デジタル大辞泉
「得」の意味・読み・例文・類語
え【得/▽能】
[副]《動詞「う(得)」の連用形から》
1 (下に打消しの語または反語を伴って)不可能の意を表す。…できない。うまく…できない。
「若者は挨拶の言葉も―言わないような人で」〈有島・溺れかけた兄弟〉
「数ならぬ身は、―聞き候はず」〈徒然・一〇七〉
2 可能の意を表す。…できる。うまく…できる。
「面忘れだにも―為やと手握りて打てども懲りず恋といふ奴」〈万・二五七四〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
Sponserd by 
とく【得】
- 〘 名詞 〙
- ① 得ること。なすことの叶うこと。成就すること。
- [初出の実例]「一とせの行幸の後、又見参らせばやと、ゆかしくおもひ参らするに、そのとくなければ」(出典:讚岐典侍(1108頃)上)
- [その他の文献]〔春秋左伝‐定公九年〕
- ② ( 「徳」とも ) もうけ。利益。利得。
- [初出の実例]「時の受領は、世にとく有物といへば、只今そのほどなめれば、つかうまつらむ」(出典:落窪物語(10C後)一)
- 「我儘をするやうでゐて、実は帳場に得(トク)の附くやうにする」(出典:雁(1911‐13)〈森鴎外〉一)
- [その他の文献]〔漢書‐項籍伝〕
- ③ ( 形動 ) 有利であること。便利であること。また、そのさま。
- ④ ( [梵語] prāpti の訳語 ) 仏語。衆生(しゅじょう)が身に得たものを失われないようにつなぎとめておく力をいう。逆に身から離れさせる力を非得という。〔倶舎論‐四〕
- ⑤ 仏語。真宗で、因位のとき得ることを獲というのに対し、果位において得ることをさしていう。信を得るのは獲、極楽往生してさとりを得るのは得である。
- [初出の実例]「獲の字は因位のときうるを獲といふ、得の字は果位のときにいたりてうることを得といふなり」(出典:三帖和讚(1248‐60頃)正像末)
え【得・能】
- 〘 副詞 〙 可能の意を表わす。
- ① あとに肯定表現を伴って用いる。よく…できる。→えも。
- [初出の実例]「知る所も無く、怯(つたな)く劣(をぢな)き押勝が、得(え)仕へ奉るべき官にはあらず」(出典:続日本紀‐天平宝字四年(760)正月四日・宣命)
- ② あとに否定や反語の表現を伴って用いる。とても…できない。否定表現を省略することもある。
- [初出の実例]「しかすがに 黙然(もだ)も得(え)あらねば わが背子が 行きのまにまに 追はむとは 千たび思へど」(出典:万葉集(8C後)四・五四三)
- 「ふかき夜のあはればかりは聞きわけど琴よりほかにえやはひきける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)横笛)
- ③ ②が固定したため、必ずしも「え」を必要としない、可能の意味をもつ表現の前にも強調的に用いることがある。
- [初出の実例]「山一つあなたで御ざらば、馬上でなくは得参られますまい」(出典:虎寛本狂言・縄綯(室町末‐近世初))
得の語誌
もともと単に可能の意を表わし、否定表現との呼応は徐々に慣習化して固定した。この流れが、現代関西方言の「よう…ん」に連なっている。
どく【得・徳】
- 〘 造語要素 〙
- ① 動詞の連用形に付いて、そうすると利益を得る、また、そうした結果有利になった意を表わす。「買い得」「ごね得」
- ② 名詞や形容詞の語幹などに付いて、そのことが利点となる意、また、そのことを利用する意を表わす。
- [初出の実例]「我れがなれがとたがいにことばをいやしうたがいに云て、心安すどくにあいしらうことを云ぞ」(出典:玉塵抄(1563)四四)
うる【得】
- ( 動詞「える(得)」の文語的な言い方で、本来は「う(得)」の連体形であるが、現在では終止形としても使われる ) ⇒える(得)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
Sponserd by 
普及版 字通
「得」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
Sponserd by 