曇る(読み)クモル

デジタル大辞泉 「曇る」の意味・読み・例文・類語

くも・る【曇る】

[動ラ五(四)]《「」の動詞化
空が、雲や霧などで覆われる。「どんよりと―・る空」
透明な物や光っていた物などが、他の物に薄く覆われたりさえぎられたりして、よく見通せない。輝きのない状態になる。「鏡が―・る」「涙で目が―・る」
悲しみや心配事のために、心や顔つきなどに明るさが失われて沈んだ状態になる。「悲しげに―・った表情」「声が―・る」
容姿などが地味すぎて映えない。
「御容かたちなど、いと華やかにここぞ―・れると見ゆるところなく」〈初音
で、能面が少し下向きになる。
[類語](1陰る霞む掻き曇る愚図つく下り坂崩れるぼやける暈ける掠れるぼんやり朦朧ぼうっとどろん不透明見えにくいほのかかすかほんのりうっすらおぼろげうすうす淡いよう杳杳ようようようとして暗い薄暗いほの暗い小暗い木暗い小暗がり真っ暗暗然冥冥ぼやっと不鮮明もやもやほの見えるしょぼつくしょぼしょぼ茫茫ぼうぼう不可視2塞ぐふさがる結ぼれる/(3沈む滅入めいうつする鬱屈うっくつする鬱結うっけつする消沈するしょげるしょげ返るふさぎこむ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「曇る」の意味・読み・例文・類語

くも・る【曇・陰】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「くも(雲)」を動詞に活用させたもの )
  2. 雲、霧などで空がおおわれる。
    1. [初出の実例]「堯雲更に靄(クモリ)舜雨還(また)(そそ)く〈興福寺本訓釈 靄 久毛利〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. 「ひてりて、くもりぬ」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二三日)
  3. 光や色などが不明瞭になる。色つやがなくなる。
    1. [初出の実例]「年をへて花のかがみとなる水はちりかかるをやくもるといふらむ〈伊勢〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・四四)
  4. 目がかすむ。目がかすんではっきりものを見ることができなくなる。
    1. [初出の実例]「恋しさのなぐさめがたきかたみにて、涙にくもる玉のはこかな」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕霧)
  5. 心がはればれしない状態になる。心がふさぐ。
    1. [初出の実例]「くもりゆく人の心の末のよをむかしのままに照す月影〈円空〉」(出典:続拾遺和歌集(1278)釈教・一三八七)
  6. 考えなどが、はっきりしなくなる。物事を判断する能力を失う。
    1. [初出の実例]「天下を領ずるほどの人が少も曇たらば四海はくらやみとな郎ず」(出典:巨海代抄(1586‐99)下)
  7. 声や音がはっきりしなくなる。涙ぐんだ声になる。
    1. [初出の実例]「涙にくもる声を上げ」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)三)
  8. 心配や悲しみなどのために顔の表情が明るさを失う。
    1. [初出の実例]「聴診器を当て乍ら其顔はだんだん曇った」(出典:続俳諧師(1909)〈高浜虚子〉九八)
  9. 怪しい、または疑わしい状態になる。
    1. [初出の実例]「我身にくもる覚なし」(出典:浄瑠璃・日本蓬莱山(1685頃)二)
  10. ( 「面(おもて)曇る」の略 ) 能楽で、憂愁に沈んで、ふし目になる型をいう。⇔照る

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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