(読み)ヨウ

デジタル大辞泉 「杳」の意味・読み・例文・類語

よう〔エウ〕【×杳】

[ト・タル][文][形動タリ]
暗くてよくわからないさま。また、事情などがはっきりしないさま。「として消息が知れない」
はるかに遠いさま。奥深く暗いさま。
十月にも筆を執らず、十一十二もつい紙上へは―たる有様で暮して仕舞った」〈漱石・彼岸過迄〉
[類語]暗い薄暗いほの暗い小暗い暗い小暗がり手暗がり真っ暗暗然暗澹冥冥ようとしてほのかかすかほんのりうっすらおぼろげ薄薄淡い杳杳ようよう漠然ぼんやりぼうっとぼうとぼやっと不鮮明もやもや霞む見えにくい陰る曇るおぼろかき曇るぼやけるぼけるかすれる朦朧もうろうどろん不透明ほの見えるしょぼつくしょぼしょぼ茫茫ぼうぼう不可視

よう【杳】[漢字項目]

[音]ヨウ(エウ)(呉)(漢)
暗い。奥深い。また、遠くてよく見えない。「杳乎ようこ杳然杳杳

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精選版 日本国語大辞典 「杳」の意味・読み・例文・類語

ようエウ【杳】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙
  2. はるかで遠いさま。奥深く暗いさま。
    1. [初出の実例]「半日後、則山転林蔽、杳不影響也」(出典:栗山文集(1842)一)
    2. [その他の文献]〔陳子昂‐晩次楽郷県詩〕
  3. くらくてよくわからないさま。また、事情がはっきりしないさまについてもいう。
    1. [初出の実例]「如何になりしぞ。杳(ヤウ)として知る可からず」(出典:自然と人生(1900)〈徳富蘆花〉写生帖)
    2. 「彼の消息は、杳としてわからない」(出典:さまよへる猶太人(1917)〈芥川龍之介〉)
    3. [その他の文献]〔陳鴻‐長恨歌伝〕

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普及版 字通 「杳」の読み・字形・画数・意味


8画

[字音] ヨウ(エウ)
[字訓] くらい・はるか・ふかい

[説文解字]

[字形] 会意
日+木。日が森に沈む意。〔説文〕六上に「冥(くら)きなり。日の木下に在るに從ふ」とあり、薄明の意から、遥か、遠い、深いの意となる。日が木に在るのは杲(こう)、明らかの意。東を日と木の会意とするのは誤りで、その初文は(たく)(ふくろ)の象形。は東に石(宕(とう))声を加えた字である。

[訓義]
1. くらい、日が沈む。
2. はるか、とおい、ふかい、さだかでない。

[古辞書の訓]
名義抄〕杳 クラシ・フカシ・ヒロシ・トボシ・ハルカ・クロシ 〔立〕杳 ヒクル・ツトム・ヤミ・ウツ・クラシ・コハシ・ユフベ

[語系]
杳・yは同声。窈・黝・幽yu、また奧(奥)ukは声義近く、同系の語である。

[熟語]
杳靄杳鬱杳乎杳忽杳若杳深・杳杳絶・杳然杳窕杳漠杳微杳眇・杳杳昧杳漫杳溟・杳・杳杳
[下接語]
空杳・深杳・林杳・幽杳

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