強い風と大雨とが同時におこることによってもたらされる災害。おもに台風によっておこるので台風災害ともいう。風による被害と雨による被害とを比べると、日本では雨による被害のほうが大きいのが普通である。また風を伴っているために、単に雨による被害よりも大きな被害となることがある。たとえば高潮や高波による被害が付加される場合などがこれにあたる。
風水害は、台風の来襲の時期、台風の経路、速度などで異なる。夏の台風は雨域が狭いので、強風による風害のほうが大きいことがあり、秋の台風は前線を伴っているために、大雨による水害のほうが大きいのが普通である。また北半球では、台風の進行方向の右側は、左側に比べて風雨ともに強く、その範囲も広いので、被害の程度も右側のほうがひどく、範囲も広い。さらに、台風の速度が遅ければ遅いほど被害は大きくなる。
日本でもっとも大きな風水害は1959年(昭和34)9月26日の伊勢湾台風(いせわんたいふう)によるもので、死者行方不明5101人、建物被害83万3965戸となっている。これに次いで被害が大きかったのは室戸(むろと)台風(1934年9月)と枕崎(まくらざき)台風(1945年9月)であった。大河川の治水事業の進展や、コンクリート家屋などの増加により、風水害の規模は小さくなり、昔のような大災害はほとんどおこらなくなっている。
[安藤隆夫・饒村 曜]
『西川治著『日本観と自然環境――風土ロジーへの道』(2002・暁印書館)』▽『京都大学防災研究所編『防災学講座1 風水害論』(2003・山海堂)』
台風や発達した温帯低気圧に伴う暴風雨によって強風と大雨による災害が広範囲に入り混じって発生する場合を風水害という。例えば,1959年の伊勢湾台風では,強風によって広い地域の山林がなぎ倒され,強風に伴う高波で多くの船舶が沈没し,強風に伴う高潮では伊勢湾沿岸の広い地域が水没して多くの死者を出し,また大雨によっては多くの河川が氾らんし,家屋が流失し,山崩れや崖崩れが多発した。このような災害を総合して被害高を算定する場合などは,風水害という言葉で総称することが便利である。
しかし風水害といっても,風害と水害とが同量に発生するとは限らず,風害が目だつ台風は風台風,水害が目だつ台風は雨台風と呼ばれることがある。梅雨季の台風は雨台風となりやすく,真夏の台風は風台風となりやすい。また歴史とともに抵抗力の増大に伴い風水害の様相は変化してくる。木造建物の多かった第2次大戦前は風害が著しく,また第2次大戦後の荒れ果てた日本の国土には水害が著しかった。しかし最近は強風にも洪水にも強くなった日本では,土石流や山腹崩壊などの災害が目だってきている。
風害と水害がともに著しい台風の場合でも,一般には強風破壊と洪水とは同一地域で同時に起こることは少なく,地域によって災害の特色が異なることが多い。
執筆者:中島 暢太郎
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