体となっており,機が前進すると風が当たって揚力を生ずるもので,固定翼と呼ばれる。これに対しヘリコプターなどの翼は軸に取りつけられ,回転させると風が当たり揚力が出るもので,回転翼あるいはローターという。…

【鳥類】より

…飛翔(ひしよう)生活にもっとも適応した脊椎動物で,基本的な体制は爬虫類と共通な点が多いが,両者は一見して区別することができる。鳥類のおもな特徴をあげると,(1)体は羽毛で覆われている,(2)前肢は変形して翼となり,後肢のみで体を支える,(3)体温は定温性,(4)卵生であるが,雛は両親の保育を受けるなどである。このほかにも,骨は含気性で軽いとか,気囊をもっているとか,現生の鳥には歯がないとか,いろいろの特徴がある。…

【翼】より

…飛行のために変形した脊椎動物の前肢で,〈よく〉ともいう。一般に鳥類に特有のものであるが,翼竜類pterosaursやコウモリの前肢も〈よく〉と呼ばれる。翼の形状はもちろん鳥によって異なるが,その基本的構造はすべての鳥類に共通している。…

※「翼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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