(読み)イネ

デジタル大辞泉 「稲」の意味・読み・例文・類語

いね【稲】

イネ科一年草。実がで、広く主食とされ、水田や畑で栽培し、畑に作るものは陸稲おかぼ・りくとうとよばれる。インドまたは東南アジアの原産。日本では先史時代から栽培。高さ約1メートル。多く、春、種を苗代にまいて、梅雨のころ苗を本田ほんでんに移し植え、秋に収穫。に炊くうるちと、もちにするもちとがあり、栽培品種は多い。また収穫の時期により、早稲わせ中稲なかて晩稲おくてと区別する。 秋》「道暮れて―の盛りぞちからなる/暁台
紋所の名。
[補説]イネ科の単子葉植物は約700属1万種がある。多くは草本、茎は中空で節があり、葉は細長い。花はふつう両性花で、穂状につく。トウモロコシなど主要な穀物が含まれる。
[類語]稲束稲叢水稲陸稲りくとう陸稲おかぼ

とう【稲〔稻〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]トウ(タウ)(漢) [訓]いね いな
〈トウ〉イネ。「水稲晩稲陸稲
〈いな〉「稲作稲妻稲光稲穂
[名のり]ね
[難読]稲荷いなり稲熱病いもちびょう粳稲うるしね陸稲おかぼ晩稲おくて・おしね税稲ちからしね中稲なかて稲架はさ早稲わせ

しね【稲】

いね。多く、他の語の下に付いて複合語の形で用いる。「荒
「み―をみなの佳さ」〈神楽・細波〉

いな【稲】

「いね」の変化した語。複合語として用いられる。「穂」「田」 秋》

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「稲」の意味・読み・例文・類語

いね【稲】

  1. 〘 名詞 〙
  2. イネ科の一年草。中国西南部からインド東北部の原産と考えられるが、アフリカ説もある。世界各地の水田や畑で栽培される。高さ〇・五~一メートル。茎は根ぎわで多く分枝して株立ちとなり、円柱形で節をもち中空。葉は長さ三〇~六〇センチメートル、幅三~五ミリメートルの線形で、基部は長いさやとなって茎を包む。夏、茎の頂に円錐花序を直立して多数の小花をつける。花は花被がなく六本の雄しべと一本の雌しべから成り、二枚の苞片(ほうへん)(=もみがら)で覆われる。開花は好天日の午前に限られ、昼前のもみがらが少し開く頃に自家受粉し、受粉が終わると雄しべを外に出してまもなく再びもみがらが閉じる。実はもみがらに包まれて熟し、長楕円形となり、皮が種子(=こめ)に密着している。熟果をつけた穂は重みで先端が下垂する。米は飯か粥(かゆ)にたき主食とするほか、酒、みそ、しょうゆの原料や菓子、糊(のり)などに用いる。精米の途中でとれる糠(ぬか)は肥料、飼料ぬかみそ漬けに用い、また、良質の油がとれる。籾(もみ)は詰め物などに、藁(わら)(=茎)は俵、かます、むしろ、なわ、畳の床などを作るのに用いられる。品種、改良種が多く、主として中国の揚子江以南で栽培される長粒で粘り気の少ないインド型と北緯五〇度付近までで栽培される日本型との二大群があり、成熟時期によって早稲(わせ)・中稲(なかて)・晩稲(おくて)に、作付地によって水稲・陸稲に、デンプンの質によって粳(うるち)・糯(もち)に分けられる。元来、水生植物で高温多湿を好み、日本には縄文時代晩期までに中国を経て渡来し、初めは北九州で栽培され、徐々に近畿・東海・関東から東北地方にまで広がったと考えられている。さらに鎌倉時代には本州北端の津軽地方にまで及び、明治以降は北海道でも栽培されるようになった。とみくさ。たのみ。たなつもの。みとし。おしね。みしね。しね。いな。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「伊禰(イネ)(つ)けばかかる我(あ)が手を今夜(こよひ)もか殿の若子(わくご)が取りて歎かむ」(出典:万葉集(8C後)一四・三四五九)
  3. を図案化した紋所。「抱き稲」「対(むか)い稲菱」など。
    1. 抱き稲@対い稲菱
      抱き稲@対い稲菱

いな【稲】

  1. 〘 名詞 〙 「いね(稲)」の変化した語。多く、「稲作」「稲葉」のように、他の名詞と複合して用いる。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「吾が高天原に所御(きこしめ)す斎庭(ゆには)の穂(イナのほ)を以て、亦吾が児に当御(まかせまつ)るべし」(出典:日本書紀(720)神代下(鴨脚本訓))

しね【稲】

  1. 〘 名詞 〙(いね)のこと。「荒稲(あらしね)」「和稲(にきしね)」など、多くは他の語の下に付いて熟語を作るときに用いる。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「新墾(にひはり)の十握稲(とつかシネ)」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「稲」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 14画

(旧字)稻
人名用漢字 15画

[字音] トウ(タウ)
[字訓] いね

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
旧字は稻に作り、(よう)声。に滔・(とう)の声がある。は臼の中に手を入れている形。〔説文〕七上に「(もちいね)なり」とあり、粘りのあるものを稲、ないものを(こう)、総称して稲という。金文(ほ)の銘文に「用て稻粱を(い)る」というのが常語で、にいれて神饌とした。〔礼記、曲礼下〕に「稻を嘉(かそ)と曰ふ」とあり、神饌としての名である。

[訓義]
1. いね、もちいね。
2. (のぎ)のある穀物の総称。

[古辞書の訓]
和名抄〕稻 稻なり。以(いね)/早稻 和世わせ)/稻 比(ひね) 〔名義抄〕稻 イネ/早稻 ワセ/稻 オクテ 〔字鏡〕稻 イネ・ホ・ヌカ

[熟語]
稲雲稲秧・稲稼・稲花・稲蟹・稲雁・稲畦・稲・稲香・稲稲穀稲栽・稲収・稲・稲熟・稲稷・稲穂・稲・稲粟・稲孫・稲疇・稲田・稲麦・稲飯・稲尾・稲苗・稲米・稲・稲粱・稲廬
[下接語]
秧稲・禾稲・嘉稲・穫稲・宜稲・魚稲・畦稲・稲・香稲・黄稲・粳稲・稲・穀稲・種稲・稲・黍稲・新稲・水稲・薦稲・早稲・飯稲・晩稲・野稲・陸稲・粱稲

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「稲」の解説

稲 (イネ)

学名:Oryza sativa
植物。イネ科の一年草,薬用植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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