デジタル大辞泉 「識」の意味・読み・例文・類語
しき【識】[漢字項目]
[学習漢字]5年
〈シキ〉
1 物事を区別して知る。見分ける。また、その心の働き・能力。「識者・識別/意識・学識・鑑識・眼識・見識・常識・知識・認識・良識」
2 知り合い。「旧識・相識・面識」
3 しるす。しるし。「識語/標識」
〈シ〉
1 しるす。しるし。「識語」
2 金属や石に平面より高く刻んだ文字。陽文。「
[名のり]さと・つね・のり
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
仏教用語。サンスクリット語でビジュニャーナvijñāna、パーリ語でビンニャーナviññāa。心(チッタcitta)、意(マナスmanas)と同義。ただし説一切有部(せついっさいうぶ)では現在の意識を識といい、一瞬間前に過ぎ去った意識を意という。識は、五蘊(ごうん)・十二処(じゅうにしょ)・十八界(じゅうはっかい)・五位七十五法などの存在の諸範疇(はんちゅう)のいずれにも含まれる基本的な精神的存在で、仏教の基本的概念の一つ。インドの哲学諸派の多くは不変不滅の実体としての自我(霊魂。アートマンātman)の存在を主張し、自我を認識と行為の主体、したがって行為の果報と輪廻(りんね)の享受者であるとする。仏教は自我の存在を否定する。仏教において認識・行為・輪廻の主体となるのは識であるが、これは不変不滅の実体ではなくて、各瞬間に生滅変化しながら一生の間一つの流れ(刹那滅相続(せつなめっそうぞく))として継続する意識である。有情(うじょう)(意識ある生き物)が解脱(げだつ)しない限り、その死に際して、識は次の世の識を生じて転生し、新たな有情の主体となる。認識作用としては、識は概念的認識を主とするが、もちろん諸種の知覚にも参与する。
[梶山雄一]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…古代インドには,霊的,生命的なものを言い表す言葉の一つとして〈意manas〉(英語ではmindと訳される)という語があったし,また原始仏教では,現象界の分類(五蘊(ごうん)説)やその生成の説明(十二縁起説)に関して〈識vijñāna〉という語が用いられ,それによって了別の働きや個性化の原理が意味されていた。大乗仏教の時代には,十二縁起のうちの〈識〉によっていっさいを説明しようとする唯識思想(唯識説)が現れ,その中で,五官にかかわる五識を統一する第六識が〈意識〉と呼ばれていた。…
…彼に帰せられる《マーンドゥーキヤ・カーリカーMāṇḍūkya‐Kārikā》(別名《ガウダパーディーヤ・カーリカー》)には,覚醒時に経験する現象界は,夢で経験する世界と同じく虚妄であり,真実は不二advaitaであり,個我とアートマンは不異であると,不二一元論が初めて明らかに述べられている。後の章になるほど仏教的色彩が濃く,特に最終章では,世界は識vijñānaの顕現したものであると,仏教瑜伽行派の〈唯識無境〉〈識の転変〉説に酷似した説が見られる。《サーンキヤ・カーリカー》の注釈書《ガウダパーダ・バーシヤ》の著者は,同名異人と考えられる。…
…サンスクリットでは,パンチャ・スカンダpañca‐skandhaという。生命的存在である〈有情(うじよう)〉を構成する五つの要素すなわち,色(しき),受(じゆ),想(そう),行(ぎよう),識(しき)の五つをいう。このうち色(ルーパrūpa)には,肉体を構成する五つの感覚器官(五根)と,それら感覚器官の五つの対象(五境)と,および行為の潜在的な残気(無表色(むひようしき))とが含まれる。…
… 同じ内容を組織的に説いたのが,前述の〈四諦〉である(諦は真実,真理の意)。教理上の説明を加えると,(1)苦諦(くたい) 人生には生老病死の四苦のほか,愛(いと)しい人に別れ,怨み憎しみある者に出会い,求めるものは得られず,この身は無常な諸要素(五蘊(ごうん)――肉体(色)と感覚(受),表象(想),意思(行),認識(識)の諸心理作用)の集合にすぎない,という合計8種の苦悩がある。(2)集諦(じつたい) この苦を集め起こすもの,つまり苦の原因としては,煩悩と総称される心のけがれ(むさぼり,にくしみ,無知など)がある。…
※「識」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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