(読み)キク

デジタル大辞泉 「菊」の意味・読み・例文・類語

きく【菊】


㋐キク科の多年草。日本の代表的な花の一。主に秋に咲き、花の色・形などにより、非常に多くの品種があり、大きさにより大菊・中菊・小菊と大別される。古く中国から渡来したとされ、江戸時代には改良が進んだ。観賞用に広く栽培され、食用にもなる。 秋》「わがいのち―にむかひてしづかなる/秋桜子
㋑キク科キク属の多年草の総称。茎は硬く、葉は卵形で多くの切れ込みがある。秋、白または黄色の頭状花が咲く。ハマギクリュウノウギクイソギクなども含まれる。キク科植物は双子葉植物では最も進化・分化しており、世界に広く分布。約950属2万種が知られ、キク・タンポポヨモギアザミなどの属が含まれる。多年草が多いが一年草や高木もある。花は頭状花序をつくり、合弁花で、管状花舌状花との二形がある。がくは変形して冠毛となる。
かさねの色目の名。表が白、裏が紫または蘇芳すおうのものをいう。陰暦9、10月に着用する。菊襲きくがさね
紋所の名。菊の花や葉などを図案化したもの。皇室の一六葉八重表菊のほか種類が多い。
菊の花のような形をしたひも。菊形。菊花形。
[補説]作品名別項。→
[類語]黄菊白菊残菊野菊除虫菊雛菊矢車菊デージー

きく【菊】[漢字項目]

常用漢字] [音]キク(呉)(漢)
植物の名。キク。「菊花寒菊観菊残菊白菊しらぎく野菊のぎく乱菊除虫菊
[名のり]あき・ひ

きく【菊】[曲名]

《原題、〈イタリアI Crisantemiプッチーニ弦楽四重奏曲。嬰ハ短調。全1楽章。1890年作曲。オペラマノンレスコー」の第4幕で歌われる二重唱の主題として転用された。菊の花。

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精選版 日本国語大辞典 「菊」の意味・読み・例文・類語

きく【菊】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きく」は菊の字音 )
  2. キク科キク属の植物の総称。多年草で、茎の下部は木質化する。葉は互生、卵形で縁は欠刻し、その間にさらに切れ込みがあり先端はとがる。茎頂に管状花と舌状花から成る頭花をつける。日本には、二十数種が野生し、その他に多数の園芸品種がある。観賞用に栽培されるほか、料理用や薬用にも用いられ、リュウノウギク、イソギク、シュンギクマーガレット、除虫菊などがある。中国では不老長寿の効ありとされ、日本には奈良時代に渡来したようであるが、日本で著しく品種の改良を見、近世には、多数の品種が現われた。薬用、食用、観賞、切り花、装飾などと用途は広く、詩文、絵画、文様、工芸などの題材となることも多い。皇室の紋章に使用され、日本の国花ともされている。隠君子。延年。延寿客。東籬客(とうりかく)。いえぎく。あきのはな。いなでぐさ。ちぎりぐさ。かたみぐさ。よわいぐさ。ももよぐさ。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「水底遊鱗戯。巖前菊気芳」(出典:懐風藻(751)晩秋於長王宅宴〈田中浄足〉)
    2. 「わがやどのきくのかきねにおく霜の消えかへりてぞ恋しかりける〈紀友則〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋二・五六四)
    3. [その他の文献]〔陶潜‐飲酒詩・其五〕
  3. (かさね)の色目。男の直衣(のうし)、狩衣(かりぎぬ)、下襲(したがさね)、女の唐衣(からぎぬ)、袿(うちぎ)などの表裏の色の配合の名称。表が白、裏が蘇芳(すおう)のものをいう。異説に、裏は青とも紫ともいう。陰暦九、一〇月に着用する。また、菊は葉菊、莟菊(つぼみぎく)、白菊、黄菊、移菊(うつろいぎく)、紅菊(くれないぎく)などの総名ともいう(歴世服飾考(1893))。菊襲(きくがさね)
    1. [初出の実例]「表着(うはぎ)は菊の五重(いつへ)、掻練はくれなゐ」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一六日)
  4. きくがさね(菊襲)
    1. [初出の実例]「きくのこくうすき八つばかりに、こき掻練をうへに着たり」(出典:更級日記(1059頃))
  5. 文様の名。菊の花や葉などの形を用いた模様。
    1. [初出の実例]「赤朽葉に花ふれうの小袿、きくの摺裳」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  6. 紋所の名。菊の花や葉や枝を図案化した紋章。十六菊、菊菱、十菊、抱き菊の葉などの種類があり、特に、皇室の紋章は十六葉八重表菊、宮家共通の紋章は十四葉一重裏菊。
    1. 十六菊@十菊@菊菱@抱き菊の葉
      十六菊@十菊@菊菱@抱き菊の葉
    2. [初出の実例]「女院は、院の上一つ御車に、きくの網代庇(あじろびさし)にたてまつる」(出典:増鏡(1368‐76頃)一〇)
  7. 菊の花のような形をしたひもの乳(ち)。菊形。菊花形。
    1. [初出の実例]「織物の三重の几帳に菊を結びなどして」(出典:讚岐典侍(1108頃)下)
  8. 肛門(こうもん)の異称。そのさまが、菊花を思わせるところからいう。とくに男色(なんしょく)に関していう場合が多い。鶏姦(けいかん)の対象としての肛門。菊の花。菊座。牛蒡(ごぼう)切り口
    1. [初出の実例]「うつ向て・菊の案内する小姓」(出典:雑俳・笠付類題集(1834))
  9. きくわた(菊腸)」の略。
  10. 花ガルタの九月の札。菊にさかずきの一〇点札一枚、菊に青短冊の五点札一枚、菊の一点札二枚がある。
  11. 京阪の青物市場で使われる符丁で「九」のこと。九月を菊月というところからきたもの。
  12. 香木の名。百二十種名香の一つ。〔類聚名物考(1780頃)〕

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普及版 字通 「菊」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

(旧字)
12画

[字音] キク
[字訓] きく

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(きく)。〔説文〕一下に「大麥(きよばく)なり」とあり、大菊は麦・なでしこ・かわらなでしこ。いまの秋菊の字はもとに作り、〔説文〕に「日なり。秋を以てさく」という。いま菊の字を秋菊の意に用いる。

[訓義]
1. きく。
2. 大菊、なでしこ、かわらなでしこ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 左奈(さきな) 〔和名抄 本經に云ふ、に白・紫り。加波良與毛岐(かはらよもぎ)。一に云ふ、可波良於波岐(かはらおはぎ) 〔立〕 カハラヨモギ・カハラオハギ 〔字鏡集〕 オホキク・カハラヨモギ

[熟語]
菊衣・菊院・菊英・菊花・菊・菊月・菊酒・菊秀・菊秋・菊・菊・菊節・菊泉・菊叢・菊酎・菊灯・菊坡・菊圃・菊芳・菊籬・菊
[下接語]
園菊・佳菊・寒菊・旧菊・谿菊・古菊・黄菊・残菊・滋菊・秋菊・衆菊・春菊・疎菊・菊・霜菊・叢菊・丹菊・冬菊・芳菊・野菊・乱菊・蘭菊・籬菊

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「菊」の解説

きく

?-? 江戸時代前期,淀殿の侍女。
慶長20年の大坂落城に際して京都に脱出,のち備前の田中氏と結婚し,延宝6年(1678)83歳で死去したといわれる。17世紀末ごろ,菊の回想談を孫の岡山藩医田中意徳から聞き書きした「おきく物語」(作者未詳)が成立。のち関ケ原の戦いをかたった「おあむ物語」との合本も刊行された。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「菊」の解説

きく【菊】

栃木の日本酒。大吟醸酒吟醸酒純米酒本醸造酒普通酒がある。平成10、14、15、18、22~24、26年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は美山錦、五百万石など。蔵元の「虎屋本店」は天明8年(1788)創業。宇都宮の名水と呼ばれた「虹乃井」による酒造りで発祥。所在地は宇都宮市本町。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「菊」の解説

菊[花卉類]
きく

東海地方愛知県地域ブランド
主に田原市・豊川市で生産されている。愛知県の菊出荷量は全国のおよそ3分の1を占める。電照栽培やスプレー菊を全国で初めて取り入れたのが愛知県である。現在では、ガラス温室や電照、暖房装置などを用い、周年出荷されている。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

デジタル大辞泉プラス 「菊」の解説

菊〔曲名〕

イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニの弦楽四重奏曲(1892)。原題《I crisantemi》。単一楽章。オペラの作曲家として名高いプッチーニによる数少ない室内楽曲の一つとして知られる。

菊〔日本酒〕

栃木県、株式会社虎屋本店の製造する日本酒。全国新酒鑑評会で金賞の受賞歴がある。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「菊」の解説

菊 (キク)

植物。キク科キク属の草の総称

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